なんちゃってミステリー

綿菓子

第1話 煙草

ある日、とある男性が10時頃ショッピングモールの喫煙所にて爆発に巻き込まれ死んだ。

被害者は佐藤哲郎という。

何故か喫煙所周辺には監視カメラがなかったため、聞きこみ調査をするしかなかったが、容疑者は、

先に喫煙所を利用していた男性・喫煙所の清掃員の老人だ。

喫煙所はガラス張りの小部屋で、平均的な体型の成人男性がぎゅうぎゅう詰めになってやっと3人入るほど。

現場にはガラスの破片とライター、煙草がまだほとんど入っている箱。それと初めて見る大量のアルミ缶があった。

被害者の死因は、まだ調べていないが今のところ皮膚が爛れているところと頭から血が出ていることから、爆発の勢いで頭を強打したかいきなりの爆発による心肺停止だと思われる。

今から容疑者の尋問が始まるところだ。


「お名前は?」

「岸田海里」

コートを着込んでいて中の服は分からないが、茶色のコートにジーパンという服装だ

「岸田さんは、10時頃何をしていましたか?」

「近くの店に寄ってラーメン食ってたよ。まさかアンタ、俺を疑ってんのか?」

「いえいえ、聞いているだけですよ。その前はどこで何を?」

「喫煙所で煙草吸って、家内に頼まれてた買い物済ましてたよ」

「あ、そういやその後爺さんが喫煙所行ってたな...」

「そのお爺さんはどんな服装でしたか?」

「なんか掃除するだけだったっぽいけど...」

なるほど、あの清掃員はこの男の後に喫煙所に行ったのか...

「他になにかおかしなものや不思議なものはありましたか?」

「いや、特にはないよ」

「そうですか、御協力ありがとうございます」

「頑張ってなー」


さて、次は清掃員の尋問だ。

「あなたのお名前は?」

「鈴木縁平じゃよ」

まさに清掃員という服装をしている

「そうですか。鈴木さん、あなたは10時頃何を?」

「10時頃?掃除が終わったから、家に帰っとったぞ?」

「なるほど...」

「その前は何を?」

「掃除をしとった。見ての通りわしは清掃員でな?喫煙所担当じゃったんじゃよ」

「そうですか。どんな掃除を?」

「あそこはガラス張りじゃからのぉ。主にガラス拭いたり落ちてる煙草回収したり、灰皿も変えてるなぁ」

「へぇ、大変ですね」

「なにかおかしなものや不思議なものは見ませんでしたか?」

「うーん...あぁ!そういえば!」

「なにかありましたか?」

「煙草の臭いに混じって変な臭いがしてなぁ?そこ見たら凄い臭いした缶があってなぁ」

「見たことない缶じゃったから忘れもんかと思ったけんど、一応喫煙所全体に消臭剤かけといたわ」

あぁ、あの缶はその時か。

「なるほど...それは何時頃で?」

「えーと、だいたい9時ぐらいじゃったよ」

「ありがとうございました」

「ええんよええんよ」

被害者がくる1時間前か...

とりあえず、あの缶調べてみるか!



「缶を調べた結果、中には恐らく溶けたであろう大量の金属が見つかり、それと一緒に塩酸も大量入っていました」

「なんだそれは?金属と塩酸って、確か...」

「水素を作る時に使えますね」

「なるほど!という事はあの爆発は、水素に煙草をつけるためにつけたライターの火によって爆発したんだな!」

「そのようですね」

鈴木氏が来た時には既に缶が置いてあったようだが、岸田氏は缶について何も言っていなかった...

つまりその2人が居なかった間に置かれたか、岸田氏が置いたことになる...

「...よし!鈴木氏と岸田氏の、被害者との関係を調べてくれ!」

「はい」

とりあえず今1番有力なのは岸田氏だな...

「被害者の検死結果出ました!やはり心肺停止による死亡のようです!」

「分かった!ありがとう!」

ということはあの血は死んだ後に流れたのか...あれ?

「しかし、頭部から血が出ていたそうですが頭部に傷はありませんでした」

やはりか...あの血の出方はおかしいもんな...

「しかし、ではあの血はなんなんだ?」

「あれ、調べてみたらトマトジュースでしたよ?」

「え?」

「え?」

「...なんでトマトジュース?しかもなんで頭に?」

「近くに転がっていた缶にトマトジュースはなかったんですか?」

「なかったな...犯人が落として拾っていったとか?」

「いえ、もしかしたら死んだ原因を偽装しようとしたのかも知れません」

「じゃあジュースがはねている可能性が高いから、上に何か羽織ったりしているとか、そういう人が怪しいんじゃないか?」

やはり岸田氏が怪しいな...

「周りにも相談してみればどうですか?」

「あぁ、そうだな...」

ふむ、あいつに相談してみるか、賢いしな!

...頭は残念だけど


「なぁ」

「あっれー!?同期くんじゃん!どしたどした!デートの誘いか?」

「違う!今担当している事件についての相談だ」

「あーね?ちぇっ反応がだんだん弱くなってきちゃった...」

「言っていいか?」

「はいはい」

「それでなんだが...」





「それはおかしくない?」

「え?」

「おじいちゃんだよおじいちゃん」

「ただの清掃員だろ?」

「だって、掃除終わってから1時間経ってんのに清掃服のままなんでしょ?」

「確かに...」

「いくら着替える場所が遠かったりしても、1時間経ってまだショッピングモールに居たんでしょ?」

「一旦家に帰った方が早くない?」

「それに、その缶だっておじいちゃんが置いたかもじゃん」

「だって、ゴミを回収するのにその缶には消臭剤かけただけなんでしょ?」

「確かにな...」

という事は、鈴木氏が犯人なのか?嫌でも岸田氏が犯人じゃない証拠もないし...あー!頭おかしくなっちまう!

とにかくもうちょい調べてみるか!


「あ!岸田さん!コートの下見してくれませんか?」

「急にどうした?いいけどよ...ほらよ」

「ふむ...」

服は汚れてない...それに何か匂いがするとかでもない

「ありがとうございました!」

「言っとくけど俺は犯人じゃねぇからな」

「はい!」


「鈴木さん!清掃服の下どんな感じかめせて貰えません?」

「下?寒いんじゃがのぉ...ほれ」

何も無いか...ん?

「そのズボンどうしたんですか?そんなに捲し上げて」

「ちょいと暑かったからやったんじゃがもう寒いし、そろそろ直すつもりじゃよ」

「そうですか...」

ズボンの裾に何か赤いものが付いている...だが匂いはしない

他に何かあったはずなんだが...なんだったかな?あぁ!そういえば...とりあえず、

「ありがとうございました!」

「ハイハイ、風邪ひかんようになー」


「2人と被害者の関係性を調べてみましたが、特に会ったことややり取りした事はないようです」

「それと、現場の缶などから鈴木縁平の指紋が出ました」

「そうか...」

やはり犯人は鈴木氏、明らかにあの人だ!

だが、動機はなんなんだ?

関係性はないようだが...

しかし、鈴木氏が犯人なのは確定だし...

とりあえず、本人に聞けば分かる!


「急に呼び出してどうしたんです?」

「それは、あの爆発の犯人があなただからだ!鈴木さん!」

「それはどうして?なんでわしだと思った?」

「あなたは、被害者の前に喫煙所を利用していた岸田さんよりあと、しかし被害者の前に喫煙所に居た」

「それで?」

「それに変な臭いがしたという缶には回収せずに消臭剤をかけただけなのも気になる」

「確かにのぉ」

「そして、被害者の頭近くに血のようになっていた液体はトマトジュースだ。あなたのズボンの裾に付いている赤いものはそれなんじゃないか?」

「ふんふんなるほど、よく分かったのぉ」

「! やはりあなたがやったのか...」

「何か聞きたい事がある顔じゃな?どうした」

「死因の偽装だとは思っているがあのトマトジュースはなんだ?それに動機は?なぜ殺した」

「トマトジュースの方はうっかりじゃ。床に置いてたの蹴ってしまっての?急いで缶だけ回収した」

「動機の方は、ただ興味があっただけじゃ」

「興味?人を殺すことにか?」

「あぁ、わしはもう歳取ってもうてる」

「家族も、親しい人も居らん」

「なら、死ぬまでに気になることしてみようと思ってのぉ」

「それが人を殺すことか?」

「あぁ、人を殺したら、わしはどう思うんか気になってのぉ」

「だから誰でも良かったんじゃ。偶然あの人が死んだだけで」

「そんな事で人を殺したというのか!?」

「そんな事?それがわしには大事じゃったんじゃ!」

「妻を殺したやつはなぜ関係ない人を殺したのか分からなかった!」

「楽しいからと言われたが、だからって話した事も無い人を殺すなんて信じられなかった!」

「ならなんで!殺したんだ!」

「だから言ったじゃろう!わしは、罪のない人を!知らん人を殺したらどうなるのか!」

「それが、それだけが知りたかった!楽しいなんて思ったらあいつと一緒だから!違うと証明したかった!」

「まさか楽しいなんて思ってないよな!?」

「思ったわけないじゃろ!ただただ死んだのを見て苦しかった!罪を犯した事は理解しておる!だから、早く罪を償わせてくれ!」

「...分かった、ちゃんと償ってから奥さんに会えよ」

「...ありがとうなぁ、わしの話をゆっくり聞いてくれて」

「? あぁ」

「おかげで、準備が出来た」

「なんのことだ?」

「ずっと、勇気が出なかった」

「だからなんの事だと!」

「わしは罪のない人を殺してしまったんじゃ」

「ならば、老いぼれであろうとも命を持って償う」

「待っ!!」


グサッ

「な、なんで」

「なんで、こんな事に」

「生きたままでも罪を償えただろうに」

「なんで、なんで...」

何故死んでしまったんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なんちゃってミステリー 綿菓子 @cottonapple_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ