第38話王都での日々
暫く王都に滞在する事が決まってからというものの、貴族達からの茶会や夜会の招待状がひっきりなしに届くようになったのです。予想はしていましたから驚きはしません。王都の貴族達も王家と公爵家の間で揺れ動いているのでしょう。少しでも公爵家の情報が欲しいと思っていてもおかしくありません。私達もまた貴族達の動向を知りたいと思っていたところですから丁度いい機会だったのでしょう。
それは別に良いのだけれど……何故、王太子から招待状が届くのでしょうか?
親交を深めたい?
バカなんでしょうか?
自分が何をしたのか覚えていないと?
何処の世界に婚約を白紙にした者同士で「お友達」をやろうなどと言い出す男性が居るのですか!ああ、ここに居ましたわね。まったく。あの時の騒動を無かったかのような振る舞いには本当に辟易致します。
頭の痛くなる手紙はその後も届きました。
「行く必要はないだろう。私とて、王太子と親交を深める気はさらさらない」
夫のこの一言のおかげで行かずに済んでおります。
この件は夫に任せた方が良いかもしれません。押し付ける訳で少し申し訳ないですけれども、今後の夜会などでは少し気をつける必要があるかもしれませんね。王太子殿下と私達夫婦の仲を取り持とうと考えるお節介な貴族が居ないとも限りませんし。王都在住の貴族からすると王家と公爵家の仲がこじれているのは不安で仕方ないのでしょう。改善に乗り出す馬鹿が出ないように釘を指してい置く必要がありそうですわね。
あの王太子の後ろ盾など二度と御免ですわ!
そうです!
次の茶会は伯爵夫人のところに行きましょう。
彼女ならば社交界以外にも
私の意図を汲み取ってくださる筈ですわ!
こうして私は夫と社交界の有力者のお陰で煩わされる事なく過ごす事ができたのです。やはり、夫に任せた方が得策のようですわ。
数ヶ月後、私と夫は無事に公爵領へ帰る事ができました。
なので、私はその後の騒動のきっかけを作ってしまった事など知る由もありませんでした。
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