第26話影響4

「隣国の伯爵家なんてどうかしら?」


「アリエノール様、子沢山の八男坊です。しかも伯爵家の台所事情は火の車。そのような家の息子と婚姻を結ばなくとも……」


「良いと思ったのだけれど、ダメかしら?」


「アリエノール様は良くても、旦那様と奥様公爵夫妻がお許しになりません。格下の更に格下ではございませんか。せめて侯爵以上の家柄でなければ我が国の貴族は納得致しません」


「そうかしら?」


「はい。因みにどこら辺が宜しかったのですか?」


「子沢山で貧乏なところよ」


「……」


「沈黙しないで。これでも真面目に考えた結果なの。この伯爵家は困窮しているだけで各自の能力はかなり高いわ。家柄も伯爵家だけど、国で最も長い歴史を持っているし、血筋も申し分ないのよ。ただ、で。特に長男から五男までは天才と秀才のオンパレードだし。八男は私よりも五歳年下だからまだ能力は未知数だわ。それでも兄弟を見た限り無能という訳ではないと思うの。それに子沢山という点はメリット以外の何物でもないわ。ラヌルフ公爵家の子供は私一人。子供の数が多過ぎても困るけれど少なすぎても困るのが王侯貴族だわ。ただ、今の公爵家は子供の数が少なすぎるの。分家を合わせてみてもね。この際、家柄や資産を省いて、別の角度から結婚相手を選ぶのもありだと思うわ。それに伯爵クラスならスパイの可能性は限りなく低いわ。これがもっと上の家柄なら国から何らかの指示を仰いで活動する可能性があるでしょうし……安全面を考えてもベストだと思ったの」


「過激な思考力でございますね」


「え?これ過激?だって政略結婚なんだから成果が大切なのは当然でしょう?」


「……とにかく伯爵家はなりません。とてもアリエノール様のご要望に応えられるとは思えませんわ。もう少し幅広く候補者を探してみましょう」


「そうかしら?でもそうね、お父様やお母様の意見も聞かなくてわね」


「そうしていただけると非常に助かります」



 それからも候補者探しは続き、候補者選びは難航を極めました。

 国外の貴族。婿入り希望はかなりの数に上ったにも拘わらず、何故か縁談を持ちかける家は少なく、これに関しては私は首を傾げるしかありませんでした。

 ただ、王妃殿下が私の婚姻を何かと妨害している痕跡がありましたので、貴族達の噂話も馬鹿にできないものかも知れません。



「いっそのこと遠方の国から婿を貰おうかしら?」


 国交を結んでいない国ならば王妃殿下の横やりはないでしょうし、それに私の婚姻を切っ掛けに国交樹立がなれば御の字ですわ。


 そんな提案をお父様にした翌日、とある人物が屋敷を訪れたのです。



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