第25話影響3

 王太子殿下との婚姻がなくなったとしても、私は公爵家の跡取り娘。

 女性の爵位が認められた以上は婿でした。


 私が『ラヌルフ女公爵』になろうと『ラヌルフ公爵夫人』になろうとも……。




「アリエノール様の婚約白紙に影響されたのか、最近は婚姻を早める貴族が増えているようですよ」


「あら?そうなの?」


「はい。それと高位貴族の方々の間で婚約契約の見直しと早期の婚約が推奨されているようで」


「それはまた……」


「早いところでは三歳にならない年齢で既にお相手が決まっているお子様もいらっしゃるようで……」


「まぁまぁ」


 私は今のところ具体的な縁談や婚約について検討してはいません。両親もゆっくりと決めればいいと考えているようですし……。まさか他家に、このような形で影響を及ぼしているとは思いもよりませんでした。


「この分では私の結婚相手を国内で見つけるのは難しそうだわ」


「はい、それと……」


「まだ何かあるの?」


「……はい。王妃殿下が未だにアリエノール様を諦めていらっしゃらないと専らの噂でして」


「…………」


「勿論、再婚約は有りえないと分かってはいます。ですが万が一という事も考えられますので……。また、アリエノール様との再婚約がなかったとしても不出来な妃の代わりに別の令嬢が王太子殿下と婚約をさせられないとも限らないとの噂が高位貴族の方々の間で蔓延しているようです」


「バカな事を」


「はい。ありえない事です。ですが万が一に備えておいた方が良いと各家が判断をしたようです」


 溜息がでそうですわ。

 最悪を予想してそれに備えるのが貴族という生き物。全くないと保証はありませんものね。保証がない以上は「もしも」を常に考えなければならない。それとも王家に、そういった考えを及ぼすナニカ、があるのかもしれませんね。


 もう国外で結婚相手を探した方がいいのかもしれません。

 恐らく、私に合う結婚相手は国内にはいないでしょうから。家柄や年齢を考慮すれば、の話ですが。

 けれど私の婚期が遠のくということは貴族達にあらぬ誤解を招く恐れがあるでしょうね。例えば今噂されている「王太子殿下との復縁」とか。そんな事になれば王家が……いいえ、王妃殿下がこれ見よがしに騒ぎ立てる事は間違いありません。

 折角、王太子殿下との結婚がなくなったのです。有耶無耶になどさせません!


 王太子妃にならずとも、私の価値は高いままで変わらない。ならば追い風の吹いている今が絶好のチャンスともいえます。


「近隣の国々の婚姻状況を調べると共に、国際結婚のメリットとデメリットをまとめましょう。条件のいい独身貴族の選定を開始してちょうだい」


「かしこまりました」


 出来る事から着実にいきましょう。

 まず第一段階として他国の勢力図について確認をしなければ!


 


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