episode.25:電話

「もしもし」


 黒電話を握り、僕はつぶやいてみる。

 手持無沙汰に、くるくるとダイヤルに指をひっかけながら。


「もしもし」


 何度問うても、応えはない。


「もしもし」


 僕は孤独だ。


 突き付けられた現実。

 見て見ないふりをしていた現実。


 僕は電話を受話器に置いた。

 電話台の足元に蹲る。

 一人、ずっとそうしている。


 電話が鳴った。


 こんなことはあり得ない。

 だけど、何かに期待して、僕の震える手は黒電話に伸びる。


『もしもし』


 探る様なか弱い声に、僕は震える声で応える。 


「もしもし、僕はここにいます」

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