episode.21:星空

 山の中を一人歩いている。

 ここは木々が深々と生い茂っていて、暗く、息苦しい。

 早くここから抜け出したい。

 焦れば焦るほど、山道は険しさを帯びる。


 坂道、ぬかるみ、朽ちた橋。


 空は群青から紺へ色を変えようとしている。

 

 焦燥に駆られ、走り出す。

 脚に木の根が絡み、僕は転倒する。

 痛みからか、涙が浮かぶ。

 立ち上がるのが億劫で、身を転がした。


 目に入ったのは、夜空にばらまかれた白い砂。

 いや、よく見たら、それぞれに違いがある。

 大きさが違う。色が違う。光が違う。


 僕は時を忘れて、それを見ていた。


 太陽が昇るころ、僕はその白い砂の名を思い出した。

 それは、星。

 夜空を彩る遥か彼方の瞬き。

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