18章 帝都 ~武闘大会~ 19
予定通り3日間は観光などをしてゆっくり過ごしたあと、俺たちは帝都周辺のダンジョン攻略を開始することにした。
帝都にはA・Bクラスダンジョンが一つずつ、Dクラスが2つ、Eクラスが2つあるとのことだった。CとFクラスがないのでそのランクの冒険者は一度帝都を離れることになる。なので帝都内外での冒険者の行き来が多いのが特徴のようだ。
言うまでもないが、『ソールの導き』はもうBクラスまでは流れ作業のように攻略できるパーティだ。とはいえ時間も余裕があるのとダンジョン間が離れていることもあり、Dクラス、Eクラスも1日ずつかけて踏破した。
得たスキルはすべて既得のもののレベルアップだが、4カ所で計20のレベルアップは大きい。なおサクラヒメは帝都のDとFはやはり踏破済みだったのでレベルアップはなかった。
Bクラスは地下20階の規模だったので、一泊二日で踏破した。本気を出すとボスすらすべて一撃なので俺はフォローに徹し、シズナとサクラヒメ中心にして腕を磨いてもらうことにした。さすがに途中のボスが3体出た時は俺も攻撃に参加したが。スキルはやはりレベルアップのみだ。
なおここまではゲシューラは未参加で、宿にこもって魔道具の研究などをしてもらった。もちろん本人がそう望んだからであり、以前話をした回転運動の魔道具なども作るつもりらしい。
Bクラスダンジョンを踏破した翌日、俺たちはギルドへと来ていた。もちろんAクラスダンジョンの情報を得るためである。
Aクラスダンジョンは25階と、王国のそれより5階分少ない。その分難易度的には下がるわけだが、とはいえ普通に攻略をすると3日以上かかる。ただマリシエール殿下の『
「出てくるモンスターは基本的に王国のダンジョンと同じみたいね。これなら楽勝じゃない?」
ギルドの資料室で皆でガイドを囲んでいると、ラーニが気楽そうに言った。
カルマも両手を頭の後ろに回しながらそれに同調する。
「最後のドラゴンの階層がないっていうのは大きいね。あの階はソウシさんがいなかったら即撤退レベルの難易度だったからねえ」
「私たちの場合は出てくる数が多かったから余計じゃない? ガイドにも2、3匹って書いてあるし」
「それでも難儀なのは変わらないよ。ま、それがないっていうんだから、やりようによっては2日で行けるんじゃないのかい? ねえソウシさん」
「そうだな。かなりの強行日程にはなるが、例えば途中の相性のいいボスを俺が全部相手にすればいけなくはないか」
「あのメイスにかかったらどんなボスも一撃だからねえ」
カルマが苦笑いする。他のメンバーもうなずくが、サクラヒメは少し眉を寄せて苦い顔をした。
「それがしは経験不足ゆえ、Aクラスダンジョンのボスはどれももう一度手合わせはしてみたいのだが……難しいであろうか?」
「そうじゃのう。わらわも同じで、やはりできるだけ強者との戦いは経験しておきたいの。ソウシ殿の一撃を見るのもそれはそれで心躍るものではあるのじゃが」
シズナもそう付け足すと、他のメンバーも「私も同じ」ということを口にした。『ソールの導き』自体、Aクラスダンジョンは一回しか入っていないのだから当然ではある。
「ならば時間もあるし、まずは全員で戦いながら2日かけて行けるところまで行ってみよう。その後行けそうなら、日を改めて2日で一気に最下層を目指す。それでどうだ?」
「私たちが経験を積むことも大切ですから、ソウシさまのおっしゃる通りでいいと思います」
「賛成。武闘大会もあるし『黄昏の眷族』との戦いもあるし、どっちにしてもAクラスダンジョンは何回か入っておいたほうがいいと思うわ」
フレイニルとラーニの意見に皆が賛成し、その方針で行くことになった。
帝都のAクラスダンジョンは、走って1時間ほどのところにあった。
王都のそれと同じく古代遺跡のようなフィールドに大きな
事前情報通り、内部の構造や出てくるモンスターなどはヴァーミリアン王国王都のAクラスダンジョンとほぼ同じであった。
話し合った通り俺は盾役に徹し、メンバーの力を伸ばす方向で戦いを行った。特にシズナとサクラヒメには積極的に前に出てもらうようにして、存分に経験を積んでもらった。
ラーニの『疫病神』、カルマの『相乗』の効果でモンスターの出現数は以前に増して多く、例えば1階で出現するミノタウロスは以前は8体前後だったのだが、今回は平均で10体前後まで増えている。今回はゲシューラも参加しているので『ソールの導き』は9人、いつものこととはいえもはやダンジョンとは思えない多人数の戦闘である。
もちろんその分不意のダメージは誰もが食らうことがあるが、怪我についてはフレイニルの『命属性魔法』がたちどころに治してしまう。すでにフレイニルの回復能力は相当に極まっていて、腕が切り落とされてもつなげることができるレベルらしい。たださすがにそこまでの怪我を負う者はいないので確認することはできないが。
5階中ボス、四本足の獣型金属ゴーレム『メタルビースト』は4体出現したが、1体は俺が潰し、残り3体を3人ずつで戦うことにした。一度戦っているモンスターである上に、全員のスキルも装備も格段に上がっているので、すべて難なく倒してしまった。
宝箱は銀箱4つだが、4つとも『エレメンタルシルク』という、七色の光沢をもつ布が出てきた。
「あれ? これってもう持ってる奴よね?」
ラーニの言う通り、すでに何枚か手に入れている素材である。
「すっかり忘れていたな。これは確か魔法耐性の高い服を作れるという話だったな」
「そうですね。服屋に頼めば縫製をしてくれると思います。帝都にならいくつも店があるでしょう」
マリアネの言葉にうなずいて、俺は『エレメンタルシルク』を『アイテムボックス』に入れる。
「今回のダンジョンアタックが終わったら服屋に行こう。マリアネ、ギルドに戻ったら頼めそうな店を調べてもらっていいか?」
「わかりました。グランドマスターが詳しいと思いますので聞いておきます。それと『エレメンタルシルク』はドレスの生地としても最上の素材とされるものですので、ご承知おきください」
「なるほど、確かにそうだろうな」
と答えたが、その時スフェーニアやサクラヒメがちょっとそわそわしているのが目に入った。彼女たちはファッション好き組なのでドレスというのも気になるのだろう。
「それならもう少し生地を集めてドレスなどを作るのもいいかもな。皆も興味があるなら何を作りたいか考えておいてくれ」
こういうのは俺のような男が考えても仕方ないので、女性陣に投げることにする。
すると急にラーニが耳をピクピクさせた。
「う~ん、でもそれって取っておいて、ここ一番って時のドレスにするのもアリじゃない?」
「ここ一番? この間のようなパーティか?」
「女のここ一番って言ったら決まってるでしょ」
その言葉に、なぜかボスのいないボス部屋に緊張が走ったが……俺はそれ以上は突っ込まずに、皆をセーフティゾーンへ移動するよう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます