第132廻『氷雨日記こころ音日和「輪廻の休憩所」・冥府編』【シリアス廻】第9章・第131廻本編寄り話「あなたの傍らで」

 輪廻りんねたちが冥府の総合大学病院の四人用の部屋に運び込まれてから、もう二日も経った。

 


 りなは二日目に目覚め目を開けた。

 すると傍らに大和やまと椿つばきがいて、丸椅子に座ってこちらを心配そうに見ていた。



 大和

「りなちゃん、起きたんだね!」


 椿

「りな、やっと起きたわね」


 りな

「大和さん、椿さん、私、今まで眠っていたのね」


 りなの姿は聖女の姿ではなく元のりなの姿に戻っていた。

 

 大和

「りなちゃん! 大丈夫? 俺、すっげえ心配したっすよ、あんまり起きないから」

 

 りな

「大和さん、ありがとう。大和さんも無事で良かったわ」


 りな

「椿さんも大丈夫そうね、はっ、輪廻さんは!」

 


 りなは輪廻の姿を隣のベッドに確認すると、近寄り輪廻の顔を覗き込んだ。



 りな

「まだ、目覚めてないんだ……輪廻ちゃん、輪廻ちゃんは治療を受けながら私からの記憶をずっと受け取り続けていたからね」



 りなは輪廻の手を両手で握り、切なげに自身の頬に押し当て頬ずりをした。

 その姿に椿の胸がチクリと痛んだ。



 椿

「大丈夫よ、りな、輪廻さまは必ず目覚めるから」

 

 大和

「そうっすよ、りなちゃん! 心配しなくても若は、そんなヤワじゃないから大丈夫」



 りな

「うん、ありがとう」


 大和と椿は硬い表情で、顔を見合わすと大和が口を開いた。

 


 大和

「そうだ! 若が早く目を覚ますように皆で声を掛けながら、若の周りで過ごすってえのは、どうっすか?」

 


 りな

「ありがとう、それは良いね! 大和さん、椿さん。お昼は輪廻さんの側でご飯食べよう」



 りなと大和、椿は病院食が運ばれて来ると輪廻の周りで昼食を食べ始めた。

 

 大和

「若っ、今日は極楽フィッシュの煮つけとキュウリの漬物っすよ~、病院食って薄味だし、俺、味濃い目の豚のしょうが焼き大盛り定食食いたいっす!」



 椿

「こら、あほ鬼! 贅沢言わないの、食べられるだけ有難いと思いなさいよ」

 

 りな

「うふふっ、二人とも面白い、輪廻さん、肉じゃがも付いているよ」

 

 りな

「起きよう? ね、輪廻さん……大和さんも椿さんも、私も待っているよ」


 りなは寂しに微笑む、輪廻の呼吸をする音が聴こえる、りなは輪廻の手を優しくさする。




 その時、ドアが閉まる音が聴こえ、閻魔えんまおうの声が背後から聴こえた。


 りなと大和がホッとした表情で振り向く。

 しかし、椿はビクッと肩を震わせてゆっくり、振り向くと輪廻のベッドに歩いてくる閻魔王から、逃げるように移動した。

 


 閻魔王

「皆、お疲れ様、輪廻はまだ、起きぬようだな。どれ、我も加わらせてくれ」

 


 りな、大和、椿、閻魔王が見守る中、輪廻の左手の人差し指がピクリと動いた。

 

 輪廻が目覚めたのは、次の日のお昼過ぎだった。

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