#6【裏切りの狂想曲(カプリッチオ)】

第18廻「命令」

 紫闇枢しあんかなめが部屋のソファーに踏ん反りがえりながら、黒髪の女性を罵っている。



「貴様は何か、勘違いをしているようだ。理解しているのか? おのれの立場を」


「はい……理解しております」


「では、なぜ。奴を、閻魔王の息子を早く、殺めない? 貴様は私を軽んじているのか」


 女性は、冷や汗を流して焦った表情をする。


「そのようなことは決してありません、次は次こそは。確実に輪廻を亡き者にします! ですから私をどうか、見捨てないでくださいませ」


 女性は、非情な男に懇願する。


「ふっ、そうか? 貴様が出来なければ私が奴を殺しても良いのだがな」



 紫闇枢は、冷たく笑って言う。


「そんな! やめてくださいませ。あの人は私が必ず!」


 すがる女性の髪を掴んで、枢は軽蔑の眼差しを向けた。


「誰が私に、意見をして良いと言った? たかが、傀儡くぐつのくせに。良いか、何度も言うが……貴様に何一つ権利は無い。私に口答えすれば、生きる権利さえ失うと言うことを良く肝に銘じておけ!」


「はい……申し訳ございません。紫闇枢様。私はあなたのしもべ、ただの傀儡くぐつでございます」


「次はないぞ」


「――はい」


 女性は、暗い表情をして冷徹れいてつあるじ深々ふかぶかと、こうべをたれた。


「ごめんなさい……私は貴方を」


 女性は、涙を流してそう呟くと、紫闇枢の館を出た。

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