第10廻「告白」
湯気の立つ、緑茶の入った湯呑みを二人の前に置く店員。
輪廻は、りなにメニューを渡した。
「ん~っと、私、クリーム餡蜜が食べたいな」
りなは、メニューをパラパラとめくり、クリーム
「俺は、栗ぜんざいで」
「クリーム餡蜜、お一つと栗ぜんざい、お一つですね、少々お待ちくださいませ」
店員は、軽くおじぎをすると席を離れた。
少しの間待って、頼んだクリーム餡蜜と、栗ぜんざいが輪廻達のテーブルに運ばれて来た。
それを食べながらふたりは、会話をしている。
「どうだ?今日は楽しめたか」
「うんっ、お目当てのゆるっコ、ゆるりんのノートとボールペン買えたし、こうして、輪廻さんと甘い物食べてるし、もう最高!」
りなは、輪廻との初デート気分にほくほく顔で喜んでいたが、こんな状況を見られたらまた、椿が怒るに違いないと、そう思うと遠慮がちに少し苦笑いした。
それに気が付いた輪廻は、りなを見つめ言う。
「もしかして、椿のことを考えているのか?ありがとう、でも、今日は何も考えずに楽しい気分を味わってくれ」
心が読める輪廻には、りなの心情はお見通しだった。
ただ、彼はその能力を相手のことを思いやり、やたらに使わない。
りなはそれが、輪廻と過ごして来て分かって来ていてとても、心が温かくなり、嬉しかった。
◇
甘味処から出た頃には、辺りはすっかり、暗くなっており、輪廻はりなを家まで送ることにした。
「今日はありがとう、輪廻さん。凄く楽しかったわ」
「俺もだよ、りな」
「ねえ、輪廻さん…」
「ん…?どうした」
「私の心が読めるなら、分かるよね?私が貴方のことをどう思ってるか」
りなは輪廻に近づいて、頭を胸にくっつけ、そのまま彼を見上げて、見つめる。
「――すき、私、輪廻さんのことが…出逢った時から」
その熱視線と、潤んだ瞳に思わず、輪廻の頬も染まった。
しかし、困ったように溜め息をもらす。
「ありがとう、俺もりなのことは好きだよ。しかし、俺は…閻魔王の息子で、君は人の子。今は、同じ時を共有していても、いずれ別れが来る」
「そんな言い方しないで…!じゃあ、椿さんならいいの?あやかしの彼女となら、貴方は」
りなは眉根を寄せ瞳から、ぽろぽろと涙が溢れる。
「…ごめん。りな、泣かせるつもりはなかったんだ」
輪廻は、りなの涙を人差し指ですくうと、その額に口づけを落とした。
「輪廻、さん…」
「ただ俺は、りなに対しても、椿に対しても誰にも愛される資格はないんだ。俺は、大切な人を見殺しにしてしまったのだから…」
輪廻は、りなを見つめて今にも、壊れそうな傷ついた表情をした。
「えっ…?それって、どういう…」
りなが、驚き、気遣いながら聞こうとすると、突如、女性の絹を裂いたような悲鳴が辺りに響いた。
「キャアア!!」
そのただならぬ、鬼気迫る声に驚いた輪廻とりなは、悲鳴がした方へ駆けて行った。
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