第14話 魔獣の襲撃
アリアが寝床へ戻ったのを見計らったように、紗雪はやってきた。
「聞いてたのか?」
「偶々、京介の様子を見に来たら、アリアと喋ってるのを見かけたのよ。私が途中で入っていって良い雰囲気じゃなかったから、聞き耳を立てることになっちゃっただけ。」
紗雪は、少しだけ悪いと思っているような表情をする。
「ねえ、私はアリアを守ってあげられると思う?」
「紗雪が一人で守るんじゃない、守らなきゃいけないときが来たら、俺たちで守るんだ。」
「生意気ね。私の魔法に勝てると思ってるわけ?」
その言葉には答えを返さなかった。何となく、今は紗雪に嘘をつきたくなかったのだ。嘘をついたら、アリアを守りたいという気持ちまで嘘になってしまいそうで。
「生意気ね。」
紗雪はもう一度だけそう呟くと、それ以上は何も言わなかった。
月明かりの下、俺と紗雪はしばらく無言の時間を過ごした。
「おはようございます、領主様、それに京介さんも。」
アリアは昨日の夜の様子が嘘のように明るく挨拶をしてきた。
俺も紗雪もそのことについて、わざわざ触れるような真似はしない。アリアと同様に、昨日の夜の事はなかった事のように挨拶を返した。
そうして、俺たちは再び蛇王の墓所へと向かって旅をはじめた。
ちょうど、太陽が一番高い位置に来た辺りで、俺たちは一度休憩を取ることにした。
それぞれ、自分の好きなように過ごしていた。アリアは、草原に寝転がっており、紗雪は、簡単な体操をして体をほぐしていた。俺はというと、ここまで運んできてくれた馬をねぎらう気持ちでなでていた。馬は気持ちよさそうに鳴き声を上げていた。そんな穏やかな休憩時間だったから、一瞬その出来事に対して、反応が遅れた。
狼のような魔獣が、アリアに向かって襲いかかっていたのだ。寝転んでいるアリアは当然のように避けられない。紗雪も魔法を準備する時間が無い。俺は、素早く状況を確認すると、アリアに向かって走り出した。ほとんど、瞬間移動のような早さで、アリアの元に辿り着くと、ちょうど起き上がろうとしていたアリアを庇うように抱え込んだ。
アリアの代わりに、俺が魔獣に噛まれる。しかし、魔獣の牙は俺の体に傷一つつけることはなかった。その理由は、俺が常に防御の結界術を体の周りに薄く展開しているからだ。その結界に阻まれて、魔獣の牙は俺の体を貫くことができなかったのだ。
結局、奇襲に失敗した魔獣は、準備の整った紗雪の魔法によって、消滅させられた。これで、一安心である。それにしても、気が緩みすぎていたのか、実践から離れすぎていたのか、あの程度の魔獣に接近を許してしまうとは、我ながら情けなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます