第2話 変わり始めた風景
新学期が始まった。夏の終わりを告げる風が教室のカーテンを揺らしていた。太陽の光はまだ強かったが、空気には確実に秋の訪れを感じさせるものがあった。祐一はその変わりゆく季節の中で、自分自身の変化を感じ始めていた。
夏のセミナーから一月が経過し、祐一の周りの風景は微妙に変化していた。彼はもう、教室の隅の影ではなく、人々の輪の中にいた。会話はまだ少し緊張するものの、彼の意見はクラスメイトによって尊重され、時には笑いを誘うこともあった。
「祐一、今度のプロジェクト、一緒にやらない?」授業後、美咲が彼の机に近づいてきた。彼女はクラスで一番人気のある女の子の一人だった。以前ならば、こんな会話は夢にも思わなかった。しかし今、それが現実に起こっていた。
祐一は少し驚きながらも、自信を持って答えた。「いいね、一緒にやろう。」
自己啓発セミナーで学んだことを実践に移す毎日は、祐一にとって新鮮な挑戦だった。彼は学んだ通りに姿勢を正し、目を見て話し、相手の意見に耳を傾けることを心がけていた。
放課後、彼は美咲とプロジェクトのアイデアについて話し合うために図書室へと向かった。以前の祐一ならば本を読んでいるだけだったが、今では他人との関わり合いを楽しむようになっていた。
「ねえ、祐一。あなたって本当に面白いよね。夏休み前と全然違う。何かあったの?」美咲の質問は、祐一にとっては褒め言葉以上のものだった。
祐一は内心で微笑んだ。彼は自分が変わったことを自覚していた。そして、その変化はただの始まりに過ぎなかった。
祐一の心は美咲の質問に飛び跳ねた。彼女の目は好奇心で輝いていた。彼はためらいながらも、夏のセミナーのことを打ち明けた。「うん、実は夏休みに自己啓発のセミナーに参加したんだ。自分を変えたかったから。」
美咲は驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑顔に変わった。「すごいじゃん!そんなことができるなんて、私にはできないよ。」
祐一は彼女の言葉に心を弾ませ、もっと自分に自信を持ち始めた。そして、プロジェクトのアイディアを一緒に練り上げる過程で、美咲との距離が近づいていくのを感じた。
学校が終わる頃、祐一はもはや以前の自分ではなくなっていた。彼の変化は周囲にも影響を与え、他の生徒たちも祐一との交流を求めるようになっていた。
日が落ち、祐一は家の方向に歩き始めた。彼は自分の影が長く伸びているのを見ながら考えた。影は今までと同じ方向に伸びているが、その主である自分は全く新しい人間になりつつある。祐一は変わり始めた自分の風景を心から楽しんでいた。
そして、彼はもう一つ大切なことに気がついた。変わることは恐れることではなく、喜びを感じることであると。祐一は心の中で誓った。これから訪れるであろう多くの変化を恐れずに、勇敢に前に進んでいくことを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます