高校時代の回想(野球の珍プレー編)

イノベーションはストレンジャーのお仕事

高校二年時の走塁珍プレー

 あれは忘れもしない、高校二年になったばかりの時のお話です。運よくレギュラーに抜擢された私は、先輩方に迷惑をかけまいと必死に練習をし、試合に出させていただきました。

 春先に市内のリーグ戦なる準公式戦がありました。対戦相手は市内の工業高専。さほど強い相手ではありません。会場は公式戦で使われる市内の野球場です。さすがに正式な野球場で行われたため、普段より親御さんの数が多かった気がします。

 打順は2番で、二塁手として先発出場しました。何回の事かは忘れましたが、私が先頭バッターになった攻撃時に事件は起こりました。

 私は四球を選び、無死で一塁のチャンス。確か2球目だったか、盗塁のサインが監督から出ました。私は足には自信がありましたので、監督のサインに従いスタートを切りました。しかし、二塁上でクロスプレーになり、判定が微妙なタイミングになりました。私は足から滑り込んだのですが、キャッチャーの送球を受けた高専のショートが、タッチしながら小さい私に覆いかぶさって来ました。そのため、審判のコールも不明、姿も見えません。

 自分でアウトだと思い、申し訳ないなーと思いながら三塁側の自陣ベンチにとぼとぼ歩き始めました。スタンドからの声援は結構聞こえてはいましたが、グラウンドレベルで何を言ってるかははっきり分かりません。俯いて歩いているとき、三塁の先輩コーチャーが私に何やら言っているようでしたが、私には何の事理解できないまま歩いています。(後から聞きましたが、高専のショートは、セーフなのに何してんだ?と、この時あっけにとられていたらしいです)三塁スタンドの大勢の親御さんたちも何やらわーわー言っています。あー恥ずかしいと思ったその瞬間、肩にグローブが触れました。

 <え?>

 私は何が起こったかわかりません。

「アウトー!」という審判のコール。なんと、私の盗塁は成功しており、勝手にアウトだと思って、とぼとぼ歩いていた私に高専のショートにタッチされたのです。ショートの選手は飛び跳ねて喜んでいます。再び三塁側を見ると、コーチャーボックスで先輩が顔を隠してうずくまっていました。さらに、スタンドの親御さんたちからは大きなため息。

<やっちまった!>

 更に自陣のベンチに帰りづらくなりましたが、ベンチ内の皆さんに「そのまま三塁に走ればいいのに」なんて笑われて事なきを得ました。結局、その試合は勝ったような気がします。うちの親は幸運にも?その時不在でした。その場で保護者内の笑いものにならずにホッとしました。

 その後、自分が引退して野球部の仲間の家に遊びに行くと、そこの親父さんが必ず

「あ、あのアウトになった子だろ?」

と、半笑いで出迎えて頂けるようになりました。

               (おしまい)

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高校時代の回想(野球の珍プレー編) イノベーションはストレンジャーのお仕事 @t-satoh_20190317

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