第60話 俺の戦い
「ドラゴンゾンビの一種ですか?」
ジョンの質問。
クリスタさんは首を横に振る。
「フィッシュドラゴンはドラゴンとは別種です。種として近いのはワイバーンでしょうか」
ワイバーンは飛龍なんて呼ばれるが、いわるゆドラゴンとは別種の魔物だ。
しかし強力な事は間違いない。
そのワイバーンと近い種というと……
「かなり強力な魔物とみていいですか」
「ええ。水中で戦うのは自殺行為でしょう。ですが水中から外に出る事はまずないと思われます。元となった
「なら魔法で戦うか、水を抜くかしないと駄目かニャ」
ミーニャさんの言うとおりだ。
矢や投げ槍では水中の敵は倒せないだろう。
それなら水を抜くか、水中に効果がある魔法を使うしかない。
「ええ。ですが水を抜くのは難しそうです。この水はこの付近を流れている地下水脈と繋がっています。ですから周囲の地下水脈を全て塞いだ上で、此処の水を無くさなければなりません」
「ちょっとばかり大工事になるかニャ」
ちょっとではない大工事だ。
この空間の周囲を防水層で囲むのだから。
「魔法で流れている水を閉じ込める事は出来ないですか?」
「ここの水中部分は
クリスタさんはジョンの質問に首を横に振る。
そう、無理なのだ。
「エイダンの雷撃魔法は効き目ないかニャ」
これは俺が答えるべきだろう。
「多分ほとんど効きません。敵が水中にいる場合、敵に雷撃が届く前に、威力が水中へと分散してしまいますから。雷撃を本体に直接当てる事が出来たら別ですけれど」
ん!? 何かが閃きかけた。
何に閃きかけたのだろう。俺は自分の今言った言葉をなぞる。
『多分ほとんど効きません。敵が水中にいる場合、敵に雷撃が届く前に、威力が水中へと分散してしまいますから。雷撃を本体に
そうだ。直接当てる事が出来るなら、倒せる可能性がある。
そして相手は
ならば倒す、少なくとも電撃魔法を直撃させる手段はある。
「クリスタさん。少し準備が必要ですが、あの魔物を倒せるかもしれない方法があります。協力していただけますでしょうか」
「わかりました。私の手持ちの魔法ではおそらく無理ですので、協力しましょう」
「クリスタの魔力で凍らせるのは出来ないのかニャ」
おっと、その手もあるのか。
しかしクリスタさんは首を横に振る。
「何もない状況でこの量の水でしたら、全面的に凍らせる事は可能でしょう。ですがあの
ならやはり、俺が考えた方法くらいしか無さそうだ。
「それではまず、こちらの安全地帯を作ります。水のあるところから50cm以上手前側の土を乾燥させて、更に焼き締める事は可能でしょうか」
「乾燥させるのは私の魔法で可能です。ただ焼き締めるのは少し難しいかと思います」
なら……
でも取り合えずお願いするか。
「わかりました。それでは乾燥だけお願いしていいでしょうか」
「わかりました」
その返答と同時に、手前側の地面の色がさっと白っぽく変化した。
手に取って、少量を
うん、絶縁性はそこそこ高い。水がしみ込まなければ大丈夫だろう。
「それでは左側の奥ぎりぎりに移動してください。ただし壁は触らないように。ちょっと危険な魔法を使うので、俺から離れた方が安全ですから」
「わかりました」
皆が離れていくのを確認しつつ、俺は高熱魔法を使う。
皆が離れた方向とは反対側に、素焼き状態になった部分が出来た。
これも絶縁の為だ。
短時間なら乾かした土と素焼き状態の土で何とかなるだろう。
それでは勝負だ。
俺は今回使う武器を
武器とは、290cmちょいのリール竿にシマノオ2500番台くらいのスピニングリール、そして小魚を模したルアーがついた仕掛け。
糸は
この糸ならとんでもなく引いても切れる可能性は少ない上、
つまり今回の目的に最適の糸だ。
ただしルアーは大型のものに交換しておこう。
ルアーにつけている
これでいいだろう。
俺は仕掛けを
竿を横に構えて、そして洞窟奥の壁に向かってルアーを投げる。
ルアーが奥の壁ぎりぎり手前で着水。
俺はリールのアームを戻し、ハンドルを回す。
ルアーが
ルアーを追いかけてくる。
ならという事で巻く速度をあえて上げて、ルアーを浅い場所へと移動させる。
そしてルアーに下から食いついて、その勢いのまま水上に跳ねた。
今だ!
『電撃魔法!』
電撃が糸、竿、俺、そしてルアーを咥えた
俺の足元は絶縁されている。
だから電撃は俺の身体を流れない。
それでも若干のダメージはあるが、防護魔法を同時発動すれば何とか誤魔化せる。
糸を通じて流れた電撃は、電流として地に伝わるルートを探す。
できる限り導電率の高い部位を求めて。
俺の側からは流れない。
しかし
水中も完全に乾燥させた土や空気より電気抵抗が小さい。
激しい爆発音。
これは大電流が流れた結果、瞬間的に高温となって、爆発するように蒸発した水の音だ。
それでも活動停止しないところは流石だが、ここまで弱体化したなら問題無い。
俺は身体強化魔法を使い、竿を上げつつリールを巻いて
ざっと目には危険な電荷を帯びている場所はない。
今の爆発あたりで電流として流れてしまったようだ。
触れても問題はない。
ならばここから先は、俺よりこの人の方が適切だろう。
「ミーニャさん、あとはお願いします」
「了解なのニャ!」
ミーニャさんがダッシュ。
岸の上で弱々しく動く
残った
「終わりですね。珍しい魔物ですので、エイダンさんがまるごと収納していただけますか」
「わかりました」
触れるとあっさり
討伐、完了だ。
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