第14章 見えない、その先
第53話 探索1日目終了
小休止の後、再び電撃魔法を放って歩くこと2回。
3回目の電撃魔法を撃つ前に、俺は先を透視で確認する。
この先30mで右に分岐がある。これは第1採掘坑だろう。
そこでポイズンスライムとポイズントードの魔力が無くなっている。
透視魔法で今までの違いを確認。
第1採掘坑への分岐がある事の他、右側通路端に排水路があることが大きな違いだ。
そして、その排水路を流れている水から感じる、濁った
これは間違いなく……
「クリスタさん。この先30m、第1採掘坑との分岐ところで一気に魔物がいなくなっています。またその付近から右側端にある排水溝に濁った
クリスタさんは目を細めて坑道の先方向を見る。
「確かによくない感じの
「わかりました」
今までと同様、電撃魔法を放つ。
ポイズントード等の気配が消え失せた。
排水溝を流れる水に感じる
「それでは注意して進みましょう。ミーニャさん、水路の5m位手前で立ち止まって下さい」
「わかったニャ」
ミーニャさんがゆっくりと歩き始める。
今のところ怪しい魔力を感じない。
ゆっくり歩いて、そして……
「この辺で止まるニャ」
ミーニャさんが立ち止まった。
第1採掘坑と、そこから先の坑道右端を流れていて、第一採掘坑へと続いている排水溝がはっきり見える。
俺は排水溝の前後を透視と魔力探知で確認。
排水溝はこの奥、第2採掘坑分岐方向から流れてきて、第1採掘方向へと続いている。
第1採掘坑の元採掘現場からこの坑道とは別の経路で外へ通じていて、最終的には沈殿池へと続くようだ。
そう言えばこの
つまり……
「アンデッド系の汚染ですか」
クリスタさんは頷いた。
「そのようです。ポイズントードやポイズンスライムがこの先にいないのも、この汚染のせいでしょう。これらの魔物にとってもアンデッド系に汚染された
なるほど。ならこの水路に濁った
そのかわり……
「今俺が確認した限りでは、第1採掘坑と第2採掘坑、そして第2採掘坑までの間のこの坑道に、魔物や魔獣は感知できません。透視や魔力探知で、という意味ですが。その先でアンデッド系の魔物が出る、そういう可能性はあるでしょうか」
「ありうると思います。此処の洞窟に魔物化する死骸がどれだけ残っていたかによりますけれど。
この坑道の扉のすぐ内側にいたゴブリンゾンビ。あれは廃坑になった後、この坑道に住み着こうと侵入したゴブリンのなれの果てでしょう。この坑道内の汚染された水や汚染された空気により、アンデッド化したと考えるのが一番簡単です。ゴブリン程度でしたら排水溝や通気口など、入れる場所が何か所かありますから」
そう言う事は、やはり。
「汚染された
「ええ、その通りです。魔物は襲う対象があればそちらへと動きますが、そうでない場合は
「そこへ行って、魔物を一掃すればいいのニャ?」
ミーニャさん、なかなか豪快な事を言う。
「もちろんそれは必要でしょう。ただしアンデッド汚染がどうして起こったかについても調査する必要があります。具体的には祭壇や魔法陣、魔術式などの儀式の痕跡やまだ生きている魔道具等がないかです」
確かにその通りだ。
未だに効力を発揮している何かなんてのがあったら、幾ら魔物を倒しても意味がない。
ある程度の期間で復活してしまうだろうから。
「ところでエイダンさん、この先第1採掘坑には敵はいない、この坑道も第2採掘坑までは敵はいない。そう判断していいでしょうか」
その通りだ。でも一応さっと魔力探査と透視魔法で確認する。
「ええ、大丈夫です」
「わかりました。それでは第2採掘坑との分岐まで進みましょう」
「わかったニャ」
俺達は再び歩き始める。
◇◇◇
第9採掘坑の分岐までの間は、魔物も魔獣も出なかった。
それでも一応警戒しながら歩くし、場所は地下の穴の中。
そしてお昼休憩も、3時の休憩も当然取った。
だからそこそこ時間がかかってしまう。
そして。
「そろそろ疲れたのニャ」
時間確認魔法で時間を確認すると、午後5時過ぎだ。
周辺を魔力探査と透視魔法で確認する。
「エイダンさん、周辺に危険な存在はいますでしょうか」
ちょうど確認したところなので、状況は把握済みだ。
「いません」
「なら今日はここで休むことにしましょう。換気口も脱出口もありますから坑道の中では比較的環境的にましでしょう。ですので重野営セットの設営をお願いしていいでしょうか」
「わかりました」
設営は簡単だ。
① 結界柱を道の両端、10mくらい離した場所に置く
② その間に組み立て済みの箱のような構造物を出す
以上で完了だ。
この結界柱については
更には材質以外全く同じものを鉄で作った。
この依頼が終わったら銀を入手して、作ってみるつもりだから。
「やはりエイダンさんの
「それより何より御飯なのニャ。ここまでの食事は節制したから、夕食は気持ちよく食べるのニャ」
確かにミーニャさんとしては節制したのだろう。
昼食時にバゲットサンドイッチの他、一人だけ追加でアジ・サバ天丼フルサイズ2杯を食べ、3時の間食で拳骨サイズのおにぎり6個を食べたとしても。
俺はミーニャさんの食事量をよく知っている。
だから今回、負けない位には用意してきたつもりだ。
まずは冒険者ギルドが用意した夕食メニューから出す。
楕円形の表面がやや硬いパンが1人1個半。
レタス、アスパラガス、トマト、ジャガイモのサラダ。
そこそこ分厚いビフテキ1枚半。
初心者講習生と比べると段違いにしっかりしたメニューだ。
これだけで普通なら充分満足出来るだろう。
しかし……
「
「はいはい」
まずはおにぎりを6個。中身はアジの干物をほぐしたの3個と、アジの味醂干しをほぐしたもの。
ヒラメの刺身半身分。
ウミタナゴの煮物とヒイラギの煮物も出しておく。
「これでいいですか」
「フライも欲しいにゃ」
はいはい……
◇◇◇
ミーニャさん程ではないが、それなりに食べて。
「明日は5時に起きることにしましょう。私とミーニャはカーテンの右側のベッドを使用します。エイダンさんとジョンさんはカーテンの左側ベッドを使って下さい」
「わかりました」
クリスタさんの言う通り、二段ベッドは左右それぞれカーテンで仕切れるようになっている。
女性と男性という事で、わけるのが正解だろう。
「上と下、どっちにする?」
ジョンに二段ベッドのどっちを使うか聞いてみる。
「下がいいけれど、エイダンはそれでいいか?」
「わかった」
俺はどっちでも問題無いから、梯子を使って上へ。
ベッドは初心者講習生のものよりは大きくしっかり出来ている。
布団もわりとまともだし、マットもそこそこクッション性がある。
つまりは快適だ。
横になると一気に睡魔が襲ってきた。
特にハードな討伐はなかったけれど、1日中慣れない探索をしたのだ。
疲れていて当然。
結界柱で囲まれた中だしクリスタさんもいるし、問題はないだろう。
だから俺は特に心配せず、目を瞑って睡魔に身を任せた。
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