第29話 予想された展開
例によって早朝に舌平目拾いをした後、朝食を食べ、そして朝8時半に家を出る。
冒険者ギルドは朝一番の混雑が終わりかけた状態だった。
窓口にはまだ数人並んでいるけれど、列が長くなる様子はない。
ほとんどの冒険者が既に依頼を受理して出るところだ。
窓口のうち一人しか並んでいない列につく。
すぐに俺の番になった。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょうか」
今回は男性の受付担当さんだ。年齢は30前後くらいだろうか。
「C級の学科試験を受けに参りました。こちらが冒険者証です」
「エイダンさんですね。ミーニャから伺っています。奥の面談室3番に行って下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
何回も来てもうお馴染みの面談室のうち、3番とかかれている扉へ。
扉は半分開いていて、中に人がいるのがわかる。
よく知っている魔法反応。そう、クリスタさんだ。
なおクリスタさん、本日もエルフではなく受付嬢モードだった。
此処では基本的にこっちの姿でいるらしい。
「お待ちしていました。それではさっさとC級試験を終わらせてしまいましょう。まずは冒険者証をお預かりします」
冒険者証を渡しつつ思う。
受験しましょうではなく、終わらせてしまいましょうか。
クリスタさんらしいけれど、冒険者ギルド的にそれでいいのだろうか。
「それでは問題を出します。筆記用具は持っていますでしょうか。無ければ冒険者ギルド備付のものを出しますけれど」
「大丈夫です。持っています」
そういった基本的なものは一通り買い揃えている。
クリスタさんは頷いた。
「それでは問題用紙を配ります。制限時間は3時間ですが、見直し等をしてこれでいいと判断したら、時間内に提出していただいて結構です」
制限時間いっぱいなんて使わずさっさと提出しろ、という事だろうか。
クリスタさんなら、そういう意味のような気がする。
「私は少し席を外しますが、一応魔法で監視はしています。終わったりそれ以外に質問等がある場合は手を上げて下さい。私なり他の係員なりが参りますから」
つまり俺が試験中は他の業務をするという事か。
初心者講習の様子を覗いているのか、それとも別の事をしているのか。
わからないけれど、特に気にしないようにしよう。
「ではこれが問題用紙です。解答用紙がこちらです。名前等を書く必要はありません。それでは始めて下さい」
そんな感じで試験が始まった。
◇◇◇
問題そのものはそれほど難しくなかった。
これなら速読で教科書を一度読めば充分だ。
という事で見直しもひととおり終わったので手を上げる。
すっ、残像のようにクリスタさんが出現した。
最初からここにいて隠蔽をかけていたのか、それとも超高速移動より更に難しい転移魔法で移動して来たのか。
今の俺ではわからない。
やっぱり俺以上にチートな存在だと再確認。
「何でしょうか」
「ひととおり見直しが終わりました。これで提出します」
「わかりました。それではこのまま、10分程お待ち下さい」
クリスタさんはそう言うと俺の解答用紙と問題用紙両方持って、すっと姿を消す。
もう俺の前ではチートを隠すつもりは無いらしい。
それにしても待つのは10分でいいのだろうか。
採点をして、冒険者証を更新するだけでも、もっと時間がかかる気がする。
でもクリスタさんが10分と言うのなら、10分以内にやってくるだろう。
だから俺は
都会に出て行く気はない。
ただ本はある程度購入したい。
『せめてアクラ、出来れば王都ハイファや商都ナムティ等に行かなければ手に入らないでしょう』
そうクリスタさんは言っていた。
そしてアクラまではほぼ海沿いに東へ180km。
なおナムティまではドーソンから東へ1,000km以上、ハイファはナムティから更に100km程南に行った場所となる。
ナムティまで本を買いに行くとすればせめて往復2日欲しいところだ。
ここの道は時速250kmで走るのがほぼ限界という整備状況のようだから。
俺も流石に2,000km以上を1日で走るのは避けたい。
そういえば此処のギルドで扱っている本についてもまだ確認をしていない。
あとは貸与されている本の返却期限までに、地図帳くらいは買っておいた方がいいだろうか。
冒険者ギルドにある本については帰りに相談するとして、他についてはミーニャさん辺りに相談すればいいだろうか。
あの人なら商業ギルドで売っている本等についても知ってそうだから。
そう言えばミーニャさん、アクラにもいたと聞いている。
だから、アクラにどれくらい本があるかについても知っているかもしれない。
クリスタさんより相談しやすいし、後で聞いてみよう。
なんて考えたところで目の前にクリスタさんが出現した。
「結果は合格です。おめでとうございます。C級に更新した冒険者証をお渡しします」
色が変わって緑色になっている。あとは級の記載と名前があるだけで、デザイン的には変わりない。
「これでエイダンさんはC級冒険者です。なのですが順調にここまで来たので、強力な魔物等を相手にパーティで戦うというような経験をまだしていません」
なるほど、ミーニャさんが言ったような展開になってきたな。
それではどんな依頼を受けさせられるのだろうか。
強力な魔物という所が少々怖いのだけれども。
「ですのでここで他のタイプの冒険者と一度、パーティを組んで討伐依頼を行う事をお勧めします。、エイダンさんは魔法主体の冒険者ですので、近接攻撃を主体とした冒険者と組んで」
なるほど。言っている意味はわかる。
ただし個人的な問題がある。
「わかりました。ですが俺は他に知り合いの冒険者はいません。ですのでパーティを組むと言っても適当な相手がいないのですけれど」
「そのあたりについてはギルドの方で調整します。まずはちょうどいい依頼がありますので、そちらの確認から」
さて、どんな依頼なのだろう。
俺はクリスタさんが差し出した依頼票を受け取って、そして読み始める。
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