182.遊び場を作ろう(1)

 今日は子供たちと遊ぶ日。午前中は家畜の世話をしたり、キャラメルづくりをしたりして楽しく過ごした。昼食を食べると、待ち合わせ場所へと急いだ。


 待ち合わせ場所の青い屋根の家の傍に行くと、すでに何人かの子供たちがあつまっていた。


「よぉ!」

「来た来た!」

「待ってたよー!」


 子供たちに近づくと軽く挨拶をしてくれる。その挨拶をこっちも軽く返すと、残りの子供たちが来るまで待機となった。


「今日はどんな遊びをするー?」

「またには変わった遊びもしてみたいな」

「変わった遊びってどんなのー?」


 他の友達を待っている間、何をするか相談が始まった。


「ウチはまた森で冒険ごっこがやりたいぞ!」

「クレハはいつも本当の冒険をやっているのに、冒険ごっこが好きだね」

「それとこれとは別物なんだぞ。楽しいぞ、ノアもやってみるか?」

「私は魔法を使っていた方が楽しいから。イリスはどうする?」

「そうですねー、他の子の意見を聞いて決めます」


 毎回同じ遊びをしたり、ちょっと変えてみたり。色んな遊びがあってとても楽しそうだ。子供の遊びなんてつまらない、と転生した私は思ったけど、精神年齢が体の年齢に引っ張られてどんな遊びでも楽しむことができた。


「あーあ、何か変わったものがあればもっと楽しいんだけどなぁ」

「大人に何か作ってもらうっていっても、みんな忙しいしね」

「楽しい遊び道具とかあればいいのに」


 遊ぶための道具か……確かにそれがあれば遊びはもっと楽しくなりそうだ。例えば前世の公園にあった遊具とか、バッドやグローブといった遊び道具とかあればな。


 ん、もしかして作れるんじゃない? 私の創造魔法を使って、遊具や道具を作ったりすることができる。それがあれば、子供たちはもっと楽しい時間を過ごせるはずだ。


「良かったら、私が作ろうか?」

「え、ノアちゃんが何かを作ってくれるの?」

「分かった、魔法でどうにかするつもりなんだろ?」

「そう、魔法で遊ぶためのものを作ろうと思う」


 私の話を聞いた子供たちは一斉に沸いた。


「ノアってすごいんだな! キャラメルを作るだけじゃなくて、遊ぶための道具を作るなんて!」

「わー、どんな遊び道具ができるんだろう。楽しみ!」

「一人でも遊べるものがあると嬉しいな」


 新しい遊び道具が手に入るとあって、子供たちはみんな嬉しそうだ。隣で聞いていたクレハとイリスも嬉しそうにしている。


「ノアが作るんなら間違いないな!」

「どんなものを考えているんですか?」

「それは出来てからのお楽しみだよ」

「えー、ズルいです!」

「うわー、秘密かー!」


 どんなものを作るのか秘密にすると、みんな悔しそうに頭を抱えていた。ふっふっふっ、悶えろ悶えろ。それがあると、出来た時の喜びは一層高まるだろう。


「おまたせー! なんか、楽しそうだな」

「ノアが新しい遊び道具を作ってくれるんだって!」

「えー、そうなの! なんだろう、楽しみ!」


 楽しく話をしていると、子供たちが集まってきた。その子供たちが話に加わるとより一層賑やかになる。しばらくは遊びに行かないで、その場で話をして自由な時間を楽しんだ。


 ◇


「むむむっ」

「うーん」

「……むぅ」


 私はいつものように子供たちの魔法の練習の手伝いをしていた。タリアとルイは自分の中の魔力を探して集中して、ティアナは魔力を外に出すことを練習している。


「なんかありそう、なんだけどどうやって引き出せばいいのか分からないわ」

「僕も自分の中に何かがあるのは分かるんだけど、どうやって出せばいいのか分からないや」

「……私は少し魔力を外に出せた」

「本当に? 凄いじゃない!」

「ティアナは魔法を使う才能があるんだね」


 魔法の練習は少しずつだけど成果が出てきた。タリアとルイは魔力を感じることができたし、ティアナは魔力を外に出すことができるようになった。魔法も何もできないところから、かなり進歩したと思う。


「あーあ、ノアみたいに自由に魔法を使える日はくるのかしら」

「きっと来るよ。だから、練習あるのみ」

「僕んちなんかさ、魔法なんか使えないって言ってくるんだよ。絶対に魔法を使って見返してやるんだ」

「少しずつ魔力が分かるようになってきたんだし、使えないってことはないと思うよ」


 時間はかかるけど、このまま練習していけば魔法を使えるようになるだろう。三人のやる気が持続するように声かけをした。


「ここはキャラメル休憩としましょう」

「そうだね、キャラメル休憩にしよう」

「キャラメル……」


 三人の熱い視線が一斉にこちらを向いた。みんなすっかりキャラメルのことを気に入ってくれたみたいだ。私は瓶を取り出すと、三人にキャラメルを配った。すると、三人はパァッと笑顔になり、美味しそうにキャラメルを頬張った。


「うーん、甘くて美味しい!」

「アメじゃない、独特の味が癖になるよね」

「美味しい……お姉ちゃん、ありがとう」


 みんなが美味しそうにキャラメルを頬張るのを見ると、自分も食べたくなってくる。一つ口の中に放り込んで転がすと、キャラメル独特の甘味が口にいっぱい広がった。


「ノアって不思議よね。大人顔負けの魔法が使えるし、こんなに美味しいものも作れるし……本当に何者なの?」

「もしかして、本の中から飛び出してきた最強の魔法使いじゃない」

「本!? お姉ちゃん、本の中から出てきたの!?」

「まさか、そんなわけないよ。たまたま、魔法の力を手に入れることができただけだし、美味しい物も私が発案っていう訳じゃないよ」


 また突拍子もないことを。子供の発想力ってすごいな、どうやったら私が本の中から飛び出してきたって考えつくんだろう。でも、鋭いところもあるから時々ドキッとしちゃう。何かを疑われるのって心臓に悪いよ。


「それに私だけじゃないでしょ。クレハとイリスだって凄い力があるから魔物討伐をすることができるんだよ」

「そうよね、凄いのはノアだけじゃないわ。もしかして、この村の外から来た人はみんな凄い人なのかしら」

「それだったら、冒険者の人たちも凄い人たちってことになるよね」

「えっと……私も村の外から来たけど」

「あちゃー、そうだったわ。じゃあ、凄いのは三人っていうことになるわね。どうして、三人は凄いのかしら」


 それはきっと称号があるからだと思うけど、そんなことが言えるわけもなく。みんなと一緒に唸って考えるふりをする。すると、ルイが思いついたように声を上げた。


「凄いって言えば、僕らが遊ぶ道具を作ってくれるのも凄いんじゃない」

「そうそう、どうやって作るの?」

「魔法で作るって言ってたけど、お姉ちゃんはどんな魔法を使うの?」


 三人の熱視線がまた集まった。んー、これはどういう風に言えばいいんだろうか?


「えーっとね……そうそう! 物を作る魔法を覚えてね、それを使って遊び道具を作ろうと思ったんだよ」

「魔法って物も作れるんだ……凄い!」

「魔法って火を出したり、地面を動かしたりだと思ったけれど、そんなこともできるのね」

「ノアの魔法だけ特別じゃないのかな?」


 中々に鋭いところをつくな。確かに創造魔法は特別な魔法だ、そんな魔法があるなんて今まで聞いたことがない。いや、もしかして私が知らないだけで普及している魔法なのかもしれない。


 それだとしても、創造魔法は凄い魔法だ。何もないところから物を出してくれるんだから、この世のルールなんていうのは無視だ。魔力を沢山使うから、ちょっと使い勝手は悪いけどね。


「さぁ、休憩はおしまい。魔法が使えるように練習しよう?」


 また三人の追及が始まる前に魔法の練習に逃げちゃえ。

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