84.家畜を飼おう(2)
出来立ての作物を持ってキッチンカウンターにやってきた。キッチンカウンターの上に作物を並べた、まず何やらやろう。よし、とうもろこしから始めよう。
まず、とうもろこしの皮をはぐ。一枚ずつ剥いでいくと、薄い黄色い実が見えてきた。皮を剥ぎ終えると、今度はヒゲの部分を引き抜く。ブチブチとヒゲが引き抜かれて、とうもろこしがつるつるになる。
これを残りのとうもろこしに施していく。茹でて食べると美味しいけれど、これは牛と鶏の餌だ、我慢。無心で皮とヒゲを取っていく。
全ての皮とヒゲを取り終えると、今度はとうもろこしを乾燥させていく。一本のとうもろこしを手に持つと、乾燥魔法をかける。すると、つやつやだったとうもろこしがしなしなになっていった。
そうやって一本ずつ乾燥魔法をかけていく。全てのとうもろこしに乾燥魔法をかけ終わった、しなしなでカラカラになったとうもろこしが出来上がった。
キッチンカウンターの下の棚から木の器を取り出す。その中に乾燥したとうもろこしの実を手で取りながら入れていく。とうもろこしの実はポロポロと簡単に落ち、少しずつ木の器に溜まっていった。
一本のとうもろこしの実を取り終えると、次に取り掛かる。二本目のとうもろこしを手に取ると、実を手でほぐして取っていった。
地道な作業を続けていくと、全てのとうもろこしの実を取ることが出来た。木の器の中には沢山の乾燥したとうもろこしの実が溜まった、これで一つ目が完了した。
次は大豆だ。大豆は茎ごともってきたので、後は房を取って中から大豆を取り出すだけだ。木の器を取り出すと、茎から房を外す。房を開けると、中から現れたのはまんまるの大豆だ。房を木の器の上でひっくり返すと、大豆が木の器に落ちた。
ここからはスピードが重要だ。茎から房を外す、房を開ける、木の器でひっくり返す。この繰り返しの作業になる。集中してどんどん房から大豆を取っていく。
こういうところが豆の面倒くさいところだ。慣れている作業とはいえ、それなりの量を確保しないといけないから作業量が多くなる。あー、人手が欲しい。魔法で私が増えたらいいのに。
そんな風に思いながら、大豆を取り出していった。黙々と作業を続けると、終わりが見えてくる。あともう少し、最後に向かって集中して大豆を取り出していった。
「終わったー!」
全部の大豆を取り出すことが出来た。ふー、地味に疲れるんだよねこの作業。これで材料は全て揃ったことになるね。
今度は餌の配合をする。牛はこのままの大きさでも食べられるかなー、少し砕いてあげたほうがいいかな。舌で巻き取って食べやすいように、ちょっと砕いて上げてみよう。
キッチンカウンターの下から布袋を取り出すと、中にとうもろこしと大豆を三分の二入れる。それから棚からトンカチを持ってくると、布袋の上から作物をトンカチで叩いて砕く。
ドン、ドン、と叩いていくと、とうもろこしや大豆が砕ける音が聞こえてきた。トンカチで満面なく叩き終えると、木の器の中に中身を入れる。すると、砕けたとうもろこしと大豆がザラザラと出てきた。
軽く叩いたから粒は大き目だけど、これくらいなら弱った牛でも食べられそうだ。後は、とうもろこしと大豆の中に麦を入れてかき混ぜれば、牛の餌が完成だ。
次は鶏の餌。鶏の餌も牛の餌同様に砕いてあげるのがいいだろう。布袋の中にとうもろこしと大豆を入れると、トンカチで叩き始める。牛よりも粒が小さい方がいいから、ちょっと強めに砕いていこう。
ドン、ドンとトンカチでとうもろこしと大豆を砕いていく。満面なくトンカチで砕き終わると、布袋の中にあったものを木の器に入れていく。木の器に入ったとうもろこしと大豆は牛の餌よりも細かくなっていた。最後に麦を入れて混ぜると、鶏の餌の完成だ。
牛と鶏の餌が完成したので、木の器を持って外に出ていく。石の囲いの中に入っていた牛と鶏はやっぱり動きが鈍い。あれからほとんど場所を動いていないように見えた。
私は石の囲いの中に入ると、先に鶏に餌をあげる。
「ほら、餌だよ」
木の器を鶏の前に置いてみる、だけど鶏は反応が鈍い。まだ餌だと認識してくれないみたいだ。どうやったら、食べてくれるんだろう? 腕組をして考える。
とにかく、これを餌だと認識してくれないと食べてくれないよね。私は一羽の鶏を掴んで抱えると、餌のそばでしゃがみ込む。片手に餌を乗せると、それを鶏のくちばしの前に持っていく。
「美味しい餌だよ、食べてみて」
餌を目の前でチラつかせるが、中々食べてくれない。根気強く餌をくちばしの前に持っていき、餌を持っている手を揺らした。すると、鶏がくちばしで餌を突いた。
「食べた?」
聞いてみるが、反応はない。もう一度、手を揺らしてみると鶏が突く。それを繰り返していき、ここに餌があると教える。しばらくただ突くだけだった鶏が、くちばしを開けて餌を食べ始めた。
「良かった、食べてくれた!」
餌を突いては、飲み込んでいく。これを餌だと認識してくれた。私は鶏をそっと木の器の餌の前に置く、すると鶏が木の器の中に入った餌を突き始める。
「餌は美味しい?」
まだ元気はないが、こうして餌を食べられる元気が残っていて本当に良かった。残りの二羽も餌を与えないとね。私はもう一羽の鶏を抱えて、手のひらに乗せた餌をチラつかせる。しばらくは無反応だったが、突然に餌を突き出した。
始めは突いているだけだったが、それが餌だと分かったのか口を開いて餌を突き出す。餌を飲み込んだ姿を見てこれは大丈夫だ、と思った私はその鶏を木の器に入っている餌の前にそっちの餌に誘導した。
もう一羽の鶏も同じようなことをして、餌を与えた。今では三羽が仲良く餌を突いているところだ。まだまだ動きは鈍いかもしれないけれど、これから餌をしっかりと食べて元気になってほしい。
「さてと、次は牛かな」
大きな木の器を手に持って牛に近づいた。反応の薄い牛は目だけをこちらに向けて様子を伺っているみたいだ。怖がらせないようにゆっくりと近づいて、そっと体を撫でてやる。
「大丈夫だよ、怖くない」
優しい声をかけて、大きな体を撫でてあげた。牛は嫌がりもせず、かといって喜びもせず、黙って立っているだけだ。反応がないのでこれが正しいのか分からない。けれど、私が敵じゃないって分かってくれたと思う。
私は餌入りの木の器を牛の前に出した。
「餌だよ、食べても大丈夫」
だけど、牛は微動だにしない。やっぱり、これを餌だと認識してないみたいだ。鶏と同じく、餌を口元に寄せたほうがいいのかな? 私は片手に餌を乗せると、口元に持っていった。
「ほら、お食べ」
牛は身動きすらしない。本当に体調が悪いみたいだ、こんな時どうしたらいいのか分からない。状態では空腹と脱水って出ていたから、水と餌をあげればいいと思っていた。でも、中々うまくいかない。
試しに片手に持った餌を口元に当ててみた。すると餌は牛の口の周りにつく。しばらくはそのままだったけど、口の周りについたものが気になったのか長い舌でベロリと舐めまわした。
これで餌だと分かってくれれば。牛は口をモゴモゴと動かして、餌を食べる。その口が動かなくなり、固唾を呑んで見守る。すると、牛の首が動いた。目で私の手を見ているみたいだ。これが餌だと気づいてくれた!
「ほら、これが餌だよ。食べて、食べて」
手を差し出すと、牛の長い舌が餌を巻き取る。それを口の中に入れると、またモゴモゴと動き出した。私は大きな木の器を地面の上に置いて、そちらに牛を誘導する。
「ここに置いてあるからね、しっかりお食べ」
餌を置いて私が離れると、牛はゆっくりとした動きで餌に近づき、餌に舌を入れた。それから、ゆっくりとした動きだが餌を食べていってくれる。
「はー、良かった。みんな餌を食べてくれた」
なんとか第一関門突破だね。あとは、この子たちの十分な餌を用意するだけだ。それに小屋も建てなくっちゃ、また忙しくなるぞー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます