66:ダチョウのまとめ


さて、あの後の話だ。


結局王宮をぶっ壊した責任を果たすために土木作業に参加することになった私は、ヘルメット片手に右へ左へと走り回ることになった。ま、実際はヘルメットなんかなかったし、つるはし片手に『うひ~』って叫ぶこともなかった。そもそもこの両翼じゃ細かい作業は全然できないしね? 溜まりに溜まった瓦礫とかを吹き飛ばしたり、更地にしないといけない場所を平らにしたりと解体作業が主だった感じ。


ま、人力でやったら数か月かかる作業だったらしいし、それを私が一瞬で吹き飛ばしたわけだったから結構感謝してもらえたんだけどね? 詳しくは聞いてないんだけど、軍師によると『どんなトラップが仕掛けられているか解りませんし、一から作り直した方がいいでしょう。王宮以外にも壊れた建物はいくつか崩す予定ですので纏めてやっちゃってください。』ってことみたい。


私としては簡単な作業でとても安心。ナガン側としても面倒な作業が素早く終わってとってもラクチンって感じで収まったわけだね! ……お前がもっとしっかりしてたら王宮とか崩壊しなかっただろ、ってツッコミはナシよ?



(そんな感じで解体作業やら瓦礫の除去を丸一日手伝った、ってわけ。)



その間ウチの子たちはずっと暇してたらしいんだけど、アメリアさんが魔法でオモチャ作って面倒見ていてくれたみたいで、みんないい子で待っていてくれたみたい。よくショッピングモールとかでボールプールがある託児所みたいな所あるでしょう? あんな感じの木材遊具を多量に彼女が作っててちょっとびっくりしちゃった。


私が魔力操作を覚えたおかげで師匠に負担なく魔力を手渡せるようになったから出来たことなんだけど……、そこまで無理してもらわなくて良かったんだけどねぇ。やってもらったのはありがたいし、ウチの子たちのためにやってくれたのは解るけど、疲れてる時に面倒見てもらうのは罪悪感ががが……。



(埋め合わせしないといけないんだけど、私に差し出せるものがあんまりないんだよなぁ。あんな遊具片手間に作り出せちゃう人に何あげればいいんだよ、って話。)



大きな滑り台とか、押したら反対側の杭が飛び出るオモチャとか、シーソーとかそういうのがたくさん。まぁウチの子たちは"天才"だから、本来の遊び方を無視して好き勝手やってたみたいだけど……。まぁちゃんとお留守番出来てたらヨシ! けど滑り台を逆走して遊ぶのはちょっと違うんじゃないかなぁ、ってママ思うよ。

 


(なんか遊具の端っこ齧られた跡あったしなぁ。多分噛み砕く直前にマズくて吐き出したんだろうけど……)



そんな感じでお利口さんでお留守番してた我が子たちと合流した時には日暮れ時。時間も時間だったわけで、晩御飯を頂いてそのままナガン王都のお外で夜を明かした感じ。ちなみに晩御飯の方は、お昼の料理人さんたちとは別の方に用意してもらった。何かとお世話になってるマティルデ率いるプラーク防衛隊(実質調理部隊)にお願いしたよ。


本当はお昼にお世話になった料理人さんたちが継続してやってくれるはずだったらしいんだけど。たった一日と言うか、たった一回の食事の用意で干からびたミイラみたいになってて……、あえなくリタイア。代わりに防衛隊の皆さんが普段通りにしてくれた、って感じ。いや、ほんと。食べ過ぎちゃって申し訳ない……。



ば、晩はちゃんと一般的なダチョウレベルで抑えたからね!?(ダチョウがそもそも規格外)



ま、そんな感じでお腹いっぱいになっておねんねした後、朝起きたらちょうどお日様が昇った時間。元々転移魔法陣でやってきた私たちはナガン王都の奪還作戦に参加するためにやって来ていたわけだ。つまり奪還がなされた今、これ以上他国に戦力を置いておくのはあまりよろしくない。軍隊が必要以上他国に居座ってたら『も、もしかしてこのまま攻め込んじゃうの!?』ってなっちゃうからね。



(まぁ『心配的中だな(宣戦布告)!』でもよかったけど。)



というわけで軽く朝ごはんを食べた後、ゆっくりとみんなでヒード王国の……、あぁそうそうガルタイバね。首都の名前。そっちに帰ったわけ。


魔法陣はナガンに来るときに使った奴を流用した。行きは私が魔法陣に流すと爆発したり暴発したりするからアメリアさんにお願いした訳だけど、死霊術師との戦いを経た私はすでに魔力操作を手に入れている。師匠からすれば『まだまだ拙い』みたいなんだけど、魔法陣に魔力を込めるぐらいなら十分にできる、ってコトだったので帰りは自分でやった。


何かのお話ならここで私がミスってよくわからないところに飛ばされるとかがベタだと思うけど……、さすがに子供も関わってくるとなると私も全力でやる。おかげさまで何もなくヒード王国の王都へと帰還し、涙目のルチヤ。ヒード国王に迎えられたわけだ。



「お゙がえ゙り゙な゙ざい゙!!!」



顔をぐちゃぐちゃにしながら私の胸に飛び込んでくれたルチヤ。王としてゆっくりと成長を重ねている彼女だけれど、やっぱりまだ幼い女の子。少女と言うには早すぎる幼女って奴だ。まだまだ保護者、親という物が必要な時期。私は彼女の生みの親ではないけれど、その代わりになった私が戦場に赴くなんて何度やっても慣れるものではないだろう。


そんな感じでルチヤを構って、隣でまたぷんすこしてるデレを落ち着かせて、そのほかの子たちの面倒も色々見て……。昔とは色々違うけど、ようやく腰を落ち着けて色々出来るようになった。


ルチヤや軍師から聞いたけど、現状ヒード王国やナガン王国、そして獣王国にちょっかいを掛けようとしている周辺国はいないみたい。水面下で色々動いてはいるみたいだけど、しばらく戦争とかが起きる気配はないようだ。ま、私たちの雇い主兼保護すべき子供の国である"ヒード王国"、そしてその国とお友達の"ナガン王国"に、王様殺されたけど強いモノには従ってくれてる"チャーダ獣王国"この三国で連合が出来ているようなものだ。


そうそう『ぶち殺せー!』って攻めて来ることはないだろう、国力の差があるからね。



(つまり、ま。久しぶりにゆっくりできる、ってことだ。)



高原から新しい環境である人間の生息圏へと足を踏み入れてからまぁ色々あったけど……、決して悪いことばかりではなかった。子供たちにもいい経験を積ませることが出来ただろうし、高原にいた頃じゃ考えられなかった交友関係も結ぶことが出来た。万々歳の結果だよね。高原から抜け出してよかった~!



(魔法関係で色々やりたいこともあるし、ちょっと賢くなったウチの子たちに本格的に"教育"ってのをしてあげるのもよさそ。)



いつ忙しくなるか解らないし、ゆっくり骨休めしながら色々やってみますか。










 ◇◆◇◆◇









「……なんど見ても、何もないな。」


「申し訳ありません陛下。」




レイスによって更地にされた王宮があった場所を歩くナガン国王と軍師。レイスは何故か勝手に『俺たちの戦いはこれからだ!』みたいな雰囲気を醸し出しているが、これから暇になるのはダチョウだけである。ルチヤこと幼女王のところの文官は未だ解決していない獣王国での統治体制の構築をせねばならないし、軍官たちも治安維持や更に広がった国境線の防衛のためてんてこ舞いだ。


物悲しい雰囲気を醸し出しながら歩くナガン国王率いるこの国も同様であり、文官たちはこの崩壊した王都をどうするか考えなければならないし、軍師が確保してきた獣王国での利権をどう回していくのかも考える必要がある。軍官たちは軍師のシナリオ通りだったとして王都を奪われてしまったことは確か。より鍛錬に励まなければならない。



まぁつまり、『魔法の練習楽しみだなぁ、どんなのがあるのかなぁ』みたいなことを考えながら我が子の頭を撫でてゆっくりのほほんとできるのはレイスちゃんだけなのである。



まぁ彼女たちは代えの利かない優秀な戦力ではあるが、平時においてできることはかなり少ない。この大陸に突如として出来た巨大な共同体、三つの国家によって作られたソレに対処をするため、周辺国が動き出している。


レイスたちの役目である戦いがやってくるまでは、それ以外の人間が動かねばならない、ということだ。



「まぁ壊れれば作り直せばいい、人命に勝るものなし。とよく言うが……、こうも何もないと悲しくなってくるな。今後の国営に必要な物は全て運び出しておったからそのあたりの心配はしなくていいのだが……。」


「我ら秘蔵のコレクション、酒類なども全て失われてしまいましたからな。それを考えると少しこう、こころの内がもやもやと。」



ナガン王の心に寄り添いながら自身の胸の内を吐露する軍師。まぁ二人はこう言っているが、王宮が無事であったとしても酒類含めた食料品は全てあの極悪非道な死霊術師ちゃんが持ち帰ってしまっている。何かの手違いで王宮内に取り残されてしまった人間がいた時のために用意していた物だったが、攻め込んだ人間に取られてしまったと言うわけだ。


そう考えれば、死霊術師に持っていかれてしまい行き場のない怒りで心を燃やすよりも、もほや天災と同格に成り始めたレイスによってきれいさっぱり消し飛ばされた現在。『もうどうしようもない。』と考えられる今の方が良かったのかもしれない。レイス本人も王宮を吹き飛ばしてしまったことは不本意だったようであるし、軍師も『戦闘時に邪魔になるのならば壊してもいい』と伝えてしまっていた。



「……うむ、切り替えていくとするか。さて軍師、報告を聞こうか。」


「は。かの死霊術師の件ですが、やはり想定通り"聖水"に手を出していたようです。未だ精査が必要ではありますが、彼女の拠点としていた場所の特定が可能です。」


「魔法関連のことはよくわからぬが……、確か"発信"だったか? 魔法による通信技術の応用、であったな。」



顎髭を摩りながら軍師の報告を聞く彼。このナガン王国は北の超大国である"帝国"を含め、周辺国のなかで突出した複数の魔法技術を保有している。その中の一つが"通信技術"であり、国家間を超えた通信をリアルタイムで行うことが可能となっている。その技術を一部使用したのが"発信"の魔法だ。


軍師は未だ死霊術師が生き残っている可能性を考えている。戦闘時、王宮から発せられていた二人の空間をゆがめるような魔力の放出は彼も知るところ。あのような戦いを経て生き残るとは考えにくいが、特記戦力という存在は総じて常識を飛び越えていくもの。ナガン王宮を確保した後の死霊術師の動きが少々"大人しすぎた"ことから彼は生き残っていてもおかしくないと感じていた。


そもそも軍師は『こんなこともあろうかと』の精神で王宮内にあったすべての物品に"発信"の魔法を付与するように通達していた。そのおかげもあってか、死霊術師が物品を運び込んだ各地の拠点の場所を大まかに割り出すことに成功している。例え彼女が死んでいたとしても、彼女の魔法技術などをサルベージできる可能性があるため、調査する予定だ。



「この件ですが、割り振る人員を最小限にする予定です。拠点自体にも隠蔽の魔法が掛かっているでしょうし、侵入出来たとしても強力なアンデッドが待ち構えている可能性もあります。生きていたとしてもこれまでの行動パターンを見るにすぐに攻勢にでるようなタイプではありません、緊急性は薄いかと。」


「うむ、そのように進めよ。……しかし、よくバレずに出来たものだな。」


「こういうのはバレないことが大前提ですので。」



少し茶目っ気をだしながら、王と臣下ではなく年来の友として答える軍師。そんな様子に釣られてか、ナガン王の口角も少し上がる。人払いを行っているわけではないが、この場にいる人間は二人の関係性をある程度理解している者ばかり。他国の人間の目もない故に、余計なことを考える必要はなかった。



「して、我が軍師よ。今後我らはどう動くべきだろうな。」


「……そうですね。まずこれまで用意していた計画を大幅に変更すべきでしょう。もはや我らが生き残る道は一つしかありません。しかしながら決して悪い道ではないでしょう。」


「ヒード王国との同盟、より深めていくべきか。」


「えぇ、あちらも同じ考えを抱いているでしょう。そうすべきかと。」



元々軍師が用意していた策、ダチョウが来る前に思案していた策では最終的にこのナガン王国が大陸の覇者になるようなものであった。しかしながらダチョウ、そしてレイスという存在が出て来てしまった以上。彼女をこちらに引き込まない限りそんなこと不可能である。そして彼女はヒード王国の幼女王であるルチヤを自身の子として受け入れてしまった。いくらその経緯を聞いても軍師の頭の中は"?"で埋まっていたが、こうなった以上どうすることも出来ない。


故に、現在ヒード王国と結ばれている同盟関係をより強化していくことが重要だと彼は考えていた。



「我が国の周辺国であるトラム共和国、リマ連合は勿論。『大陸最強』を有するタンタ公国の方も少々動きが見えるようです。というかこの大陸の国家全部が私たちのことを注意深く見ている感じですね。」


「……やはり裏切ると思われているのか?」


「ですね、私の"悪名"はすごいですから。これまで一度もそういった契約を反故にしたことはないのですが……、やっぱり陥れて気が付いたら背後からグサ。という風に見られてるみたいです、私。」



楽しそうに笑いながら『ま、そんなことしたら文字通り消し飛ばされるんですけど』と続ける軍師。自身の頭脳だけで特記戦力と数えられるような存在、それ相応に周囲から警戒されているということだ。まぁいくら頭が良くても、圧倒的な暴力には勝てるわけがない。現在高原で死亡カウンターを積み上げている死霊術師ちゃんもそれを証明している。



「あぁ、それと。帝国が動きました。」


「そろそろかと思っていたが……、誰だ? 皇帝か?」


「いえ、かの女公爵。ヘンリエッタ殿です。」


「……ぬぅ。なおさら派手に動くことはできんな。」



北の超大国、"帝国"。彼らが暮らすこの南の大陸は戦国時代といった様相ではあるが、北の大陸は完全に帝国一強状態である。精強という言葉では足りないほどの強固な軍団を持ち、特記戦力の保有数も両大陸合わせてトップ。四方面の戦線を持ちながらもすべてに勝利してしまうという化け物国家である。そんな国にいる"特記戦力"が、弱いわけがない。


女公爵ヘンリエッタ。ヘンリエッタ・マニスカラ・クストス・アプーリアは孫を持つほどに高齢な女性ではあるが、全盛期は特記戦力の"上位"として帝国の敵を絶望に叩き落していた存在。老化によってその実力は落ちたと推察されるがそれでも"中の上"は堅いと言われている。その単純な戦力としてでも脅威であるが、彼女が一番恐ろしいところは「フットワークが軽い」ことである。



「今はどうか解らぬが、かの公爵の逸話を信じれば帝国から一週間も経たずにこの国にやって来てもおかしくない。確かまだ爵位の継承は行っていないが、実質的な領地運営は息子に任せていたのだろう?」


「はい、ですので完全なフリー。何か気になることがあれば飛んできてもおかしくありません。……それに、かのレイス殿の傍にいたエルフ。あれはおそらく公爵の師でしょう。過去に集めた情報の中に『公爵の幼少期にアメリアと言うエルフが魔法指南を行った』という物がありました。」



それを考えれば、下手な動きは出来ない。女公爵がこちらに興味を示しているのならば、帝国という超大国がこちらに手を伸ばしてくるのも時間の問題だろう。ただでさえヒード王国は帝国と魔物素材の取引を行っていたのだ。"その時"がいつやって来てもおかしくない。ナガン一国だけでは帝国に勝てるわけもなく、そこにダチョウたちを追加したとしても質と量に押しつぶされて負けてしまうだろう。


周辺国の動向を注意しながら、同時に帝国にとって『残す価値のある』存在にならなければならない。



「そのためにもまずは、ヒード王国と関係を深める必要がある。と言うわけですね。同盟よりもより深い、新たな国家体制として内外に示す必要があります。獣王国もヒード王国での統治が浸透するまでは併合ではなく属国体制で進めるでしょうし……、三国で"連合国"の結成が落としどころですかね。」


「なるほどな。……理解した、そのように進めてくれ。」


「御意。」


「よし、では今後の方針も決まったことだし……、財務の奴に絞られにいくとするか。王宮の再建、どれだけ金かかるんだろ。めちゃこわい。」


「ご安心を陛下。聖水や対死霊術師用に用意したトラップの建設費用で、彼の堪忍袋はすでに爆発四散しております。」


「全然安心できないが???」






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