隣の席の広島弁美少女が俺のことを好きっぽい件。

霜月 猫

第一章 松永柚との出会い編

第1話 転校生

『約束やで。うちらは、ずっとずっと一緒におるんじゃ』


 

 誰、だ………?

 待って。待ってくれ―――今行ったら、もう二度と会えない気が――



「飛鷹ぁ! お前いつまで寝てるんだ!」


「はい………?」


「もうHRは始まってるぞ! 起きろ!」


「はいは〜い……」


「ったく……もういい」


 

 俺の名前はだかゆう。東京生まれ東京育ち。

 いつも眠いただの高校二年生だ。陽キャか陰キャでいうと100陰キャ。

 この筋肉マッチョ担任の高橋の怒号も、クラスメイトからの嘲笑もいつものことなので慣れてしまった。

 

 すると、高橋が「さて、突然だが」と口を開いた。

 


「今日は転校生が来る」



 オオオオオッと歓声が上がる。

 男子か女子かでみんな盛り上がっているようだ。

 でも、俺には関係ない。寝るのを邪魔するようなやつじゃなかったらな。


 ……決してフラグを立てたわけではない。



「じゃあ、入って来ていいぞー」



 みんなが固唾を飲む音がゴクリと聞こえてきそうな緊張感の中、教室のドアが開かれる。


 入ってきたのは――すごくかわいい女子だった。


 長いまつげに、大きな目。肩まである茶髪。雪のように白い肌。少しあどけなさと幼さを残した顔。

 ルックスは………何がとは言わないが、もうちょっと大きかったらな……。何がとは言わないが。

 しかし顔は完璧なので、男子は一斉に歓喜の声を上げ、女子は微妙な反応。



「静かに! 自己紹介をしてもらう」



 すると、その転校生は周りに花が咲くような完璧な笑顔で元気に自己紹介した。



「はい! 私の名前は松永柚まつながゆず言うますけぇ! 好きなもんはハンバーグ! 趣味は人間観察! 特技はすぐ仲良うなれるとこじゃ! よろしゅうな!」



 まさかの広島弁。

 男子たちはさらに喜ぶ。方言女子はかわいく見えるらしいからな。

 俺には関係ないけど。寝るか。



「じゃあ席は――飛鷹の隣で」


「……………………………………………………は?」



 ちょっっっと待て。なんでよりにもよって俺の隣なんだ。いかにも活発そうだし、いるだけで睡眠の邪魔をされそうなんだが。



「ガハハハ! お前はいつも寝てるからな。松永に起こしてもらえ」



 クソ教師!

 


「チッ、陰キャのくせにあんなかわいい転校生の隣とか似合わねえにも程があるだろ」


「そこどけ俺に代われ」



 俺だって代わりたいわ!

 勝手なこといってんじゃねえぞ! 


 ていうか――隣、いいのかよ。転校生が座って。


 俺は右の席をチラリと見て、複雑な思いで目を逸らした。


 すると、転校生が呟いた。小さな声だったが、ハッキリ聞こえた。



「飛鷹……? 飛鷹、裕也……?」



 ……………今、なんて言った?なんで俺の名前を知ってるんだ?

 しかも、次の瞬間こんなことまで口にした。



「ゆうちゃん……?」


 

 は?

 おい、あだ名だと?

 俺は流石に痺れを切らし、静かに怒りを表す。



「待て転校生。なんで俺の名前を知ってる? 俺はお前と全く面識が無」



 いんだが、と言おうとした瞬間、転校生――松永は、こちらにすごい勢いで走ってきて――



「ゆうちゃんっ!!!」



 俺を抱きしめた。

 まな板のような胸が俺の顔に当たる。


 ……………………………おい………………。


 お前、殺意ってもんを知ってるか……?


 このとき俺は悟った。


 俺の平穏な(睡眠が全ての)学校生活終わった。


△▼△▼


 第一話を読んで頂きありがとうございます。毎日投稿をしていくつもりです。

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 今日の18時13分、第二話投稿です。


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