第2話 優しい主
「う、うるせぇ!! 俺は魔王軍なんだ!! 舐めるな!!」
そう言って彼が剣を引き抜こうとした瞬間、既に腕を動かしていた。
「残念だよ、それを抜いちまったから腕がなくなった」
彼の腕が吹き飛びその場に転がる。
男は何が起こっているのかわからないようだ。
「この程度も見れないとは、魔王軍が聞いてあきれる」
正直、この程度ではディニス隊の中でも下の下だろう。
力としても人としてもこいつは魔王軍に居るべきではない。
そう言うと、私はそのままもう片方の腕を握り骨を砕く。
男は悲鳴をあげる。
当然だ、片方は切断されもう片方は砕かれているのだから。
「なぁ、お前生きたい?」
私は悲鳴をあげている男に向かって問いかけると、先程まで怒りで真っ赤だった男の顔が絶望の蒼に染まってコクコクと頷いていた。
「お前の部隊長に合わせろ」
「そ、それは!!」
出来ないでしょうね、ディニス隊のディニスに知られればただでは済まない。
男の顔が吐きそうなほどに蒼くなっている。
「出来ないなら解決策があるよ」
「そ、それは……」
「今までの無礼を彼女に詫び、この店の弁償を生涯かけて行うって事……もちろん、慰謝料も含めてね」
その総額はまだわからないが、男に選択肢はないのでコクリと頷いた。
私は誓約書を結び、血印を押させた。
「よし、これでおっけ~かな……あ、滞る時は連絡入れる事、わかった?」
「はい!!」
「後は、わかってるよね?」
私は彼に問いかけると、兵士二人はミリアに頭を下げた。
「「今まですまなかった!!」」
「え、あ……」
ミリアはどうしたらいいのかわからず、戸惑っている。
こういうの、慣れてないんだろうな。
「ミリア、これで許してあげてくれないかな?」
「そ、そんな……弁償等してくだされば私はそれで……もう、こんなことはやめてくださいね?」
ミリアが上目遣いでそう言うと、二人は彼女の可愛さに頬を紅く染める。
彼らからすれば彼女が天使に見えた事だろう。
少なくとも、私にはそう見える。
「それじゃ、何飲みますか?」
「……え?」
「せっかく仲直り出来たんですし、飲んでいってください……」
ミリアはそう言うと、笑顔を浮かべる。
この状況でそれを言えるミリアは凄いと思う。
私だったら出禁にするところだ。
「可憐だ」「可愛い」
男達は惚けた方にそう言った。
完全にミリアの可愛さに堕ちたな。
「じゃあ、さっきのやつ三本ください!!」
「あの、それだと家に帰れませんよ? 程々にしておいた方が……」
「じゃあ、一本ください!!」
「は~い、トイック酒一本入りました~」
ガラガラだった席にミリアの声が響き渡った。
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