薄本さんは業が深い
みけめがね
第1話 私の知ってる恋愛小説じゃない!
春、私立友峰高校の放課後、私は西日の差し込む廊下を歩く。
校舎の片隅の教室がつい最近私が入った文芸部の部室。
(今日は他の部員がいたらいいな…)
そう心で思いつつ部室の前まで来た、ドアを開ける。
パイプ椅子と長机、それと歴代の文芸部の先輩たちが置いていった文庫本が並んだ本棚だけのこじんまりとした部室。
(やっぱりこの人だけか……)
シースルーの前髪、腰まで伸びた黒髪の女子生徒が一人スマホをいじっていた。
昨日は自己紹介しかできなかったが勇気を出して声をかけてみる。
「あの……今は何をしてるんですか?」
「ん?執筆だよ」
「し、執筆ですか…?」
「そう、執筆」
「は、はぁ…」
「そういえば君は…あれ、なんて名前だったっけ…」
「
「あ…純夏ちゃんか、昨日も来てたのになんかごめんね」
最初から下の名前呼びか…まぁ私も厚井って苗字あんまり好きじゃないけど。
「私は
私の方を3秒くらい見てから薄本さんはまたスマホに目線を移した。
「そうなんですね…!薄本さんの小説はどんな感じの小説ですか?」
「ん?私の小説、見る?」
真顔だった薄本さんの顔が一瞬ものすごい笑顔になった気がしたが気のせいだろう。そう思いながらカケヨメのウェブサイトを開く。
「あ…あの薄本さんはなんてペンネーム使ってるんですか?」
「ウスイホンって作者名で検索すると一番上に出てくるはずだよ」
私が入力するとすぐ上の方に出てきた『ウスイホン』の文字。
自己紹介は『ただの学生です』これだけなのかな?
名前の部分をタップすると作品のページに移動した。
代表作は恋愛もの、タイトルは「女神を捕まえて」
なんかどことなくファンタジーっぽいタイトルだ。早速1話目から読んでみる。
◇ ◇ ◇ ——————十五分後
薄本さんの作品を3話ほど読んだ私は肺いっぱいに空気を吸い込み大声で叫んだ。
「私の知ってる恋愛じゃない!!!!!」
「おぉ…いきなりどうした?」
「まず、男性が一人も出てこないです!」
「うん、だって百合に男は挟まれないもん」
薄本さんは平然と言葉を返す。挟まるって何よ!男は不純物なの!?
「…じゃあどうやって関係が進むんですか!?」
「え?まぁ…作品それぞれだけど男女の恋愛と同じだよ?多分」
多分って…この人まさかこういう感じの作品しか読んだことないの…!?
「でも……私認めません!男女の恋愛こそが至高なのです!」
私がそう言うと薄本さんの口角が怪しげにクイっと上がった。
「そうね…じゃあ私、これから一年以内にあなたを立派な姫女子にしてみせる」
「立派な姫女子……?」
「じゃあその前に私が姫女子になった
—————————————次回「私が姫女子になった
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