一章
第1話 報道
「ごめん紗那。ニュース見た?」
土曜日の夕方、ホットレモネードを飲みながら今日の晩御飯何にしようかな、なんて呑気なことを考えていると亮から連絡が入った。
ニュース?何のこと?と思いその通りに返信するとすぐに既読がつき、とあるニュースサイトのリンクが送られてくる。
それが一体どんなニュースなのか開かなくてもわかった。
表題に示された「JEWEL 白石亮 熱愛」。
全身の血の気が引いていくのがわかった。
震える手でリンクを押すとそこには家に帰る亮、そして私の姿。
これは大変なことになった。亮に急いで返信するも今度は既読がつかない。
焦って亮への通話ボタンを押そうとしてふと止まってしまった。
もしかしたら今頃亮はこの対応に追われているかもしれない、でも私も状況が知りたい。
そんな葛藤をしていると私の幼なじみでありJEWELのメンバーである相田陸から着信があった。
急いで応答ボタンを押すといつもと変わらない陸くんの声がした。
「もしもし?」
「も、もしもし、ねぇ、亮は?」
「そんな焦らないで、ね?亮は今いろいろ、ね?事務所の人と話してるからもうちょい待ってやって?」
「わかった…ねぇ、これ、大丈夫なわけないよね」
私が1番気がかりなこと。それは今後のJEWELの活動に影響が出てしまうのではないか。
「うーん、現段階ではまだ何とも言えないかな。だけど、とりあえず報道されちゃった以上さ、まずは亮と紗那の安全を確保してから今後のことは考えようよ」
焦る私とは裏腹に落ち着いて話す陸くん。
幼い頃からお兄ちゃんのような陸くんは亮と付き合ってからもこうしてそっと私たちを見守ってくれていた。
「うん、わかった。また状況わかったら連絡してくれる?」
「もちろん。あとで亮にも連絡するよう言っておくから」
「ありがとう。私がしなきゃなことあったらすぐ言ってね?」
「わかったよ。とりあえず今日は家から出ないでおいて?」
「うん、亮は帰って来れるの…?」
「うーん、どうだろう。その辺もまた追って連絡するね?」
メンバーの陸くんでさえ曖昧ということはまだ対応が確定したわけではないのだろう。
私にできることとしてはこれ以上余計な波が立たないようにすることだけ。
「わかった、ありがとう」
簡単に挨拶をして通話を終える。
一度冷静になってまたニュースサイトを開く。
そこに写っているのは紛れもなく亮と私。
私の顔こそ写っていないけれど、私のことをよく知っている人が見たら私だと気づいてしまうかもしれない。
とりあえず私は落ち着こう。そして亮、陸くんの連絡を待とう。
気持ちを切り替えるために冷めきってしまったレモネードを一気に飲み干した。
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