第67話 陰謀詭計のジングシュピール ⑴
冷たい地下牢で、ぼくは困惑していた。隣に立つフレートですら、言葉を失くしてぼくへちらりと視線を送った。
「ハハッ! ハハハッ! これほどに美しい造作を見たことがないぞ。貴様、フリュクレフの民だな。男か。惜しいな。女であれば今すぐに犯してやったものを」
鉄格子を掴み、見せつけるために膨らんだ股間を押し付け、唾を飛ばす老人から遠ざけるようにフレートがぼくの前へ出た。ぼくは生まれて初めて、本気で人間を軽蔑した。侮蔑を隠すことすらできず、にやつく老人を覚えず見下ろす。
「枯れ木のようだ」と思った。
イェレミーアスたちがいなくなった混乱に乗じて、まともに食事も与えられていなかった様子だから当然と言えば当然だ。
老いのせいだけではなく
当然といえば当然だ。孫なのだから、似ている可能性はあった。しかし、これは。
言い表せぬ不快感。飲み込んでも飲み込んでも、拒絶が胃を競り上がる。
「これ以上、その顔で汚い言葉をまき散らすのはやめていただけませんか」
「なんじゃ、それなりの育ちのようじゃな……。惜しい。まことに惜しいぞ。女だったなら甚振って悲鳴も泣き声も涙もじっくり味わってやったものを」
じゅる、と耳を覆いたくなる水音を立てて舌なめずりした老人から、顔を逸らす。
わざとだ。
ああ。こいつは暴力を振るうことに快感を感じる、正真正銘のクズだ。「皇国の敵」と戦うことも、暴行することも、今ここでぼくをわざと嚇すことも、こいつにとっては等しく加害で暴力なのだろう。イェレミーアスが祖父に似ていると言われることを、侮辱と感じるわけだ。
口元を押さえて吐き気を堪えた。脳が揺さぶられているかのような、酷い目眩が止まらない。親子でも、これほど似ることは難しいだろう。穏やかで優しいイェレミーアスに似た顔で、品のない笑みを浮かべる老人を見下ろす。
ギーナが置いて行ったのだろうか。牢の脇に落ちていた、汚れた木製のフォークを拾う。
「ヒヒッ、それで何をする? ほれ、刺してみよ。フハハッ、ハハハッ」
ぼくを侮ってわざわざ牢の格子から伸ばした腕へ、遠慮なくフォークを突き立てた。
「ヒヒッ! 痛くもかゆくもないぞ、小僧! ヒハッ……ッ、グッ……ッ! カハッ、……ッ! ……ッ!」
やっぱり。たかが木製のフォークでも、ぼくが「武器」と認定したら麻痺の効果を付与できるんだな。
仰け反り強張り、石畳へ倒れたライムントへ背を向ける。これ以上、ここで時間を過ごしたくなかった。
「あなたの品性が下劣で良かった。そのおかげで『顔が似ているだけ』だとすぐに理解できた。……あの人はそんな表情はしない」
それでも、気分は最低だ。横穴から出る。井戸を上り、ルチ様が作ってくれたタウンハウスへの近道へ向かい森へ入る。
「死なない程度に管理してください。あれについては、病になっても治療は不要。病気で死ぬならそれがあの人の運命です」
冷たく言い放ちながら頭の隅で考える。むしろ、生きていた方が回りにとっては迷惑だろう。少なくとも、イェレミーアスにとっては害にしかならない。そこまで浮かんで、首を横へ振る。
「いいや。言い訳だな。ぼくが生かしておきたくないだけか」
直接手を下す覚悟はないけれど、生きていて欲しくはない。ただの卑怯者だ。
ゼクレス子爵邸の地下牢には横穴が四つあって、四つの房には牢が五つという作りになっている。ギーナたちが捕まえていた囚人は四人。それから新しく連れて来たレームケ。レームケは三番目の牢に入ってもらっている。
大事な証人は、死なないように加護が与えてあるから、死ねないし正気を失うこともできない。大事だけど自業自得だから、仕方ないよねっ。
「四番目の牢に三人、でしたね。その三人を二番目と三番目に移して、ライムントは四番目の房へ移してください」
「かしこまりました」
「くれぐれも、他の者に彼の存在を知られぬように。特にラウシェンバッハ親子には絶対に知られないようにしてください。四番目の房にはフレートとハンス以外、立ち入り禁止です」
「承知いたしました」
「それと」
「?」
珍しく疑問を顔へ浮かべてぼくへ視線を送ったフレートへ肩越しに振り返る。
「死んだらそのまま、牢に放置しておいて。死体は腐らないように……できる? そう。……死体は朽ちないよう、精霊へお願いしたので」
「……かしこまりました」
有能な執事は、疑問を飲み込み頭を下げた。再び顔を上げた時には、普段通りに押さえた表情の仮面をしっかりと纏っている。
劇団と演劇場に関連して、マウロさんと相談したいことがある、と表向きは仕事を口実にぼくだけ皇宮からタウンハウスへ戻って来ている。実際、ぼくの決済を待つ書類がタウンハウスの自室に山積みになっていたので、涙目になった。
「じゃあ、劇場自体は少し内装を手直しするだけで済みそうですね。劇団員は完全に国外の人間で構成してください。平民向けの劇団は旅芸人の一座と冬の間だけ契約、紙芝居はなるべくお年を召した方の雇用をお願いします。それから、イェレ兄さまに紹介していただいた牧場との契約書はこれで。お相手に失礼のないようにしてください。レストランはダニーにメニューとレシピを最終確認してもらって、内装と食器はパトリッツィ商会で最高級のものを準備してください」
「……かしこまりました」
「あと、ヴェルンヘル様以外の各公爵家で小遣い稼ぎにミレッカーの情報を売ってくれる人間を一人ずつ、探してください」
「……シュレーデルハイゲン家、もですか」
「ええ。例外なく、ミレッカーについて調べて欲しい、という話に乗るような金に困っている輩で構いません。愚かで欲深そうならなおいいでしょう」
「……それは危険では?」
「ぼくがわざわざ他家の、しかも公爵家の人間を使っていると知られても構わないのです。むしろミレッカーにも、各公爵家の人間にも知られた方がいい。お願いします」
「かしこまりました」
メモを
机に広げた本邸の見取り図を眺める。ぼくの部屋は二階の西奥にするつもりだ。
本来なら、楽しい気持ちでこの見取り図をみんなで眺めていただろう。机の上へ広げた一通の手紙へ視線を送りふう、とため息を吐く。ノックの音に応えると、ハンスが顔を覗かせる。
「お呼びですか、スヴァンテ様」
「うん。ハンスにちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「はい。なんなりと」
「デュードアンデになるって、本当はあまりいいことではないのでしょう? ぼくに言いづらいことが、ありますよね?」
「……、さて、どなたがそのようなことをスヴァンテ様のお耳に入れたのでしょうか」
お、大分フレートに似て来たな。一瞬目を大きく開いたが、感情を隠して頭を垂れたハンスのつむじを目路へ入れる。
「言いづらいことが起こるのは、デュードアンデになる前ですか、後ですか?」
ぼくがにこにこと笑いながら問いかけを続けると、ハンスは頭を下げたまま小さく息を吐いた。それから目を閉じたまま顔を上げ、いつもより張りのない声で続ける。
「……精霊に選ばれた王族の全てが、精霊になるわけではございません。デュードアンデとは『精霊に選ばれた状態の王族』を指します。そこからさらに、デュードアンデが神……精霊になるには、『魂の悲鳴』が必要だと、聞き及んでおりますが……わたくしには、それ以上詳しいことは分かりかねます……」
なにそのおどろおどろしい名称。魂の悲鳴って。絶対ろくなことじゃないよね。
「……誰なら、詳しいことを知ってるかな……?」
「王族のみ、かと……」
「ええ……? ううん……」
そうなると、シーヴかフリュクレフ公爵に聞くしかないじゃない。会いたくないんだよね。ぼくが小金を稼いでいると知ったら、フリュクレフ公爵はどうにかして巻き上げようと画策するに違いない。ルクレーシャスさんに相談してみるか。
部屋の中へ視線を巡らせる。執務机の左側の壁には、本棚が入口まで続いている。反対側の壁には、ぼくお手製のカレンダーが貼られている。
この国の暦って表示の仕方が独特でカレンダーもあるにはあるけど、紙ではなくて時計のようなものが主流だ。いちいちネジを巻かなくてはならないし、ごてごて装飾が施されている割には見にくい。実用的ではないのだ。
「売りましょう、スヴァンテ様。このカレンダーを、ぜひ」
前世風に書き出した、メモをできる余白付きのカレンダーを自作したらフレートが大絶賛だった。パトリッツィ商会で発売したところ、なんと貴族の執事たちの間で売れた。その後、彼らの主たちの間でも話題になったらしく、地味に売り上げを伸ばしている。
ちなみにフレートの誕生祝いにシステム手帳を作ってプレゼントしたら、「商品化……いやしかしスヴァンテ様と私だけの秘密……くっ……!」となんか葛藤してた。
「フレートにもさっき伝えたんですけど、ぼく冬木立の月の終わりごろには、また皇宮に籠る予定なんです。戻るのは風花の月になると思います。今月末には一旦戻るので、その時一気に本邸へお引越ししましょう」
「かしこまりました」
話題が変わってあからさまにほっとした表情になったハンスに、笑いを堪える。まだまだフレートの域には遠いようだ。
せっかく離宮を出たというのに、タウンハウスで過ごす時間が少なすぎる。
今は日本でいう十月、初霜月だ。冬木立の月は日本でいうところの十一月。雪も降り始める。風花の月は日本での正月に当たる二月。そして三月の花冷月になればぼくは、七歳になる。
誕生日といえば、イェレミーアスの誕生日も三月だ。カレンダーの十三日に付けられた、印を目路に入れる。ぼくとイェレミーアスの誕生日のお茶会は、併せて十三日に行う予定だ。
「ぼくが八日でイェレ兄さまが十三日ですか。誕生月まで一緒だなんて、イェレ兄さまとぼくが気が合うのは偶然ではないのかもしれませんね」
「そうだね。ヴァンと誕生月が同じで私も嬉しいよ。私たちの出会いが運命だと思えてしまう」
久しぶりに真っ向から美少年を浴びせ倒されたぼくは、「はわぁ」とアホみたいな声を漏らすことしかできなかった。美少年怖い。
「一年って長いなぁ……」
それでもイェレミーアスと出会って、まだ半年も経っていないのだという事実に思い当たる。主観をどこに置くかで、時間経過すら長くなったり短くなったりするのだから、人の感覚というのはいい加減なものだ。
いい加減な、ものなのだ。
本邸の見取り図の、下へ隠した手紙の内容を思い浮かべ目を閉じる。
『先代当主ライムント様が幽閉されていた塔の鍵を紛失。いつ頃から紛失したのか不明。ディートハルト様が亡くなった混乱で、ライムント様専用の侍女も辞めており詳細不明。他の侍女に確認するもライムント様のお世話を引き継いだ者が居らず、食事を運んだのはいつが最後だったか知る者なし。一時、ディートハルト様に変わって伯爵家の執務を行っていたイェレミーアス様に詳細確認されたし』
ラウシェンバッハ領を混乱に陥れるため、ぼくならライムントを解き放てと指示する。それをハンスイェルクが実行できなかったのは。単純に、逆らうことすらできない怖ろしい父を解き放つことをハンスイェルクが躊躇ったのではなく物理的に不可能だったから、だとすれば辻褄は合う。
鍵がないことを言い訳に、ライムントを解き放たずにいたこともまた、納得できる。これ幸いとハンスイェルクがリースにもライムントの居る塔の鍵がないこと、食事を運んでいる様子がないことを黙っていたことも分からないではない。しかし。
ハンスイェルクに、そこまで知恵が回るだろうか。
では誰が、ライムントが蟄居させられている塔の鍵を隠したのか。
「……」
閉じた瞼の裏で、冬の陽射しを追う。じんわりと視界が赤く焼けている。目を閉じて光へ顔を向けた時に見える赤い模様。瞼の裏側だ、だの網膜の血管だ、など所説あるらしい。だが、はっきりとしたことは未だ解明されていない。
世の中には意外とはっきりしていない物事が多い。ましてや人の記憶など。
人の記憶というのは曖昧でいい加減なものだ。だからぼくは、ライムントに会った際に過った考えを必死で否定した。何度も、何度も。
あんなに加害欲に満ちた男が、自分と違って正しく生きる目障りな息子の、美しい妻を前に我慢などするだろうか?
イェレミーアスが、そのことに思い至らないなんてことが、有り得るだろうか。
「お腹の調子が悪いのですか? スヴァンテ様」
「ああ、いいえ」
無意識で胃を押さえていたようだ。ハンスの問いへ軽く頭を振る。
大丈夫。ぼくはジークフリードが喧伝するほど、賢くはない。だからきっと、この考えは杞憂だ。
執務室の窓から、外へ目を向ける。
「……そろそろ皇宮へ戻りましょうか」
冬の訪れとは不思議なものだ。変わらぬ陽射し、変わらぬ空のはずなのに、きんと冷えた空気に晒された景色はどこか白っぽく色が抜けて感じる。
高く、青く、白く。人の感覚とはいい加減なものだ。視点を変えれば、主観が変われば、時間が変わっても、「感覚」などという曖昧なもので印象が変わってしまう。
だからこの考えが、ただのバカげた妄想でありますように。
何度も胸中で繰り返しながら、ぼくは馬車に揺られて窓の外を眺めた。
皇宮に戻り三週間ほど経った。皇国にその年初めての雪が降った日、フレートからの短い連絡があった。
――ライムント卿、本日死亡。寒さによる衰弱が原因の模様。
ため息を堪えて、メモへ目を落とした。瞼を閉じる。瞳に映る何もかもが、網膜を
誰が始めた企みだったとしても、止めを刺したのはぼくだ。
――誰かに。
誰かに許しを乞うつもりはない。そもそも一体、誰に許しを乞えというのだろう。
ぼくは自分は正しいだなどと、傲慢なことを言うつもりはない。ぼくはどこまでも卑怯で冷酷だ。臆病なくせに小賢しい。その上に今日、とうとう人を殺した。この先もきっと、必要であればどれほど非道なこともやってのけるだろう。
ただぼくが、それを許せなかったという、それだけの理由で。
背もたれへ凭れ、頭をぐっと上げて天井を見つめる。皇宮へ準備された、ぼく用の執務室はしんと静まり返っている。
「……この件は他言無用です、とフレートにも伝えてください。リース卿にも、イェレ兄さまやヨゼフィーネ伯爵夫人へはこのことを伝えないように連絡しておいてください」
「かしこまりました」
翌日は冬晴れの陽射しが雪を反射して、一面銀世界だった。白は汚れが目立つ。何となく暗い気持ちで皇宮の廊下を行く。
薬学典範の読み込みは終わったし、魔力が微塵もないぼくは魔法の授業を受けない。だから必然的に、ジークフリードとイェレミーアスが魔法の授業を受けている時は空き時間になる。
その日はたまたま、剣術指南の後に魔法の授業の予定が入っていた。
「先日は大変に素晴らしい歌劇へのご招待、ありがとうございました。妻も絶賛いたしておりました。スヴァンテ様。よろしければ、このままもう少し鍛錬して行かれてはいかがでしょうかな」
シェーファーから声をかけられ、顔を上げる。澄んだクロムイエローは、穏やかな色を湛えている。ジークフリードがちらりとイェレミーアスへ視線を送った。
「オレたちは魔法の授業へ行くとしよう。鍛錬を続けるかどうかは、スヴェンに任せるがどうだ?」
「……そうですね。そうしましょう。お願いできますか、シェーファー公」
「あい、承知いたしました」
ジークフリードの言葉へ頷いて見せる。各々、訓練用の武器を片付けて戻って来たインゴとクーノへも声をかける。
「クレンゲル卿、ヴェッセリー卿、よろしければ我が家の侍女にお茶など用意させますがいかがですか?」
「いいや、妖精殿。お気遣いなく。我らはこれにて辞することといたしましょう。な、クーノ」
「ええっ! だってインゴ様、妖精直々にお誘いいただいた妖精のお茶会ですよ? 断るんですか?! 一生後悔しますよ?」
「ふふっ……。では、手土産を準備させますのでどうぞ受け取ってからお帰りくださいませ」
インゴはなかなか勘の鋭い男なのだろう。初顔合わせからこっち、座り込んでうっとりとぼくの顔を眺めるのが日課になっていたクーノを無理矢理引っ張って背を向けた。
「ダニーのところでパイを包んでもらってきて」
ラルクへ言づてると、乳兄弟は愛嬌のある丸い目をくるんと上へ向け頷いて駆けて行く。ちょっとインゴとクーノへ目を向けている間に、ラルクは皇宮の中へ消えて行く。ものすごく早い。もう見えない。
誰も居なくなった修練場でシェーファーと向かい合う。修練場の出口でハンスが待機しているから、中には誰も入って来ないだろう。
「今月末には一旦、タウンハウスからの通いになります。冬木立の月の末にはまた皇宮に滞在することになりますので、シェーファー公もぜひ奥さまと皇宮でお過ごしになってはいかがでしょう?」
その方が彼らを守りやすい。シェーファーの腕があればミレッカーに害されることなどないだろうが、妻を人質に取られたら身動きは取れなくなるだろう。それは避けたい。
シェーファーは下から睨み上げるようにして、ぼくを見つめた。
「……そうですな、それもよいでしょう」
「ジーク様にはぼくからお話ししておきますね」
「ええ。……スヴァンテ様は、どこまでご存知ですか」
率直なところはさすが騎士、というべきか。だからぼくも、率直に答えた。
「ミレッカーが、薬学士を使って人々を暗殺し唆し、何かを企んでいることくらいですかね」
「……っ! それは……っ」
「ただし、確たる証拠がないのが現状です」
じゃり、とシェーファーの足元から音がした。踵を上げて、いつでもぼくから距離を取れる体勢を一瞬で整えた。彼は未だ騎士である。
「そしてそれは皇王もご存知です。ですから、シェーファー公」
ぼくらに、お力添えいただけませんか。
手を差し伸べる。白く小さな手を見つめ、シェーファーはごくり、と喉を鳴らした。木剣のレイピアの刃を、軽く手のひらで受け止める。
「ぼくはね、この国をろくでもないと思っています。特権階級が寄って集って弱者から搾取を繰り返す。それは長らく他国への侵略という形で領土を広げて来た、この国の歴史そのものでしょう。けれど、だからと言ってそれを許し見逃す道理はありません」
戸惑い揺れるクロムイエローへ、強く説く。
ぼくは正義ではない。碌でもないのはこの国だけではなく、ぼくも同じだ。
それでも。
「弱き者から搾取する。それがこの国の歴史だとしても、ぼくはそれを変えてみせます。貴族とて、罪は罰として償う社会へ変えて行かねばこの国に未来などありません。皇王にも認めさせてみせます。だから、どうか」
ご助力を。
レイピアを下し、もう一度手を差し伸べる。
役者が揃えば幕が上がる。ようやく始まるのだ。この、愚かなジングシュピールが。ぼくはイェレミーアスを英雄へと押し上げる。
震える指が、ぼくの手へ触れた。
さぁ、幕が上がる。
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