友達に誘われてナンパに参加したら校内一の美少女が捕まった件。
スタミナ0
第1話「そうだ、ナンパしよう」
俺は鍛埜雄志――路鉈高等学校に通学する現役の男子高校生!
さっきまで保健室に入り浸り、日課である愛しの保険教諭こと切花梓先生へのアプローチに勤しんでいた。彼女とは入学早々に遅刻し、熱烈な
ん? 俺が不良だと?
待てよ、俺は不良じゃない。
言い訳……ちゃんと真摯な理由がある!
道に迷っていた外国人のお爺さんを助けようと、万年英語が赤点の乏しい頭でありながら無謀にも声を掛け、苦心惨憺としながら目的地の駅まで案内した。
切符の買い方が判らなくて買ってやったら、今度は乗り方が判らないと言われ、やむを得ず着いて行く。
それからホテルまでネットでマップ検索をしながら案内し、遂に到着したのだ。
見事なサポート、俺は紳士だ!
しかし……俺の居る叶桐市というのは地方都市。まさか、東京まで数時間、一日潰してお爺さんの介抱してたとはなぁ……。
そして二年に進級したが、そんな事を繰り返す内に周囲から疎遠になって……あれ、俺には梓先生しかいないんじゃない?
やっぱ愛してる!
教室に戻ると、因縁の宿敵たる森先生が教卓にて生徒を睨め下ろし、尊大な態度で教鞭を揮っていた。
性格も合わない上に、ヤツは俺の嫌いな数学なんて物を担当してやがる。
これまで幾度と死闘を繰り広げたことか。
俺を見つけて、森先生は早速嘲笑を浮かべる。
「おや、今日はサボりではないのですか?」
「違いますよ。森先生に会うとなると緊張してしまうので、化粧を直していただけです」
「……本校は化粧禁止ですが?」
「嫌だなぁ、どうせ皆してますよ。それに、俺はアイライン整えただけですし!」
「目付きの悪さは元々でしょう……」
誰が目付き犯罪者じゃコラァっ!?
あ、でも以前に保育園のボランティアに参加したら、子供に「知ってる!三丁目の狂犬と同じ目だ!」って嬉々として指摘された。何だよ、“三丁目の狂犬”って。
それで確認したら、野山に放置された本物の狂犬だった。予想以上の面構えだし、何か因縁付けられて町で遭遇した時はめっさ追い掛けられた。
クラスメイトが俺の無礼な返答の数々に爆笑を堪える。そんだけウケるのに、友達少ないって可笑しくない? 人を都合の良いギャグマシーンと思ってるだろ。
森は大袈裟に嘆息する。
「仕方ありませんね、着席しなさい」
「ありがとう、森先生。絶対にいつか倒す」
「バケツ持って廊下に立ってなさい」
「時代遅れだぜ。今じゃ鞭打ちが最先端」
「水で満杯にした物で頑張りなさい」
「先生のいけず! あなたは時代の敗北者よ!」
そんな風に吐き捨てなかがら、バケツを持って廊下に退散した。
数十分の耐久を終え、チャイムと同時にバケツを下ろした。
鍛えた甲斐があった……お蔭で腕の疲労は大した事は無い。……あれ、腰が、腰がすごく痛ぇ!!
「よう、鍛埜。……何してんだ?」
「今教室に近づくな! ウイルス感染で皆がゾンビ化してしまった……療法は水なんだが、教室を開けてしまったら、被害がより大きく波及してしまう! 速やかに避難しろ!」
「成る程、サボりを遂に咎められたか」
「察しが良くて助かるよ、馬鹿野郎」
俺に話し掛けて来たのは、
側面を刈り上げた天然の茶髪は短く纏められおり、本人の快活な雰囲気と相俟って明るい印象が殊更に眩く見える。体格が良く、平均よりもやや筋肉質な体。
雄志にとって、数少ない(五本指で収まる)友人の一人。
「その無駄に筋肉質な体……バケツ持ちの時だけ貸せ……!」
「合体するか!?」
「腰だけ貸せ!」
「絵面が気持ち悪いぜ?それは止めとけ」
中野は笑って俺の隣に移動すると、壁に凭れた。
「お前さぁ、いい加減にしろよ。それだと、校内ランキング二位の幼馴染に心配されるぜ」
「
校内ランキングって何だ……? 一位は当然、梓ちゃんだよな?
「総会とかで、生徒会として壇上に居るだろ……」
「自慢じゃないが、寝てるから知らんな」
「じゃあ自慢気な顔すんな」
胸を張って言った。……自慢じゃないよ、ホント。
中野は呆れ笑いを浮かべた。が、直ぐに一転してにやけ顔で詰め寄ってきた。
「なあ、色恋沙汰もなかった一年生の無益な時間を繰り返したくないよな?」
「え、俺は梓ちゃんに一途だけど」
「浮いた話の一つや二つ、作りたくないか?」
「え、俺と梓ちゃんの話は噂されてないの?」
中野が血涙を流しながら、襟を摑んできた。
怖じ気を震って反り身になる俺に、更に顔を寄せてくる。意外とホラーで草。
「行くぞ」
「何処に?」
「可愛い娘を捕まえに」
「逮捕沙汰やんけ」
「中心街でナンパだ!!」
俺はその提案に、暫し困惑していたが、思考とは分離した口が自然と動いていた。
「成る程」
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