出会い

大学の入学式を終え、サークルの強引な勧誘を抜けた僕は、駅を目指し歩いていた。東京の街はとてつもなく広い。気を緩めるとすぐに呑まれてしまいそうな気迫に満ちている。田舎の高校から出た僕に友人などいる訳がなく、流れ行く人の波に乗って歩いていた。

「すいませんおにーさーん。今暇ですかぁ?」

またか。ナンパって男が女にするものなんだと思っていたが、女が男にするパターンもあるらしい。いわゆる逆ナンというものか。僕に声を掛けてきたのはおそらく年上であろうギャル。

「いや、いいです。僕急いでるんで。」

足早に立ち去ろうとすると、その女性は強引に腕を引っ張り歩き始めた。

「まぁまぁそう言わずに〜。ね?私と遊ぼうよぉ〜」

まとわりついてくる手と体に背筋が思わず震える不快感を感じる。

「...ほんとに結構です。僕、彼女居ますし。」

僕の一言を聞いた途端、女性の顔つきが変わった。

「...は?」

「僕彼女居るんでそういうのやめてもらっていいですか。」

「...いや彼女持ちなら元から一人で歩くなっつーの。だから顔だけイケメンとか嫌いなんだよ...」

「あーあの、もう失礼していいですか?」

「あ、どーぞどーぞ。お帰りになってくださいー。」

女は怖いものだ。ここまで露骨に態度が急変する人もなかなか見かけないけど、どうにかなってよかった。あ、ちなみに彼女居るっていうのは嘘。陰キャが彼女を作ることは、YouTubeで登録者数100万人突破するよりも難しいことであろう。では何故ナンパされるのに彼女を作らないかって?簡単に言えば、中学2年のときに起こったトラウマ沙汰の出来事がどうしても忘れられないためだ。俗に言う女性恐怖症というやつらしい。今ではだいぶ改善したが、思春期真っ盛りの高校時代は酷い青春を送った。改善したとはいえども、今でも女性と接するのは苦手だ。男となら大丈夫なのかと問われればYESと答えられないところから僕のコミュ障レベルが測れるだろう。結局、女子も男子も両方無理である。そんな彼女いない歴=年齢の大学1年生(18歳)の僕は、一人東京の街中を彷徨っていたが、そろそろ足が疲れてきたので先月借りたアパートに帰ることにした。

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