<「ご主人様は戦闘機」を読んでのレビューです>
物語は主人公ニッパーの視点で進む。研究所の日常的な光景の中に、戦闘機や特殊兵器、未知の敵ランバーといった非日常が淡々と描かれる。会話の端々からキャラクターの個性や関係性がすっと浮かび上がり、説明も自然で世界観への導入が滑らかだ。文章は理知的でありながら、人物の心情や小さな感情の揺らぎを見逃さず、読者はニッパーの視点とともに研究所の日常や任務の緊張を追体験する。
個人的に印象的だったのは、「大変だな。いつもありがとう」「思ってもいないくせに」「桂木が苦労してるのも、俺の世話をしているのも事実だ。そこに俺の思想は関係ない」というやり取りだ。理由は、この短いやり取りだけで二人の信頼と淡い距離感、相手を気遣う思考が自然に描かれており、感情の微妙な揺れが丁寧に伝わる点にある。セリフの間の呼吸や沈黙も計算されていて、登場人物の存在感がより鮮明になっている。
物語全体を通して、世界観の設定の巧みさと人物描写の繊細さに魅力を覚える。研究所や戦闘機の機構、フェアリィの存在と使命感もさりげなく説明され、説明過多にならないまま読者に状況を理解させる手際が心地よい。この作品の魅力は、静かに描かれる日常の中で確実にキャラクターや世界が立ち上がる筆致にある。