Anothers

@kagaribi-yarou

第1話 prologue

 西暦二十四世紀。人類は宇宙圏へ進出し、他惑星への移住という岐路に至った。然し、空気組成の不一致、植生の希少性、在来種生態の危険度に対し、統一政府は上層部・代表民間人(政府御用達の学者、医師)の意思を統一出来ず、地球近似惑星への移民計画を凍結化する。

 されど、探査に於いての過程ーー科学的アプローチの数々は、社会に公表流布されて間も無く、一部潤いを齎した。


 人体脳髄連結型精神体伝送路

 /Trans Path


 其れも、潤いを供与した湯水の一雫であった。


 “TP技術”により、人は別人体への移行を可能とした。過酷環境に適合した身体へ、将又、欠損・障害の無い健康体へと。

 開発当初は、外科手術による他惑星適合体への人工的進化−−「Adapted Operation進化適応施術」と二分する、宇宙開発の根幹となる計画であった。

 けれど、実験段階で続出した別人体への強烈な拒絶反応による検体の廃人化が凡ゆる投与・暗示でも抑制出来ず、開発は頓挫した。

 計画は永久的に日の目を見ない。そう、結論を既に提示された技術はの手に渡り直ぐ、開花し実現段階迄、進歩飛躍した。

 医療、軍事、或いは個人的目的の為、其の技術は各方面に多用された。


 現環境に近似した惑星への永住も現実味を帯びたが、人民の意思はされど現住処への継続的居住に傾いた。

 然し、大手企業群ーー「財団」より、ある「革新的サービス」が発表された。


惑星間伝送路

/Trans Path Service

サービスモデル名称ーーAnother


 「Another」は人の際限なく、凡ゆる人種の老若男女に提供された。

 TPSサーバーとの接続端末「コクーン」との連結ポートを人体脳髄へ付属する、現代科学の範囲では簡易的施術を実施するだけで、獲得可能な多種多様なアバター。

 特殊環境に対応する為、発現者の稀少な「Esper能力者」の遺伝子構造と特殊な発達をした脳幹を模倣し、搭載されたESP能力。

 今の自分とは基礎設計から異なる「神秘」に数多の人類が魅了された。

 

 取分けて嘗ての富裕国家「米国」「欧州聯合」「英国」「中国」「日本」の熱量は膨大で、財団の目論見以上に参入があった。


 当初は外惑星の散策、開拓をする為の仲介サービスであった。

 然し、ESP能力科学の発展や一部マニアユーザーの意見が上申され、GAMEーーESP能力の出力、形状の固定化。条件付の獲得。戦闘行為という「経験値」の設定等々ーーサービス開始一週間で導入。落とし込まれた。


 アバター能力育成。付随したESP能力の試験運用。当初目的にある未探索科目の調査は地球企業延いては政府にも利すると判断され、凡ゆる分野事業が参画した。

 其の事に起因し、「Another」に於いて民間人のESP行使、殺傷兵器の携帯を全面的に容認する武力保持緩和条約が国際の場で締結。

 戦闘行為を辞さないとサインしたユーザーは、必要と判断される環境下での武力行使。多岐能力の率先的開発。惑星の生態系、植生環境の調査。以上を必須職務に敷く一事業主として所属国家に提示するのを条件に、凡ゆる危険、自由を許可された。

 此の頃から、ユーザーは「探索者」という職名を手に入れた。

 

 以降も一大アップデートを三度繰返し、世界唯一のTPサービス「Another」は百余年という節目を迎えんとしていた。

 其の時節から、新たな企画を起すという噂が出回っていた。詳細情報、不明。漏洩元、不明。なのに対し、企画名だけは明瞭に。


”Real Shift“


 多くの探索者が疑問符を浮かべた。アニバーサリーを祝す一大イベントなのか、或いは大型アップデートなのかと。

 真偽を問う以前に考察が飛び交う中、誰しもが例外を問わず次の悦楽を空想していた。誰しもが、此の企画をーー誤認していた。

 

 あの日、延べ五百万のユーザーは「Another」に、計画的に打算的に放置されれた。


 其れが真実であった。


 

 


 



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