第110話 まさかもう一人? 2
(相変わらずベッドの上です)
確かにエドのエドモンド君を無視する勢いで、私は聴取書を読んだ。
完璧アンリさんって日本人じゃん。しかも、『平民ですがなにか!?』のスピンオフの『選ばれなかった王子は、平民出身の伯爵令嬢を溺愛する』ってなんのこと?私が倒れた後にそんな作品が出たってこと?
平民出身の伯爵令嬢って、アンリさんのことだろうから、選ばれなかった王子は……エド?
エドが溺愛しているのは私ですから!
題名だけ見てイラッとしてしまった私は、『選ばれなかった……』が正式な出版物だと勘違いしていたが、実際はアンリさんが勝手に書いた二次創作小説で、しかもアンリさんがその創作小説の世界に転生したと思い込んでいるなんて思ってもいなかった。
「なあ、やっぱりそいつってアンネと同じ世界の記憶があるのか?」
「……みたいだね」
『選ばれなかった……』がどんな内容かはわからないけれど、だいたいは予想できる。
けど!
『平民ですがなにか!?』だって、ストーリー通りにはならなかったのよ。私は自分からミカエルと婚約破棄したし、ミカエルとアンはハッピーエンドを迎えなかった。何より、エドはアンに惚れなかったじゃない。(これが一番重要!)つまり、この世界のベースは『平民ですがなにか!?』なんだろうけれど、すでに枝分かれして違う世界と言っても良い。
「エドはさ、アンリさんに魅力を感じる?」
「え?全然。これっぽっちも。俺が魅力を感じてるのはこっち」
またもや不埒に動き出した手をペチンと叩く。
「調子乗り過ぎ」
「ご馳走が目の前にあったら、つい手が伸びるのが人間の本能だろ」
「お腹いっぱいの時は、ご馳走だろうがなんだろうが、目の前にあったら気分悪くなるわよ」
「じゃあ、俺はまだ満腹じゃないんだな」
私はエドの上から下り、ガウンを羽織ってしっかりと紐を結んだ。
エロエロタイム終了〜。
振り返るとエドはお預けをくらったワンコみたいにシュンとした表情をして、私の紐を名残惜しそうに引っ張っていたけれど、もう一回以上しているからね。これ以上エドを甘やかしたら、後々後悔するのは自分な気がする。
「あいつと話したいか?」
「あいつ?アンリさん?」
「ああ。同郷……っての?もしアンネが話したいなら、面会くらいは融通きかせられると思うぞ」
アンリさんと話すこと……ないかな。
考えるまでもなく、私は首を横に振っていた。
だってさ、『平民ですがなにか!?』を知っている……もしくは書いていた?としたら、同じ日本人で同じ時代を生きていた人なんだろうけど、同じ日本人だから全員と仲良くできるかって聞かれたら、そりゃ無理だよ。アンリさんの性格的にも仲良くなれそうなタイプにも見えないし、別に懐かしむような何があるわけじゃない。たとえアンリさんが同じ学校に通っていたとか言われても、だからなに?くらいにしか自分の回りの環境に愛着なんかないのよね。勉強ばっかしてたから、唯一の娯楽が、通学途中にスマホで読むウェブ小説だったから。
そんな私がアンリさんとできる話といえば『平民ですがなにか!?』関係だろうけど……、エドを運命の相手とか言っている人と話して楽しい訳もない。
「別にいいかな」
「だよな」
ホッとしたようなエドを軽く小突いた。
二十歳になるのはあと五ヶ月後、まだ未来はわからない。
★★★第四章完★★★
❖あとがき❖
番外編に続く……かもしれない。
第五章で完結予定(予定はしてますが、書くかどうかは未定)です。
番外編は、アンとアンリが修道院で出会い、アンリが衝撃を受ける話を書きたいなと考えてはいます。興味ある方いますでしょうか?
しばらくは、違うお話を書くつもりなので、忘れ去られた頃に更新するかもしれません。
フォローはそのままでお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます