第003話 【桜凛学園高校……いや、『迷宮科』って何だよ!】

 異世界より帰国(帰星?)してから早くも……二日目。

 うん、ただの翌日である。


 昨日は結局、久しぶりにハンバーガーを食って、こちらも十年ぶりの、のんびりとした入浴を堪能しただけでそのまま寝落ちしちゃった俺。

 いや、もちろん向こうにも風呂はあったんだけどね?個人でゆっくり出来るような湯船はお貴族様とか大金持ちの商人のお屋敷くらいしにしか無かったからさ。

 銭湯はあったんだけど……俺の知ってる日本のモノとは比べようもないくらいに小汚なかったんだよなぁ……底が砂利でザリザリしてるレベル。


 荷物をひっくり返してどうにかこうにか着替えとタオルは見つけたんだけど、石鹸とシャンプー、歯ブラシに歯磨き粉が無かったからコンビニまで急いで走ったさ。

 おかげで財布の中身が残り数百円と言う。

 てことで(?)、昨日コンビニで買っておいたホットスナック(アメリカンドック)を朝食に食った俺。朝から食うにはちょっと重かった。

 さて、今日はこれから一日掛けての荷解き作業である!


 この部屋、ベッドが備え付けになってるからそれほど広くはないんだけど、少ない荷物をしまっておく程度の収納スペースや物入れ、そしてなによりWi-Fiが付いてたのがとてもありがたい。

 昨日、着替えなどを探すために開いたダンボールから服を取り出し、クローゼットに吊り下げたりボックスに入れ替えたり。 

 それほどの数はない、家から持ち出した俺の荷物。三個目の箱を開くと中に入っていたのは真新しい制服や学校指定の鞄。


 そして俺が入試試験を受けた学校の……パンフレット。

 えっと、なんだこれ?


 表紙にちょっと意味の分からないことが書かれてるんだけど?

 入学祝いに買ってもらったばかりのパソコン……は、どうやら引っ越し時のゴタゴタの際にクソ従兄弟にでも盗まれたらしくここには無いが、タブレット端末は荷物に入っていたので、それを使って色々と確認することに。

 うん?パンフレットの何がおかしかったのかって?それはもちろん……。


「えっと、俺が受けたのは私立桜凛学園だったはずなんだけど……なんだこの、私立桜凛学園『迷宮科』って言うのは……」


 な?意味わかんないだろ?


「ここ、日本だよな?異世界じゃあるまいし、迷宮って何だよ、迷宮って……」


 何かの冗談か印刷ミスかと思い、トントンとタブレットを操作して学校のホームページを開く俺。

 もちろんすぐに出てきたんだけど……なんかこう、青春してそうな学生の写真、学校の施設の写真や校風の説明とともに書いてあったのは、


「普通科、商業科、迷宮科……本当にあるんだ迷宮科?

 いやそれ、一体何を教える学科なんだよ?

 てか、ダンジョンあるの?ここ、日本だよね?」


 頭の上に大量のクエスチョンマークが並ぶ俺。

 学校のホムペを閉じて、今度はダンジョンで検索してみる。

 そんな検索をしても普通ならナントカペディアの説明文とか、迷宮ナンタラって名前のゲームの情報くらいしか出ないはずなんだけど……うん、色々と出てきたわ、迷宮について。


 マップに表示される近場のダンジョン、ダンジョンの歴史と成り立ち、『迷宮協会』とかいう聞き慣れない組織。

 さすがにクソ長い説明を全部読むのは面倒なので、必要そうなところだけかいつまんで流し読みすることに。

 まず最初に気になったのはもちろん歴史。だってダンジョンなんてモノがどんな理由で、地球上にいつからあるのか……気になるじゃん?


 『迷宮(それ)』が確認されたのは『1999年、七の月』。つまり世紀末だな。

 恐怖の大王が降臨するとか言う予言は外れたけど、代わりと言ってはなんだが、全世界の首都圏にいきなり現れたのが……ダンジョンだった。

 何もない場所……いや、首都圏だから高層ビルや地下街があった場所にいきなり現れたデカい穴ぐら。


 それも入り口が自然なモノではなく、人工的なモノだったわけだから、当然の様に住民は大パニック、各国政府はその対応におおわらわになった。

 お役所仕事バンザイなここ日本では、国としての対応が遅れている間に、後先考えない迷惑なバカ……穴があったら入りたい、むしろ入れたいというような『好奇心旺盛な陽キャのお調子者』が出てくるのは仕方のないことで。

 そしてそんな人間の殆どが中で死んでしまったことも仕方のないことで。


 日本ではいつも通り野党である声だけはデカい少人数政党が、自分のことは棚に上げた責任追求をして、その当時の内閣が解散したとかしなかったとか。

 さすがにバカの行動まで与党や総理大臣の責任にされるのはカワイソウ過ぎるだろ……。

 まぁそんな連中の中でも、大怪我をしながらも、運良く生きて帰れた連中によって中の情報が外にもたらされたのは不幸中の幸い……いや、他所の国の軍隊が犠牲を出しながらも色々な情報を出していたから、大した情報源にはならなかったんだからただの犬死にだったんだけどさ。

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