僕の隣は君だけ

藍葉詩依

プロローグ 信じた未来

 王と王妃が手をかざすと、幾つもの魔法陣が重なり光を纏った花びらがフルール王国へと降り注ぐ。

 

 キラキラと光る魔法の粒子と共に降る花びらは、毎年見ても息を飲むほど美しく、一目見ようと他国からも多くのものがこの国へと訪れる。

 

 そのため一年を通して一番大きいお祭りと言ってもいいだろう。

 

 幻想的な光景に目を奪われていた人々は我に返った者から歓声をあげる。

 

 春の訪れを祝い、この国の発展と安寧を願うフルール祭はここ、フルール王国でかかせない行事だ。

 

 王城のバルコニーという特等席で見ていたフルール王国の第一王子、リヴァイ・フルール。そして婚約者のルミナ・ユテータスは顔を見合わせ凄いね! と笑い合う。

 

 5歳の二人は空から降ってくる花びらを捕まえようと必死に手を伸ばし、手の中に舞い降りた花びらが光と共にゆっくりと消えていくのをみて眉を下げる。

 

「きえちゃった……」

 

 呆然と呟いたルミナに二人を見守るように立っていたルミナの父、ゴートン・ユテータスが魔法だからねと苦笑しながら答える。

 

「おとうさま、私たちもこのまほうできる?」

 

 こてんと首を傾げたルミナにゴートンは二人が頑張ればできるよと答え、返答に満足したルミナはリヴァイの両手を掴み無邪気に笑う。

  

「いつか、二人でやろうね!」

「うん。やろう」

 

 魔力量が多く、仲がいい二人は未来を疑うことなく約束をした。

 

 この魔法がどんなものなのかも知らずに、必ずできるだろうと信じて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る