第一章:快適な拠点作り~家に帰ろう~
目の前には巨大な大木。神話にあるユグドラシルと言われても疑わないレベルの、そんな大木だ。
そこには何か淡い光の玉が無数に飛び、消えていく。
ホタルなどの虫ではなく、本当に暫くすると消えてしまうのだ。
「綺麗ねぇ」
消えていく玉の下に手を置き、眺める母の呟きにピクシーが反応する。
「ソレハイノチノカケラダ」
ピクシーの言葉に首を傾げる。イノチノカケラ?
「随分とファンタジーだな。なんだよ、命のかけらって」
「ソノママノイミダ。コレハイノチノハヘン。コレダケデハイノチハメブカナイ」
命は芽吹かない? ってことは
「何か足せば命が芽吹くってこと?」
俺の考えに被さるようにして姉が問いかける。それにピクシーは頷きチラリとこちらを見やる。
「ササイナキッカケ。ダガ、ソノイノチニトッテコンテイトナルダイジナモノダ。ソレガアレバイノチガメブク」
そう言うとピクシーは「ワレワレハソウヤッテウマレテキタ」と言って母の肩に乗る。
「ワタシガシッテイルイチバンキレイナバショダ。ドウダ? キニイッタカ?」
気に入ったなら早くご飯を、と言外に語るピクシーに姉は乗り気な声を上げる。
「駄目だな」
そんな姉を制止するように兄貴が首を振った。
「何でよ!?」
姉の疑問符に俺も頷く。ここは綺麗で、そして幻想的だ。すごく絵になるだろう。
「と言うか、あの花畑も駄目だな」
その言葉に数舜思考し、思い当たる。確かにあそこを映してしまうとピクシー達が危なくなってしまう。
「だから何でよ!!!」
姉の叫びに口を開く。
「もしもあそこを配信してしまうとまだ行っていないエリアだという事でトップ層まで動きだそうだろうな。そうすると中級ならともかくトップ層ならここまでたどり着くはずだ。そうなるとピクシー達の居場所はなくなる。良くてチリジリ、悪けりゃ全滅だな」
俺の言葉に不機嫌そうだった姉は成程、と顔を動かし「なら駄目ね」とあっさりと引き下がった。
「ナンノハナシダ。ココイジョウニイイバショハナイゾ」
一旦話が落ち着くと、黙って会話を見守っていたピクシーが口をはさんできた。表情は何処となく不満そうだ。
「いや、凄くいい。良いんだが、ここを配信してしまうと、他の人たちに見つかってしまうかもしれない。そうなるときっと強い人たちも君たちを見つけてしまうんだ」
兄は優しい口調でピクシーに語り掛ける。
「トップ層は僕たちとは比べ物にならないほど強いから、君たちを危険に晒してしまう可能性があるんだ」
だからここを配信しては行けないと話し合っていたんだよ、と締めくくる兄にピクシーは「ナンダ、ソンナコトカ」とつまらなさそうに吐き捨てた。
「ソンナシンパイハムヨウダ。ココヲツカウトイイ。ソレヨリハヤクイエニアンナイシロ!!」
私はお腹が空いたぞ!! と暴れだしたピクシーに母は「あらあら」とコロコロと笑い「どうするかはまたお家に帰ってから話し合いましょ? 今はピクシーちゃんにご飯を上げたいわ」と歩き出した。
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