第21話Game Over

神楽さんが公園手前に車を停めた。


「じゃあ行ってくるか。」

車のドアが開き、俺は誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。



「何かあればあーしが、無敵のスキルで助けてやるからよ。そんかわり、あーしのダチ助けるのに協力しろよ?」


俺の破れた服の裾を掴んで時村が言う。


それは、約束出来なけどな。俺達は山に避難するつもりなんだ。晴香と一刻も早く合流したい。スマホの画面が壊れて、連絡取れないし。


それでも…ここは素直に頷くしかないな。助けてくれるか。あの時みたいに、金を要求される事もないだろう。少なくとも今は。


「分かった、時村さんが友達思いなのは知ってるよ。ただし、自分たちの安全を手に入れる前には、難しいよ。」


同意しながら、俺は主張すべきところはした。

俺はセーブ&ロードがあるから安全だが、他の人はそうじゃない。


自分は、別に守って貰わなくて構わない。

俺にも無敵のスキルがあるんだから。



「ああ、どこにダチいるか分からねーし、それで良いよ。」

あっさりと彼女が納得した。

それに驚きの表情を俺は浮かべた。


「なんだよーそのツラ。ってか、えろき…政樹ちゃんと言えるようになったんだな。めっちゃ別人に見えるわ。少しだけ見直した。」


ふん、勝手に見直してろ。そんなんで喜ぶとでも? だけど、シカトするのも、ご機嫌損ねるのは面倒なので、軽くお礼を言った。


それにしても、政樹とちゃんと呼んでくれたか。今更…いや、俺が変わったからなんだろう。


「…政樹! 早く!」


朱莉ちゃんが手招きして俺を呼ぶ。

トイレに行きたいんだったな。


「今行く! じゃあ3人ともちょっと行ってくる。」


俺は急いで朱莉ちゃんの元に言った。

他のみんなもトイレ行きたいんじゃないかな?

そう考えて、自分も用を足す。


腕を組みながら、彼女をトレイの外で待つ。


「お、きたね。」

彼女が出てきて、声をかけた。


「…ふぅ、さて2人きりで話そっかー。」

朱莉ちゃんが真剣な表情で言う。

大事な話があるんだな。俺の心臓が高鳴るのを感じた。


「まずスキルを手に入れ方から話そっか? 凄い語るけど、ほとんど独り言と受け止めて良いよ。」

俺は小さく頷く。耳を澄まして、彼女の一言も逃さないつもりで聞く。


「ゾンビになった親を殺すと固有スキルが手に入るの。それでスキル所持者になるの。」


なに…固有スキル? それはセーブ&ロードとか、特殊なスキルの事か?


「親戚でも駄目、親でないと手に入らない。子供でも無理みたい。」


おかしい…俺はゾンビ親を殺していない。なのにスキルが使えるぞ? 朱莉ちゃんの勘違いじゃ? それとも…他にもスキル入手方法があるんじゃないか?


「固有スキルが人それぞれにあるの。」


やはりか…それにしても、朱莉ちゃんは本当に子供もなのか? 彼女の固有スキルは一体なんだ? 大人なのに、子供になれるスキルか?


いや、それよりも疑問に思っていることを聞いた。

「どうしてそんなこと知ってるの?」


誰から聞いた? ひとまず彼女の言葉を待った。


「ふふ、それこそ固有スキルのお•か•げ。情報が手に入るの。それで私子供だけど、大人みたいにお利口さんになれたのよね。」


謎が一つ解けた。そう言うことだったのか!


「じゃあゾンビの正体も知ってるのか?」


奴らの正体が分かれば、対処法も出来そうだ。彼女の情報源が、スキルの力なのは分かるが…どう言う仕組みなのか、疑問が次々と浮かび、質問も無限にでそうだ。


安全を確保したら、更に聞かないと。ただ…今はこれくらいにしておくか。

いつゾンビが襲ってくるか分からない。

話に夢中で、やられないとも限らない。


「それは知らない。ゾンビがどこから来たのか、このスキルが何故、ゾンビになった親を殺すと手に入るのかも分からない。設定したやつ…悪趣味だよね。」


俺は朱莉ちゃんの言葉にそっと頷く。


「ただね…ある程度は、予想した人がいるんだ。

ゾンビはある国がウィルス流しちゃったとか、狂犬病みたいなウィルスによるものか。

プリオンが、突然変異したとかね。」



「でも1番有力なのは、この世界がゲーム世界に変化したんじゃないかって。」


「ゲーム世界に? 確かにレベルアップとか、スキルとかあるから説得力はあるね。けどそれと、ゾンビの関係が分からないよ。」


「単純よ、この世界がゲーム世界なら、ゾンビがいるのも不思議じゃない。つまり私たちの世界が、取り込まれた可能性があるらしいよ? この情報くらいかな。」


「そうか。じゃあ、朱莉ちゃん。他にも情報あったら教えてね。」


「他にもあるよ? 固有スキルはね、持ってる人に殺されると、それを奪われちゃうの。まぁ死んだら終わりだから、同じことだけど。」


「つまりね、固有スキルを沢山持てる人間が、そのうち現れると思うんだ。」


「そっか…ありがとう、教えてくれて。」


なるほどな…俺も殺されたら、セーブ&ロードしても使えなくなるかもしれない。

その前にロードしないとだ。厄介だな。ゾンビより、人間のが恐ろしくなる。


朱莉ちゃんに頭を下げて、見上げると凶器を出していた。ん? ゾンビが近くにいる?

俺は辺りを調べる様に、振り向いた。



「ううん、お礼は要らないよ。冥土の土産ってやつかな。政樹…私どうしても生きなきゃいけないの。ごめんね、死んで!」


えっ? あ…ぐぁ。

顔面に痛みが走った。なんだ? 

どういう…朱莉ちゃんか! 俺の固有スキルを奪うつもりだ。早くロードをしなければ。


ぐちゃ…鈍い音がした。


ロード…をしな…いと。


セーブ&ロード機能が奪われました。ロード出来ません。


あなたは死亡しました。

ここで**Game Over**です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゾンビになって復讐しようとしたら、普通に生き返った件 タカユキ @takayuki007

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ