第12話アイテムBOXと密室の謎

「でも、重いもの持つの大変だね。男の人、都丸さんしかいないし。」

望ちゃんが考え込む様に言った。



望ちゃん、それは全く問題ないんだ。君は知らないけど、俺はスキルが使える。


そう…アイテムBOXで、重い物をBOXに入れて、ドアの前に出せば良いだけなんだ。


これなら、男の子がゾンビになっているか、わざわざ重い物どかさなくても済む。



この発想は、ゲームのなせる技だな。と思った。



「望ちゃん、それは問題ないよ。俺こう見えて重い物平気で持てるから。俺1人で充分。望ちゃんと、神楽さんは、男の子と、女の子を見ていて欲しい。」

俺はそう2人を見回して言った。



「そうなんだ。って! 望ちゃん…下の名前で呼んだ。」

望ちゃんは驚いて言う。


「嫌だった? ほら、神楽さんって呼んだら、どっち呼んでるか、分からないじゃん。」

俺はきちんと説明した。


「なーんだ。そう言う事? 嫌じゃないよ。むしろ嬉しいかな。」

彼女が、がっかりしたと思ったら、嬉しそうに言った。



「重い物は、俺に任せてもらって、男の子はどうする? 子供部屋で寝かしつけて、そのままその部屋封印する?」

2人に確認する様に聞いた。



「そうね…心が痛い。けどそうするしかないんだものね?」

神楽さんが悲痛な表情で、声を震わせて言った。


「はい。現状だと、それしかないです。」

俺ははっきり言った。


「そうね。覚悟決めてやるしかないわね。」神楽さんが目に涙を溜めて言った。


泣きそうだな。俺も心苦しいよ。

夏の暑さからくる汗か、それとも、この場の重い雰囲気のせいか。俺は額の大量の汗を拭った。



それから、神楽さんが男の子を寝かしつけた。


女の子は、別部屋だ。まぁ俺たちと同じ部屋。大人部屋にいる。前回は、全員大人部屋だった。


それから2人にスキルを使っているところを見られない様に、女の子を見張ってくれと、頼んだ。


俺は、重いタンスをアイテムBOXに入れた。本当は冷蔵庫が良かったけど、食料問題のため辞めざるを得なかった。


他にも重い物をあと二つ置いた。経3個。これなら、俺以外は、手出しできない。絶対に。


そして俺は大人部屋に向かい、成功した事を伝えた。


「ふぅ、ちょっと安心したと言うか、けど、罪悪感もあるって言うか。」

望ちゃんが複雑そうな表情で言った。


みんな顔から疲れが見える。神楽さんは、かなり疲れている。当たり前か。夫を失い、助けたと思った子供が、結局ゾンビになるんだから。


「神楽さん、考え過ぎないで下さい。誰のせいでもないんですから。」

そう神楽さんに声をかけた。

そして俺は神楽さんの肩に手を置いた。


「ありがとう。そうね。」

そう言って神楽さんは、手を俺の手に重ねた。


「さて、そろそろ寝ますか。」

望ちゃんが言った。


俺も、神楽さんも頷き合い、俺は、ベットに横になり、布団を被った。


ドン、突然大きな音がして、俺は目を覚ました。


ん? なんの音だ? 俺はみんなの無事を確認した。2人とも寝てるな。


俺は、またベットに戻った。ん…何か違和感がある。


あれ? 女の子がいない。


俺は、子供部屋に向かった。子供部屋から音がした様な気がしたからだ。


「あっ、どうしたの?」ちょうど女の子と鉢合わせした様だ。


「うん、お兄ちゃん探してたの。知らない?」

そう聞かれて俺は、胸の痛みを覚えた。


「知らないこともないんだけどね。今日は、もう寝よう。明日お兄ちゃんの事教えるから。」


俺はそう説明するのが、精一杯だった。



「うん、分かった。約束ね。」

それから俺は2人で部屋に戻った。


それから朝を迎え、朝食を終え、俺は晴香に、無事を確認するためチャットを送った。



俺が生きてるって事は、やっぱり男の子は、ゾンビに…一応確認はするが。


俺は晴香の無事を確認。12時30分になり、セーブが出来る様になった。


それから2人に確認するので、女の子を見ておく様頼んだ。


アイテムBOXで、タンスその他を回収。中のゾンビを確認後に、直ぐにロードする体制に入った。



ところが…である。その肝心の男の子の姿が…何処にも見当たらなかった。


そんなバカな。俺以外この重い物を退かす事は、不可能なはず。


まさか…何処かに隠れているのか? 突然襲ったりしないだろうな。


そう思って、くまなく探したが、やはりいない。俺は、ドアの後ろに隠れてるんじゃないかと睨んだ。


そこでドアを調べ…ん? 血がある。黒い血だ。どういうことだ? 心臓がギュッと握られる様な、そんな不安感が襲って来た。


「みんな! 来てくれ。男の子が消えた。」

そう俺は叫んだ。

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