第4話ゾンビとの戦い、そして悲しみと…

「そうだ、お母さんとは、連絡は取れる? 取れるなら、危険かもだけど、取ったほうがいいんじゃない?」


「私はスマホ持ってるけど、お母さんは、逃げる時にスマホ持ってかなかったから、連絡取れないの。」



俺もそうだった。パニックでスマホ家に置き忘れてた。神楽さんのお母さんも、神楽さん助けるためにそうなってもおかしくない。



でも…外に神楽さんのお母さんが上手く、逃げられたとしても、人にスマホ借りれば、連絡取れるよな? と言うことはもう、ゾンビになってるか…それとも、身動き出来ない状況か?



「そっか、きっとゾンビが近くにいたりして、身動き出来ないのかもね。君のお母さん大丈夫。きっと無事さ。」


俺は彼女を慰めた。ほぼ可能性はないと思っているが…それでも、その可能性を信じたかった。



「ありがとう都丸さん。」そう言って彼女が俺の手を取り言った。



「お父さんがゾンビになって、お母さんまでなったら…私…耐えられない。」

彼女が震えて言う。



そう言われると、俺も両親を失った悲しみが襲ってくる。


俺は彼女を励ましながら、二階のマンションに来た。


良しここでセーブだ。彼女とまた一から話しをしないといけないのは、大変だからだ。


しかし…マンションの入り口に、一階以外は、ゾンビがうろついてないのは、奇跡だな。


俺は2階の部屋を全て入って確かめることにした。俺は、痛みがあるけど、死なない。なので、思いっきって挑戦してみようと覚悟した。



まず1番近い部屋。ドアが開いてるか、確認。閉まってるか。2番目のドアも確認。ドアは閉まっている。


そして…最後のドアを確認…開いてる。ドアを開き…胸が高鳴り、俺は、後ろにいる、神楽さんを見た。


「怖いね。何か出てきたら、私悲鳴あげそう。」彼女が弱音を吐いた。


「それは、勘弁願いたいな。悲鳴で、ゾンビが向かって来るだろうし。」

まぁ、そしたらすぐさまロードするが。


2LDKのマンションの、玄関付近には、シューズボックスが置かれ、近くの部屋には、トイレ、バスルーム、キッチンがある。


さて、まずはどこの部屋に行くかだ。

トイレかな。誰かいるかもしれない。


俺はトイレのドアを少し開けた。何もいない。ふぅ、緊張する。


バスルームは…後にしよう。先にキッチンで包丁…つまり武器を手に入れるべきと思った。


けど、ゾンビに包丁は、通じなそう。


キッチンに入った…がやはり、誰もいない。

いなくて良いんだけどね。


「神楽さん、キッチンに包丁あると思うから、念のために、包丁手に持って。」

2人で包丁持ってれば、多少気休めにはなるだろう。


「うん、分かった。」彼女は頷いて言った。


俺はキッチンの下の扉を開こうとして…地面に目がいった。地面に真っ赤に染まった血があったからだ。


うっ…血の匂いで、吐き気がした。ゾンビに間違いない…やれたのだろう。


その死体がないということは…この部屋のどこかに…ゾンビがいる。


ここからは、下手にセーブ出来ないな。


包丁がありそうなドアを開けて、ゾンビが隠れてたら、心臓止まりそうだが…俺は一瞬躊躇って開けた。


「血があるね。」神楽さんが言った言葉にびっくりした。


「うぉぉ、いきなり話しかけないで。タイミングが。」


「ごめんなさい。ドア開けるタイミングと被っちゃたね。」

彼女が謝ったが、俺は大丈夫と強がった。


包丁は何本かあったので、俺と彼女でそれぞれ持った。


刃渡り16㎝の包丁だ。これでゾンビを刺す。多分普通なら、顔が弱点だけど…とても顔面に刺さるとは思えない。


次は、子供部屋、もしくは寝室に行くと決めた。子供が隠れている可能性を考えた。


俺は、キッチンから出て、それから次の部屋を開けた。そこは、子供部屋の様だった。


何もいないか。すぐに扉を閉めて、次の扉に向かった。


その時カタッと音が聞こえた。誰がいるな。

その部屋に俺は向かった。神楽さんも俺にピッタリとくっついてきた。


俺はその部屋に向かい恐る恐る扉を開けようとした、その瞬間…ゾンビ! それは神楽さんが言った。


後ろを振り返るとゾンビがいた。何処にいたんだ? バスルームにいたのか? 


とりあえずこの部屋に隠れるしかない。扉を開いた…そこにもゾンビがいた… 前門の虎後門の狼 状態だ。


「都丸さん! どうしよう?」彼女が声を震わせて言う。


「神楽さん、この部屋に入って、あのゾンビを倒すしかない。」


「その時、神楽? と声がした。そしてタンスに隠れていたのだろう。1人の女性が出て来た。


「お母さん!」神楽さんがそう叫んだ。


「逃げて!」神楽さんのお母さんが、そう言いながらゾンビに立ち向かった。


その背後には、子供が2人いた。そうか…タンスにみんなで隠れていたのか。


神楽のお母さんがゾンビを押し付けたその隙に、俺は神楽さんを引っ張り、部屋に入り、扉を閉めた。


その時ゾンビが神楽のお母さんの腕を噛んだ。ああーっお母さんの悲鳴が部屋に響いた。

俺は恐怖を覚えたが、セーブ&ロードを持っているため、無謀にも、ゾンビに立ち向かった。


俺はゾンビの顔面めがけ包丁を突き刺さした。

ぐちゃっと、音が鳴った。ゾンビがピクピクしたが、やがて動かなくなった。


やったーやってやった。ゾンビを倒した高揚感が沸々と湧き上がった。


どうやら後ろにいたゾンビは、扉を開けれないらしい。


「お母さん…やだ…ゾンビになっちゃ嫌。」

神楽さんが泣きながら言った。


「望、触っちゃ駄目。望…ごめんね。私もう噛まれちゃたから、死ぬしかない。」


「嫌だ…嫌だ…嫌だ!」彼女の悲痛な叫びの前に俺は、高揚感が消え、彼女につられて涙が溢れた。


2人の子供達も泣き叫んだ。


…ゾンビを倒したのに、絶望感がこの部屋に立ち込めた。


神楽さんの表情は…悲しみで打ちひしがれていた。それを見た俺は、心が激しい痛みに襲われた。


…俺は…それを見て…ロードボタンを押した。

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