第6話 トラップ
ご飯が野菜になって以降アレックスの不機嫌さは恐ろしくて僕が話しかけられない程にまでなっていた。
「ハァ〜...。ニク、肉食いてぇ!俺腹減ったよォ」
「落ち着いてよアレックス!村を出た時にアレックス、あれだけ周り警戒しながら進もうって話したのに今警戒してるの僕だけじゃない!」
「んぁ?」
だ、ダメだ完全にアレックスがお肉を求めるゾンビのなっちゃってるよ。誰か助けて!とても僕の手に負えないよ!
いや、何弱気になってるんだ僕?アレックスがこうなってる間僕が頑張らなくっちゃ!
パンパンッ!
「よしッ!頑張ろ!!」
「す、スミス?どうしたんだ?急に」
「ううん、なんでもない。ただ、気合い入れなおそったかなって、そう思っただけ。特に気にしないでいいよ?」
「そ、そうか。まあそれならいいんだけどよ...?」
アレックスは少し不思議そうに首を傾げてたけど僕の問題だから特に何も言わないでいいよね?
そんなアレックスは放っておいて、初心を思い出しながら周りを警戒し少しの違和感でも拾えるように意識する。
でも贅沢かもしれないけど出来たらお肉が取れるような獣か魔獣が出てきてくれれば良いなぁ。
そう思いながらブツクサと腹が減ったとか言っている親友を連れて歩いていた時、
パキッ...
小さな枝を踏んだような音が左の方向からした。きっと村にいた頃の僕なら多分気のせいだろうとか言ってるけど今回ばっかりはアレックスを頼れないからね。僕がしっかりしなくちゃ!!
「アレックス!なんか左から音がしなかった!?なんか枝を踏んだみたいな」
「ん?そうか、肉が来たのか!」
「いや、違うって!危ないヤツだったらどうするのさ!早く剣の魔法発動してよ!」
アレックスには急かすように言ったけれど僕も早く罠を展開しなきゃね!
今回も前のホーンラビットの時と同じトラバサミを3つ置いて今回は新しく背後にもトラバサミを1つ置いてみた。
これは前の時に少し魔力に余裕があったからだね。前の戦闘に集中している時に後ろから奇襲されたら怖いから。まあ、一つだけのそんなに大きくもないトラバサミがそこまで役に立つのかはよく分かんないけれど。
それにしても敵は何物で何体いるんだろう?取り囲まれてたりしたら怖いなぁ。後ろもチラチラ見とこっかな?
「おいスミス!何チラチラ周りみてんだよ!前に集中しろ!」
「う、うん。ごめんよ?でも周りにも何かいたら怖いと思って」
「それはそうかも知れねぇけどよ、まずは確実にいる前を見ててくれよ!」
う、う〜ん?そんなものなのかなぁ?ものすごく気になる部分だと思うんだけど。
でもアレックスって狩人の息子だし従った方がいい、んだよね?
ガサガサという左から聞こえてくる音はどんどんと強まっていっていた。
く、来る!
「ブギッ!!!」「フゴッ!」「フゴフゴ」
草を掻き分けて出て来たのは頭からお尻まで僕の身長位はあるとても大きな猪だった。
それが三体、僕らを襲う気満々の殺意のこもった目で睨みつけてくる。
正直とても怖いよ。アレックスとか漁師のみんなはこんな奴と毎日戦って僕らにお肉を分けてくれていたんだと思うと感謝の気持ちが湧いて...、は来ないね。今は怖いっていうのと戦い前のドキドキしかないや。
「よっしゃ!いつでも来い!!」
うん、アレックスもやる気満々で前回と同じ黄色の大剣の剣先を地面すれすれの位置に構えて気持ちを盛り上げていた。
巨大イノシシ達は後ろ足を蹴り口から生えている立派な二本の牙をこっちに向けて突撃してきた。
僕の身長くらいであるはずのイノシシは凄く大きく見えて僕は少し後ずさってしまった。
「スミス!ビビるな、ビビったら負けるぞ!押し返す勢いでやれッ!」
そう言ってアレックスは僕の罠の目の前で陣取りイノシシの一匹を自分の方に誘導した。
まんまと誘導に引っかかった哀れなイノシシは僕の予めしかけてあったトラバサミに右前脚を挟まれ強制的に突進が止まってしまう。
「ブギッ!?」
「ハァァァッ!!!」
声をはりあげアレックスは大剣を逆袈裟に振り上げ鋭利な刃先を以って哀れなイノシシの首を切断した。
「スミス、大丈夫か!?」
見れば残り二体のイノシシが罠を避けて僕の方に走ってきている。
きっとアレックスの方には勝ち目がないとでも思ったのだろう。
今のところ僕、イノシシの目の前ではなんにもしてないもんね。
そう思い苦笑いをしながらも僕は数歩後退した。
イノシシ達がは通り抜けていった罠は罠魔法の射程三メートルギリギリの位置に配置していていたので僕が後退したことで射程外になり消滅してしまったが僕の後ろ側には1つ保険代わりに配置した罠があった。
僕はそれを跨いでイノシシ達の間に立ち、ついでとばかりに新しく罠を一つ、もう一匹分配置した。
「「ブギィィッ!?」」
うん、狙い通りだね。
予想通り一直線に突進してきたイノシシ達は罠を踏んでくれた。
その後ろからは必死な顔をしてこちらに走ってきているアレックスもいる。もうあとは余裕だろう。
「スミスッ!大丈夫か!?」
「うん、大丈夫だよ。どこも怪我してないよ。...ひとつお願いがあるんだけどいいかな?」
僕は一つアレックスにとあるお願いをした。
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