魔法少女、異世界探訪
辺境の都市ファルト。北の大国の玄関口にして、農耕や商業の中心チとして、栄えた町。玄関口の性質上、人間族以外の獣人や、魔族の一部の部族には門戸を開く間口の広い街として有名であった。
街の中に入ったトモは、真っ黒な家や、中華風の酒場、和風の商館、原色の激しい南米風の屋台など多国籍の店やt\文化が融合した街並みに圧倒されていた。
「すっごいねここ。統一感がない」
「まぁいろんな文化が混じる街じゃからのう。 日々変わる街並みは飽きんところじゃ。さてまずはいろいろ換金せんとのう。 貨幣がない」
「私、あの種みたいなのと枝しかないけど?」
トモの大剣は魔力で作りだしたものだ。
手元から離れると自然に消えてしまう。売りに出すと面倒が起きかねない。
「まぁドライアドの枝だけで、数年は遊んで暮らせるからだいじょうじゃろ」
「へぇーそんなにすごいんだ? あの枝」
トモは貰ったドライアドの枝を思い出す。貰った時は少しマナを秘めたただの枝に見えたが、思いのほか凄いものらしい。
二人が大通りを歩いていると、向こうから衛兵が歩いてくる。
メテオラはその衛兵に、素材屋と冒険者ギルドの場所を聞いた。
素材屋は少し、門側に戻るらしい。ギルドはこのまま真っすぐでいいそうだ。
トモたちはお礼をいい少し来た道を戻ることにした。
どうやら、悪趣味な真っ黒の家が素材屋だという。
二人は黒い家に着くと、扉を開けた。
「いらっしゃい。 随分と、やばそうなのが来たねぇ。 暴れんのは勘弁しておくれよ」
中には家と同じく真っ黒なローブを着た老婆がいた。
おとぎ話の悪い魔女といった雰囲気だ。その老婆は二人の姿を見ると何かに感づいたのか、早々に釘を刺してきたのだった。
「別に吹っ掛けられなきゃ暴れるつもりはないから安心せい」
「へ、へぇ! まぁ買いたたかれる方が悪いさね」
「確かにの! はっはっは!」
そう言って笑いだす老婆とメテオラ、どうやら癖のある人物同士なにか惹かれるものがあるらしい。トモは怪しげな老婆の雰囲気に終始、引き気味だった。
「手元の魔法石を買い取ってほしいんじゃが、これでいくらになる」
そういうとメテオラは虚空から革紐で縛った袋を取りだす。
それを老婆の前のテーブルに置くと、ごとりと重量のある音がした。
その中から老婆はいくつか石を取り出す。指でつまめる程度のその石は、銀色に光輝いていた。
それを顕微鏡のような筒を通してみる老婆は、
「どこで手に入れたかは知らんが、こんなもん2、3個買い取るだけで店が潰れるわ。 この街の大商会を紹介してやるから、そっちで取引してきな!」
「うーむそうか、面倒じゃな。 買いたたいてもいいんじゃぞ?」
「アホかい。 こんなの持ってるような連中に恨みを買うような真似できる訳ないだろう? しかも空間魔法の使い手って時点でどれほどのバケモンかわかったもんじゃない」
どうやら、メテオラはこの世界では相当な力を持つ存在のようだ。
まぁなにせ龍なんて存在だ。気さくな性格で忘れそうになるが、そんな簡単に出会う存在ではないのだろう。トモは改めて、話が分かるこの龍との出会いに感謝した。
「まぁよい。 ところでドライアドの枝は買い取れるか?」
「馬鹿いえ! それこそこんなとこじゃ無理じゃ」
「そうか……とりあえず飯が食いたいからなにか買い取ってほしいんじゃがのう……」
そういうと、トモのおなかがくぅっとなった。
確かにおなかがすいた。森の恵みばかりだったので、味の濃いものが食べたいと思った。
「其れじゃ、ただの宝石ならどうじゃ?」
「あまり買い取らんのじゃが、相場で買い取ってやるから一つだけ見せてみろ」
そういうと、メテオラはアズライトのこぶし大の原石を取り出した。
「ふむ手ごろじゃの。 同じものなら三つぐらいまで買い取ってやろう」
そういうと続けて二つ取り出す。
三つで金貨三枚だった。これで宿代5日分程度だという。
店を出る時に、老婆は紙を渡してくる。
ローハン商会という店への紹介状だった。
「それじゃ飯じゃな」
「うん。味濃いの食べたい」
「それじゃあコウサ国の辛い料理はどうじゃ? あれは肉がうまい」
「また肉かぁ……、まぁいいよ」
トモはここ数日狩った肉ばかりなので一瞬考えるが、辛いという言葉に反応した。
意外と辛い物が好きなのだ。少し気になり了承したのだった。
入り口にあった赤や緑の濃い看板の南米風の屋台がコウサ国の料理を出す様だ。
近づくと香辛料の食欲を誘う臭いがした。
どうやら、平パンに鶏肉を挟んで食べるファストフードの様だ。
二人は大盛りを頼みかじりつく。味はスパイスが利いたジャークチキンのような味だしゃきしゃきとした野菜の食感もうれしい。
トモは気に入って無心に食べる。見えないしっぽをぶんぶん振っているようで、メテオラは少し風圧を感じた。
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