お嬢様学校のウラとオモテ ~ある事情で貴族学校に転校した俺が心が病んだお嬢様方に愛される~

minachi.湊近

第1話

 今日から新しい学校で俺、飯沼 晃は新生活を送ることになる。転校先は日本でも有数のお嬢様学校として知られる聖霊学院だ。


 数か月前に父親が事業で大成功し、それまで貧相な生活を送っていた俺たち一家は一夜にして裕福な家庭へと進化したんだ。


 それを聞いたとき、俺はすごく感動したことを覚えている。まともにご飯は食べられない日々、冷暖房は無く、髪を切るのにも家でハサミで切るしかなった。


 だが今はどうだ。部屋中に新品の家具が溢れていて大好きなラノベでいっぱいの本棚が何個か。冷暖房はもちろんのこと、いつでもお菓子が食べれるように買い置きさえしてある。


 前までの生活では考えられない。俺も遂に報われる日が来たんだな、と思った。


「晃様、朝食の用意が出来ました」


「分かった。すぐ行くよ」


 もう慣れたメイドありの生活。どんな用事だって不満を言わず応えてくれる。

 まぁ、だからと言ってなんでもかんでもお願いすることはないんだけどね。


 メイドさんにも休みは必要だ。俺を主として仕えてくれている人たちには日頃から感謝するべきなのだ。


 俺は新しい制服に身を包み新鮮な気持ちで食卓のある部屋へと向かった。


「おはよう、晃」


「おはよう父さん。今日も早いね」


 食卓では普段通り父さんが食事を勧めていた。事業の大成から、立社した父さんは今では立派なグループの会長さんだ。

 朝早くから出勤してグループ内の管理をしなければならないのだろう。


 俺は父さんのことを信頼していた。


 いくら会社で失敗しても自暴自棄にならず俺たち家族を養うために働き、ここまで家庭を支えてきてくれたのだ。羨望するな、という方が難しいと思う。


「ああ、今日は朝から会議があるんだ」


「へー、頑張って」


「晃は今日から学校だよな。制服、似合ってるぞ。慣れない環境で最初は大変かもしれないけど、治安のいい学校だ。すぐに友達出来るよ」


「うん、心配してない」


 口ではこういったが俺には一つの懸念点がある。口に出すのも憚られる。自分で言ったら悲しくなるだろうから何も言わないでおこう。

 うん、きっとそれがいいさ。







「晃様、時間です」


「了解」


 珍しい時期に転校ということもあって俺は結構緊張していたりする。


「ねぇ、奏葉そよ


「どうされましたか?」


 柊 奏葉は俺の専属メイドをしており家に勤めたメイド第一号だ。勤めたとはいっても雇ったわけではなく、孤児院にいたところを父さんが引き取ったらしい。


 こんなにかわいい子が孤児院にいるなんて最初は信じられなかった。


「なんで聖学の制服着てるの?コスプレ?」


「私も晃様と一緒に通学するからですよ?」


「え、そうなの?」


 奏葉が一緒なんて聞いてないんだが?てっきり車まで連れていくために呼びに来たと思っていたのに。

 制服を着ているのには驚いた。


「晃弘様より直々に学園生活での晃様のサポート役に任命されました。学園でもよろしくお願いいたしますね。晃様」

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