第8話 朝食

「初めてまして」

天野あまの うたです」

「昨日転校してきたばかりで、まだ何もわからなくて」


「いいのよ………彼…」

「赤兎くんは今日、体調が悪くてお休みなの」

「私が代わりに案内してあげる」

「それに車の方が色々と便利でしょ?」




夜凪やなぎ 杏子きょうこの車は赤い


車種はわからないけど

悪い女が乗りそうなヤツだ


僕にこの町の事を色々と教えてくれるらしい


最近の保険の先生はそこまでしてくれるのかな?










「ほら、着いたわよ」

「朝ごはんまだでしょ?一緒に食べましょ」



最初に連行されたのは、【dolls】ってお店で

一階が本屋、二階が個室ありのカフェになっている


夜凪 杏子はよくここで朝食を取るらしい




二階のカフェ

一番奥の個室に連行され


普段朝食を取らない僕は

ホットのカフェオレだけを注文した


夜凪 杏子はブラックコーヒーとフレンチトースト




夜凪 杏子の食べ方は汚い


まるで何かをむさぼる獣のようだ





虫唾むしずが走る














『彼とのキスはどうだった?』













フレンチトーストを食べ散らかした夜凪 杏子から出た一言


僕はわかっていた


わざわざ僕を連れ出して

わざわざ個室に入ったこと


ムカつく女だ


最初からそのつもりだったんだろ?

…とは言わない








「見てたんですか?」


「よかったですよ」


「とても」


僕は逃げない


この女からは








「そう…」





「行きましょ」

「次、案内するわ」






夜凪 杏子はそう言って席を立った





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