悪魔の子と呼ばれた女の子と、神様のような旅人の話
煙管
二人は今も
むかーしむかし。
ある町に一人で悲しそうに泣いている真っ黒な髪を持った女の子がいました。
その女の子を見かけた銀色の髪と、青の瞳を持つお兄さんは、女の子に聞きました。
「なんで君は泣いているんだい?」
「…しらないひととはしゃべらない」
「それもそうだね」
お兄さんは苦笑いをして、女の子に提案をしました。
「じゃあ、僕と友達になろうよ」
「とも、だち…?」
驚いた女の子はずっと伏せていた顔をあげました。
女の子の目には宝石のように黒い瞳が輝いています。
「そう、友達。友達になれば、知らない人じゃなくなるだろう?」
「でも、ともだちのなりかた、わからない」
女の子はまた顔を下に向けて、泣き始めてしまいました。
「ああ、泣かないで。大丈夫、お兄さんは知ってるから」
「ほんとに…?」
お兄さんは優しく女の子を抱き上げ、歩き始めました。
「どこにいくの…?」
女の子は怯えた様子でお兄さんに聞きました。
「この街の外にある、きれいな花畑」
「はなばたけ?」
「そう、お花がいっぱいあるところ」
ボロボロの女の子を抱きかかえたお兄さんは、街から出て、花畑に向かいます。
「僕の名前はサヴァルド」
「さわるど?」
女の子は言いにくいようで、さわるど、やらしゃゔぁるどなどと練習をしています。
「言いにくいなら、ルドでいいよ」
「るど!」
にぱっと女の子はお兄さんに始めて笑顔を向けました。
つられたように、お兄さん…いえ、サヴァルドも笑いました。
「そう、ルド。君の名前は?」
「なまえ…ない」
女の子は俯きました。
幼いときは両親に呼ばれていたような気がしますが、長らく呼ばれていないせいで思い出せません。
「そっか、なら僕がつけてもいい?」
「いいけど…」
「やった。いい名前をつけれるよう頑張るね」
にこーっと笑うサヴァルドは、一つ名前を考えては、女の子に言ってみました。
「リリー」
「?」
「アイラ」
「??」
「ルーナ」
「???」
ですが女の子は何故言ってくるのか分からず、困っていました。
「なんで、わたしにいうの?」
「だって、君の名前でしょ?」
サヴァルドは返します。
「君の名前なんだから、君が気に入ったのをつけないと」
サヴァルドは足を止め、女の子に問いかけます。
「君は名前に入れてほしい言葉とかある?」
「ことば…」
そう言われると、あるような、ないような気がしました。
「あ」
「なにかあった?」
「みあ」
「ミア?ミア、ね…」
サヴァルドはブツブツと考え出します。
「ミア…ミアレイア、なんてどう?」
「みあれいあ…」
女の子その名前が気に入ったようで、みあれいあ、と繰り返しています。
「僕はミアって呼ばせてもらうね」
「うん…うん、るど!」
「おっと」
女の子…ミアレイアは、サヴァルドの首に抱きつきました。
「ありがとう、るど!」
「いいえ、どういたしまして、ミア」
花畑についた二人は、倒木に腰掛け、楽しそうに話をしました。
ミアレイアは町のこと、サヴァルドは自分は旅人だということ、旅をしてきた街のことを話しました。
「ねえ、ミア」
「なあに?ルド」
「もし君が良ければ、僕の旅に着いてこないかい?」
「いいの?」
「勿論さ!」
ミアレイアを抱き上げたサヴァルドは、ミアレイアの髪に優しくキスをしました。
「それとも、君はあの町に居たいかい」
「やだ!ルドといっしょがいい!」
ミアレイアはサヴァルドの首にギュッと抱きつき首を振りました。
「ふふ、じゃあまずは隣町に行って、ミアの服とか旅道具を揃えようか」
「うん!」
そう言ってミアレイアを抱き上げたサヴァルドは、隣町までゆっくり歩き出しました。
いいえ、これで終わりではありません。
時代は変わって今の話。
今も二人は…いえ、成長したミアレイアと、当時と変わらない様子のサヴァルドは、どこかで旅をしているとか、していないとか。
「ふふ、私、ルドに会えてよかった」
「そう思ってくれて嬉しいよ、ミア」
悪魔の子と呼ばれた女の子と、神様のような旅人の話 煙管 @EMMA14
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