1999年の夏の話。

Rotten flower

第1話

「私達は神に見放されたのだろうか。」

彼女は屋上でそう話した。とくに何の感情も出さずに。

「さぁ、どうなんだろうな。」

少し笑いながら僕は言った。大予言なんて信用できないのに。

僕は下を見て嗤った。その後、少しの沈黙ができたかと思うと風に飛ばされたかのように彼女は口を開いた。

「君は今の世界に満足できるのか。」

「満足はできないが終わるとしたらそれで区切りでいいかな。」

「あ、そう。」

また沈黙が訪れた。なぜだろうか。こういう沈黙が体を凍らせるように感じるのは。そして、彼女との沈黙は普段よりも強力なのは。

「君は諦めが速いんだね。」

「別に諦めってわけでもないし、世界が崩壊するなんてわかってないんだから。まだ諦めるという日本語はあってないと思う。」

「あーあ、君も結局は文学少年だ。別に文学少年だからって批判してるわけじゃない。でも、あの部活に入ってる文学少年は別物だ。」

「君もじゃないか。同じ部活に入ってるんだから。」

「まぁね。」

僕らは図書収納室を見ると、彼女はくすりと笑った。

「また君はあの部屋を見る。あの部活が好きなんだね。」


「まぁ、構わないさ。何をするにも君の自由だ。でも、あからさまに見るのは少し違うと思うな。」


「冬までの人生なんだし好きなことしな。最後の日には自由だ。」

「もしそれまでで終わらなかったらどうするんだ。」

僕は彼女にそう問いかけた。

「どちらにしろ君は安静に過ごすだろう。何、自由を命令するわけでもない。まぁ、自由を自由にされるなんて意味の分からないし、それこそ不自由だろう。」


時計がチャイムを指す二分程前になると僕らは教室へと帰っていった。

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1999年の夏の話。 Rotten flower @Rotten_flower

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