第6話 依頼
依頼BOXとなるものを超能力部の前に置いて2日後。そんなに無いものの、多少の依頼が来ていた。
…だが。
「『体育館の掃除を手伝って欲しい…』自分達でやれ…『将棋のやり方を教えてください!』知るか自分で調べやがれ」
「『好きな人がいるんですがどう告白すればいいですか?』……そもそも名前書いてないからどう送ればいいのか…」
結構難航していた。
というものの、ほとんどが私たちが動かなくても出来るでしょ?と言ったものが多く、そもそも名前を書く欄に名前を書いてなかったりと問題が多かった。
これを見て香蔵さんは「あはは…」と苦笑いした。
「これは酷いね…」
「そもそも、部が嫌われてるのでは?」
「まぁ…オカ研とかとは違ってほんとに厨二病が集まった……みたいな感じで見られちゃってるからね…あはは…」
「笑い事じゃないからね?」
香蔵さんがまたも苦笑いをすると、狸吉さんが頭をコツンと空手チョップする。
だが、成果を見せなければならない。
「ん〜どうしようか?」
「…」
鬼円がこめかみに青筋を立てるものの、鶴愛さんに「ステイ、ステイ」と言われてそのまま座っていた。
すると、香蔵さんが立ち上がった。
「どうしたんですか?」
「ん〜?さっきから扉の前にいる少年が気になってね」
扉の前の少年…?
香蔵さんはそう言うやいなや扉の方へと歩いていき、ガラガラっと扉を開けた。
すると、香蔵さんの言う通りに扉の前には私よりも背が小さい青年が立っていた。
青年は、急いでその場から離れようとするも、香蔵さんに腕を掴まれて動けなくなっていた。
「あ、あの!?」
「まぁいいからいいから、中入りな?」
半ば強制的に部屋へと招き入れられた青年はそのまま立っていた。
「えっと…何か?」
「あ、あの…ここって、なんでも解決してくれるんですか?」
「ええっと…まぁね」
狸吉さんが頷く。すると、青年は顔を上げて狸吉に近づいた。
「お願いしたいことが!!」
「ち、近い近い!分かったから座りなよ!」
狸吉さんがそう言うと、青年は「すみません」と謝りながらソファに座った。
もちろん、鬼円は立ってすぐ側の壁に背を預けたまま話を聞く体制を取っていた。
「名前を聞いていいかな?」
「…1年B組の
暁琉君はモジモジしながらも声を上げる。
「その、依頼なんだけど…お姉ちゃんを見つけて欲しいって言うか……」
お姉ちゃん?見つけて欲しい?
「お姉ちゃん?」
「お姉ちゃん…あ、
そのまま下を俯く暁琉君。私は気になって暁琉君の隣に座る。
「どうしたの?」
「……お姉ちゃんが、急にいなくなって…」
……え、事件じゃん。
「え、えっと……お姉ちゃんからメッセージとかは?」
「…3日前に送られてきただけで…途絶えちゃって…」
「……そのメッセージってどんな内容かな?」
暁琉君は目を潤わせながら、携帯を取りだして私たちに見せてくれた。
『友達と遊びに行ってくるね〜!』
『大丈夫!学校には行くから!』
そう書いてあり、そこで完全に途絶えている。それを見て鬼円が顔を強ばらせる。
私は暁琉君の手を掴んであげる。
「親は…1週間ぐらいで帰ってくるよって…でも、何かあったらって思うと……」
「…偉いね。お姉ちゃんのこと心配して」
香蔵さんがポンっと頭に手を置き、そのままわしゃわしゃと撫でる。
暁琉君は耐えきれなくなったのか、涙目になってしまった。
「もちろん、引き受けるよ!皆!」
「あぁ」
「うん!」
私も一緒に、力強く頷く。
◇◆◇
暁琉君が帰った後、私と香蔵さん、そして鬼円と狸吉さんはその場に残った。
そして、顔を見合せた。
「確実嘘だね」
「あぁ……怪しすぎる」
私でも分かった。怪しすぎる。
『友達と遊びに行ってくるね〜!』
『大丈夫!学校には行くから!』
友達と遊びに行くだけで3日間も帰ってこない。これは人にもよるが、普通はそんなに経たないはず。
そして、なにより…大丈夫の部分。
「なんでわざわざご丁寧に…
「うん。引っかかるよね…」
鬼円の言葉に頷く。
香蔵さんが手を顎に当てて考え込む……が、数秒した後に頭を傾げてしまった。
「?? どゆこと?」
「……なんでこんな時に限ってそのバカ頭発動するんすか」
「ば、バカ頭!?」
「あぁ…これはね……」
狸吉さん曰く…
勉強はギリギリ出来るほどの頭…それよりもちょっと低いらしく、謎解きなども殆ど間違えてしまうような頭らしい。
そして何より、こう言う難しい…難しい?問題に直面すると頭を傾げてしまうらしいのだ。
「……香蔵さん…」
「は、春ちゃん、そんな顔で……そんな可哀想な人みたいな顔で見ないでおくれ…」
香蔵さんが心臓の当たりを抑えて言う。
「とにかく、この問題は解決するよ」
「はい!」
私は大きく声を張り上げた。
香蔵さんも狸吉さんも、鬼円もその声で固まる。
……ん?私なんかした!?
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