幕間.いくつになっても姉には敵わない
ミヤバ視点になります。
時系列はchap.6の最後、メルミーツェたちが怨弩の浄化に向かっている間になります。
ミヤバの一人称や話し方が変わっていますが、サーシスと話すときは昔の口調に戻りっています、どちらか言うと当話の方が彼女の素です。
※ep4-1参照
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■後神暦 1325年 / 夏の月 / 黄昏の日 am 09:30
――メルミーツェが目覚めた島 森林地帯
「それにしても凄いです姉様、もう住居が建ち始めているのね」
「えぇ、これも猫姫の協力のお陰でございます。それに犬人族や妖精族の方々も我々に忌避感を持たず助力してくださっています」
姉様が仰るように此処に住む他種族は
初めこそ驚いていたようですが、ミーちゃんが説明するとすんなりと受け入れてくれたと言っていましたね。
「猫姫は出発されたのでございますか?」
「はい、先刻屋敷を出られました。此度はユウカクと一緒に聖女様の護衛を務められるそうです」
怨弩の浄化……初めは国の為になればとウカノに相談をしましたが、ミーちゃんが来てくれたことで我が家の問題から姉様たちとの未来まで解決したとは、なんと良縁に恵まれたことか。
加えて聖女様の協力も得られたことで、ヨウキョウで非道な行いをした者たちを追い詰める一助にもなっている、本当に有難いことです。
「猫姫には負担をかけてしまって申し訳がないですね、まだクレハより少し年上程度の年齢でございましょう?」
「そうですね、ミーちゃんは大人だと言い張っていますが……ふふ」
此度の件、
私やユウカクは過去の悪政が招いた事だと、それを正すことで弔いにすることが出来ますが、何の因果もないあの子に
それでも
それが私たちがあの子にできる罪滅ぼしなのだから。
「伯母様! ミー姉様が出発前にコレを預けてくださいました!」
「義伯母様! あーしが運ぶから見晴らしの良いとこに建ててあげようよ!」
クレハたちもこちらに来たようですね。
やはり私の見立て通り、花好きの姉様とすっかり仲良くなって嬉しい限りです。
しかしレイカク、私はまだクレハの婚姻を認めていませんよ。
「これは何でございますか?」
「墓石です、ミー姉様がカルミア兄様のためにとコツコツと彫っていました」
「しかし……」
「姉様、カルミアは姉様と共に在りますが、想いの
「……左様にございますね、深謝します。ではレイカクお願いしてもよろしゅうございますか?」
「もちろんだよ、義伯母様!!」
だから私はまだ婚姻を認めていませんよ!!
最近では私をお義母様と呼びだすし、ユウカク共々気を揉んでいると言うのに……
眉間を押さえていると、こちらを見ていらっしゃる姉様が口を淡々と仰る。
「……ミヤバ、貴女が考えていることは分かりますよ。
我が子を愛することはとても良いことございます、しかし、子を独占しようとするのは褒められることではございません」
「姉様、私はそんなこと……」
「クレハからも聞きましたが、最近まであの子の話をきちんと聞いてあげてなかったそうではございませんか。良いですか? 貴女は母になったのでございますよ、もちろん、甘やかしてばかりではいけません、しかしそれは会話を疎かにして良い理由にはならないのでございますよ」
「それには理由が……」
「言い訳は結構でございます。
ユウカクもそうでございましたが、貴女たちは昔から短所が変っておりません。
二人とも立派に成長したことは認めます、大変な努力の賜物でございましょう。
しかし、誰しもが貴女の考えを察してくれるワケではないことを知り、想いを伝えるよう貴女が努めなくてはなりません。
ユウカクも勇ましいことは良い事でございますが、先日は夫を蹴り飛ばしておりました、
「姉様っ!! ごめんなさい!! 反省しています、だから子供の前でこれ以上は赦してください!!」
「んんっ……確かにその通りでございますね」
あぁ……クレハ、そんな目で私を見ないでください。
レイカクは背筋が伸びていますね、察しが良いのは認めます。
普段の姉様はとても優しく淑やかですが、昔からお説教をする姿は本当に恐ろしいです。
子供たちもほら、えっと何でしたか、そうそう、ドン引きしてるじゃないですか……
「それでは参りましょうか、カルミアが好きそうな景色の場所が
「「「はいっ!」」」
いくつになっても姉様には敵いません……
ユウカク、貴女も戻ってきたらきっとお説教されますよ、覚悟しておくと良いです。
少しだけ緊張感のある中、私たちはカルミアのお墓を建てに姉様に続いた。
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【KAC20244】企画の短編『ささくれ』で、ウカノとミヤバの争いについてのショートを公開しています。良かったら覗いてみてください。
https://kakuyomu.jp/works/16818093073492111912/episodes/16818093073492116558
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