chap.2 妖精の花畑
ep1.新天地! そして…
■後神暦 1323年 / 秋の月 / 天の日 am 09:15
「ヨーホー♪ ヨーホー♪ 離島暮らし~♪」
歌のテンポに合わない速度で湖をカヤックで猛進中。
出発前は不安ではあったが晴天と心地良い風にすっかり上機嫌になる。
拠点へのポータルになる扉を出せるようになってから約半年。
たくさん検証もできたし探索もできた。
まず、部隊編成について新しく判ったことは…
・セットしたキャラクターのメリット・デメリット両方が反映される。
・スキルはゲーム仕様と同様にアクティブとパッシブの2種類ある。
・キャラクターが使っている武器種を持っていないと関連するスキルが使えない。
・アクティブスキルは使用するとリキャストタイムが発生する。
武器は恐らく形状や大きさで判断されるようだ。
例えば1m前後の木の棒は斬ることができなくても”剣”として認識される。
でも長さが足りないのか”槍”としては認識されないし、斬れなくてもハンマーのように打撃武器扱いもされない。
スキルリキャストは前世で毎日プレイしていただけあって、感覚を掴むのに苦労はしなかった。
次に探索…全域ではないけれど、ある程度は見て回ったつもり。
・今までいた場所は恐らく湖の中にある無人島。外海だと思っていたことろも淡水だったので仮説は正しいと思う。
・ウサギもどきのみたいに大体の動物のサイズがバグってる。
・季節のめぐりはあるけれどサイクルが僕が持ってる常識と違う、四半期くらいで四季が一周する。
山岳地帯でバケモノ鳥に襲われたときは本当に死ぬかと思ったよね…
草原と森って安全だったとあのとき知ったよ。
でもバケモノ動物は何故か体内にアストライトを持っていた。
食料問題とエネルギー問題がいっぺんに解消できたのは本当にありがたかった。
・しゃがまないといけないような狭い場所ではポータルは出せない。
・ポータルの先は拠点の「どこ」に繋げるかイメージできれば繋ぐことができる。
・拠点から出る時は最後に拠点に入った場所から出ることになる。
・テントのペグくらいのサイズのピンが階層の数と同じ35本あり、拠点外でピンを刺した場所に恒久的にポータルが出現させることができる。
・ピンを刺して出したポータルの繋げる先は指定できる。
ゲームではエピソードをクリアしたときにピンが刺さる演出があったけど、あのピンってそういう設定があったんだね。
お陰でもしも不測の事態が起きてもポータルで拠点に逃げられる。
保険ができたので、思い切って湖の外側まで行ってピンを立てようと考え現在に至る。
「島の外も無人なんてことはさすがにないよね」
人が居たとして、友好的なのか? 文化レベルはどれくらいか?
不安要素はたくさんあるけど、そこを押してでも欲しいものがある。
それは野菜の苗…!!
拠点のおかげで文化的な生活ができるようになったけど、製造所は植物を作れないみたいで野菜は森で取るしかなくて食事が偏るんだよね…
人と関わるのはまだ怖いけど、ほぼ肉食の食生活って健康的にも食の潤い的にも問題あるし絶対に改善したい。
「好戦的な相手だったらすぐ逃げてやるからな。
ふふ、ビビりを舐めるなよ…」
斜め上の決意を固めているとガクンと前方に勢い良く引っ張られる。
慌ててパドルを逆方向に漕ぐが…
「うそ!? 流される…!! どうしよう…」
落ち着け、落ち着け…
速度もどんどん上がっていくし操作もきかないけど進行方向に進んでる。
怖いは怖いけど冷静になれ…まず深呼吸だ。
「よし、このまま流れに任せて進もう…!」
かなりの時間流された。
、必死にバランスをとっていると、段々と流れも緩やかになり速度も落ちていく。
「こ、怖かった…」
不測の事態から解放された安堵からしばらく放心し、対岸に向けてパドルを漕ぎ始めた。
~ ~ ~ ~ ~ ~
■後神暦 1323年 / 秋の月 / 天の日 am 11:35
「やったー!! 陸地だぁぁぁぁっ!!!!」
やっぱり地に足つくのは安心するなぁ、でも…
「また森かぁ…」
森での狩猟生活を経て、ようやく島の外にたどり着いたと思ったらまた森、自然豊かで大変結構ですね。
さて…サイズのおかしい熊とか虎とかは勘弁してよ? 怖すぎる。
僕は今、気配遮断の
とは言え、こちらから攻撃をすると数秒ステルスが剥がれることはゲームの仕様と同じなのは検証済み。
だから先制攻撃ダメ絶対。
――森の探索を初めてから数時間
「おかしい …」
もどき動物を一度も見かけない。
危険がないことは良いことなんだけど、こうもサイズが普通だと何か起きるフラグになりそうで不安だよ。
さっきの子連れイノシシ可愛かったし、そこのリスだって……ん?
木を登るリスを目で追っていくと、大きさがリスくらいのどう見ても人の下半身が足をバタバタを動かしている。
今度は小さい方にサイズがバグるのかぁ……これって穴にはまってるのかな?
穴にはまった人(?)を掴みゆっくり引っ張ていく。
……が、水色の髪と背中が見えてきたところで手が止まる。
半透明で角度によって見える色が変わる蝶のような羽が生えてる。
驚きはしたけれど、よく考えたら自分も人外だしな、と思い至り穴にはまった妖精(多分)を引き抜いた。
almAは見えるだろうけど僕は見えないはずだから、このままどこかに行ってくれるまで動かないでおこう。
こっそりついていって集落とかあれば友好的に接してもらえそうか確認してそれから~…――
そんなことを考えていると、水色の妖精が僕の前に飛んできた。
「*****」
え? 話しかけてきた!? 見えてるの!? それ以前に何語!!?
「ねぇ、もしかして僕のこと見えてるの?」
「**、*****」
何言ってるかわかんない、どうしようalmA…
――!?
almAの警告音が響く……もどき動物か?
でも今は半年の探索生活で得た元素値で作った銃がある……正面からでも対処できるよ。
ウサギもどきでもイノシシもどきでもかかって……ってあれ?
「熊? 大きさも普通だし、熊もどきじゃないよね、たぶん」
いや、以前なら熊でも十分怖かったけど、もどき動物ばかり見てると熊も小さく見えるよ。
「almA」
almAのガトリングに合わせ、構えた狩猟ライフルのスラッグ弾を撃ち込むとあっさりと熊は倒れた。
拍子抜けだ。
「一応解体しておこうかな…」
熊って食べたことないけどクセが強いって聞くよね。
でもまぁイノシシもどきもそんなにクセなかったし大丈夫かな?
編成を切り替える為、
妖精が画面に割って入る。
「*****!」
やっぱり何言ってるかわかんない、どうしようalmA…
僕は浮かぶ多面体へ助けを求める、答えは返ってこない。
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