クリエイター(映画)の感想

中埜長治

ネタバレしかありません

ギャレス・エドワーズはイギリス人で、BBCで核戦争関係の再現映像を撮ってたとかいう監督で、初の映画は「モンスターズ/地球外生命体」、日本では9年ぶりにゴジラの新作を撮った時に有名になり、スターウォーズのスピンオフ「ローグワン」を撮って、今回、「クリエイター 創造者」を撮った。そんな感じの人です。Wikipedia見ずに覚えてる限りで書いた。なんで情報確認しないかといえば、この前提状態でクリエイターを見た感想なので答え合わせをする気はない。


モンスターズ、ゴジラ、ローグワンの共通点は1組の男女が、致死的な環境に置かれてもがき、2人で映画の最後を迎えるというもの。

モンスターズの主役2人とゴジラのブロディ夫妻はなんやかんや生還できたがローグワンは生還できなかった。

3つのうち2つが生還なら、ローグワンは“本編”であるルーク一向に希望を渡すために死ぬしかなかったから運命として殺したのかと思ったんですね。


クリエイターで「ああ。本当は2人で最期を迎える方が美しいと思ってんなこのライミー」とわかってしまいましたよね。


クリエイターは人工知能の映画ですが、人工知能が物凄い速さで発達し、シンギュラリティは「フィルム撮影の時代」に過ぎ去った架空の地球が舞台です。そういう演出なのか判断が難しいところですが、フライデー(宇宙家族ロビンソン)より少し前くらいのデザインのロボットが家庭に普及していたような描写があります。


なので、ロボットたちがガンガン感情を露わにしてくっちゃべるので、SFSFした物を期待すると肩透かしを喰らいますが、30代後半以上の映画好きなら多分彼らを見ても「初めて会った」とは思わないでしょう。


なぜなら見た目を人間風にしてないロボットはデザインから思考法に喋り方まで完全にスターウォーズEP1から出てきた手足の細いドロイドそのものだからです。初期のものはチャッピー(ニール・ブロムカンプ監督作)に似てます。


そしてアメリカが1000兆ドルかけて作ったという「AIの絶望」を体現する空中要塞など、デザインはローグワン終盤のシールド発生要塞、動く姿はスターデストロイヤー、遠距離からミサイル落として大爆発と死を振り撒く姿はデススター。


なんのことはありません。ギャレスは己がスターウォーズで好きだった物をこの地球を舞台に再現しやがったのであります。


そして悪の銀河帝国の役は最悪なことに我らがアメリカ合衆国です。治安維持を名目に他所の国まで死の要塞を飛ばしてAIごと地域住民を抹殺するまさに圧政者。


今時ならそういうことをするのはロシアだろ中国だろ、星条旗がそんなことするわけないじゃないか。


本当にそうかえ?アメリカはそんなことしない?


AIを国レベルで匿ってるのがニューエイジアという架空の巨大国家群で、主な舞台はラオス〜インドシナ半島にかけてになります。

アメリカ兵がAIの隠れ場所を教えやがれと東南アジアで村襲って火をつける様はどっかで見覚えのある様ですね。


ギャレス・エドワーズ、ゴジラの時も核兵器をムートーの卵まみれにしたり結局ムートーとの決着になんの貢献もせずいたずらにアメリカ国民を殺戮しかねない無用の長物として描いてるようにかなりアメリカの保守層に喧嘩を売った構成を平気でやってきます。


反米がメインではなく、ただ彼が描く希望をつなぐ物語においてアメリカは、金持ちで技術力があって前科がある、彼の思い出の銀河帝国の役が担える便利なポジションにいるだけなんではありますが。


そのせいか、映画の中身のギミックはルーカスフィルムが協力すればいいんじゃねえのというほどスターウォーズ臭さでいっぱいですが、配給はディズニーじゃありません。当たり前だのクラッカー。パールハーバー撮るような保守で有名なディズニーがこんな映画に金出すわけねえだろうと。


なので、スターウォーズのドロイドどもは、このクリエイターの舞台になった地球のようなところで生まれたのかもしれないな、という感慨に浸れる素敵な映画でした。

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クリエイター(映画)の感想 中埜長治 @borisbadenov85

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