第2話 スキンシップが激しすぎる件
「昔々……この世界は魔物に支配されていました。人間たちは毎日魔物に怯えながら暮らしていました。哀れんだ女神【アイリーン】は、人間たちに【スキル】を授けました……」
セリスの膝の上で、本を読んでもらう。
子ども向けに書かれた、【世界の始まり】と呼ばれる世界史の教科書。
「むう……アルバート様、ちゃんと聞いてますか?」
「ごめん。ちょっとぼうっとしてた」
「真面目にお勉強しないと【めっ】ですよっ!」
俺が集中できないのは理由がある。
背中に当たりまくる、セリスの大きな胸のせいだ……
「じゃあ……続きを読みますね」
耳にふうっと暖かい息がかかる。
ぴったりとセリスが、俺の背中にくっついている。
「スキルは魔物と戦うための異能です。ただし、誰でも授かることはできません。女神アイリーンは、女性にのみスキルを授けたのです……」
「男はスキルをもらえないの?」
「【希少種】はスキルをもらえません。スキルを使って魔物と戦えるのは、女だけです」
この世界では、男は【希少種】と呼ばれる。
少しややこしいが……この世界で【人間】は、【女】だけを指す。
男は【希少種】として、【人間】より上位の、尊い種族だとされている。
「続きです……古代の四聖女たちは、女に【希少種】を守る役目を与えました。女にとって男を守るのは、最高の名誉なのです」
「大変だね、女の人って」
「いいえっ! 女にとって【希少種】のために尽くすのが最高の幸せですっ! かわいいアルバート様のためなら何でもしますっ……!」
ぎゅうと後ろから抱きしめられて。
胸が強く押しつけられる……
これはいろいろヤバいって……!
「はい。続きです。……人間は10歳になれば、スキルが発現します。どのスキルを得るかで、人間の一生は大きく左右されます」
「セリスのスキルは何?」
「私のスキルは【ヒーラー】です。回復魔法を得意にしてしてます」
「いいなあ……僕もスキルがほしいよ」
「残念ですけど、【希少種】(男)のアルバート様は、スキルを授かることができません」
男はスキルを得られないから、女に守られる。
そして、男の数は極端に少ない。
だからこの世界の男たちは、女に養ってもらいながら暮らしている。
「……女神アイリーンに感謝を捧げる【女神祭】で、スキルを授かる儀式が行われます。そこで10歳の女の子が、スキルを聖女様から授かるのです」
「女神祭っていつやるの?」
「1週間後ですね」
「なら、ぼくの誕生日と同じ日だね」
「アルバート様は女神祭と同じ日に生まれた【希少種】……きっと特別な子なんだと思いますよ」
あと1週間で、この世界で俺は10歳になる。
ちなみに【希少種】が10歳になると……
「10歳になったら、アルバート様は【奴隷】を所有できます。素敵な奴隷を選んでくださいね」
奴隷を選べと言われてもな……
別にほしいと思わないし。
「はいっ! お勉強はおしまいですっ! おやつの時間にしましょう!」
「ふう。終わった……」
セリスの膝から降りようとすると、
「あ、ダメですっ! ここで食べてください」
「でも、セリスの膝の上だし……」
「大丈夫です。私が食べさせてあけます♡」
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