陰キャの私でも魔法少女になれますか?
烏丸ウィリアム
第1話 セイントガール
私は今日もテレビに張り付き、アニメを見ていた。
「やっぱ可愛いし、カッコいいし、魔法少女最高〜」
「うへうへへ……」
正直、自分はキモオタだと思う。黒のメガネってオタクっぽいかな? だけど、コンタクトなんて無理無理。目が乾くのも耐えられないし、視力が悪いからメガネを外せないし。
「これ見てると、嫌なこと忘れられる〜」
これが人生の安らぎになるのだ。明日からまた学校。それに耐えるにはアニメを見るしかない。それに、ちゃんと登校してるだけ偉い。
「だけど……私もこんな風に活躍したいな……」
そんな空想を描きながら布団に飛び込む。無理だと分かってるけど、夢を見たいものなのだ。
『君、黒井琴音ちゃん』
何か聞こえた……。疲れてるみたいだ。早く寝よう。
『ねえ、聞いてる?』
私……? 私を呼んでる? 私は体を起こした。周りを見渡すが誰もいるわけはない。
「やっぱ疲れてるんだ……」
そのまま布団に潜り込み、寝ようとする。
「コラー! ちゃんと答えて!」
「うわぁ!」
謎の声の主は、白い猫のような生き物。浮遊している。
「黒井琴音ちゃんで合ってる?」
「そ、そうですけど……」
この猫のような生き物が私の名前を知っていることに驚きを隠せない。ストーカー!?
「な、なんで知ってるんですか?」
「それはねー」
猫はクルッと一回転した。
「僕はヴァイス。魔法少女になってくれる人を探してるんだ」
「ええー!」
「君は魔法少女に選ばれたんだよ」
どうして私なんかが……? もしかしたら私には隠れた才能が?
「あの……、どうして私が選ばれたんですか?」
「抽選だよ」
ガーン! そんなので決まるの?
「私……、無能……、ですか?」
「いやいや、初めてみないと分からないよ」
「もうやだ……」
「もう、面倒くさいなぁ、君って」
ヴァイスはため息をついた。
「これあげるからさ」
ブレスレットとステッキが差し出された。魔法少女のアニメではよくあるやつだ。どちらも黒を基調としたシックなデザインだ。
「これ付けて」
私は言われるがままにブレスレットを付け、ステッキを持った。
「僕に続けてこう言ってみて」
「はい」
「光の戦士! 変身!」
「ひかりのせんし、へんしん」
何これ? 恥ずかしくない?
「セイント☆ブラック!」
「せいんとぶらっく」
光が私を包み込んだ。魔法少女の衣装に変身している! 変身が終わり、自分の服装を見る。
「ちょ、ちょっと! この衣装なんですか!」
意外と露出が多くて困る。ヒラヒラした服装は普段は着ないので落ち着かない。しかも、私が想像する魔法少女という感じではなく、黒だった。あまりテンションの上がるものではない。
「これは規定だから、変えられないよ。魔法少女の正装さ」
「ええー!」
でも、魔法少女になれたんだ! ちょっと嬉しいかも……。
「これで君も魔法少女だ。僕は君のパートナーだよ」
ヴァイスは嬉しそうだ。私も思わず顔がほころぶ。
「まあ、私もちょっと嬉しいかも……」
「この通信装置も渡しておくから。本部と連絡できるよ」
「本部?」
「魔法少女司令部ってところがあって、そこが魔法少女たちをまとめてるんだよ」
「へえ」
魔法少女にも色々あるんだ。ちゃんとした司令部があるなんて知らなかった。
「それじゃあ、今日は寝ようか」
「え? ヴァイスはどうするの?」
「君とずっと一緒にいるよ?」
「無理。キモい。寝る時くらい離れてよね……」
「しょうがないな……」
ヴァイスは不満そうに呟いた。そして、壁をすり抜けてどこかに行った。
「それじゃ、おやすみー」
私は布団に潜り込んだ。初めての変身と、初めての魔法少女。ワクワクが止まらない。夢みたいだ……。
「ねえ、変身ってどうやって解くの?」
「分からない」
先行き不安である。
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