驕れるチート、永からず

柴犬美紅

第0話 中間管理職の経緯

 転生者は必ず神から相応の恩恵を持ってその世界へと転生する。

 そこでどう生きるか、どう立ち回るか、それは彼ら次第となる。

 ところがあまりにも増えすぎた転生者とそのチート能力が別の厄災を生み出し、生態系や秩序、根幹が崩れる世界が増え始めた。

 その最たる厄災が、一つの秀でた力が神の手に余るところまで到達し、転生者こそが神であると祀られ始めたことだ。これの何が悪いと言えば、元いた神々は人からの信仰を失い、世界を保つ力を失う。つまるところ滅びへと向かうという本末転倒な結末になる。

 何せ転生者には、世界を創造する、保つといった力はないのだから。

 解決する方法は転生者から力を奪うか神の手が加えられる程度に弱めるかのどちらかだった。

 神々の説得に応じて弱められたのはごく一部だけで、無限スキル、最強スキルに分類される能力を持つ者は逆に神を己の眷属にしようと攻撃を仕掛けてきた。

 このままでは、意に介さぬ破滅が訪れる。神々は悩んだ。


 そんな時だ。

 転生適性を持つ人間が、必ずしもチート能力を持って異世界転生したいと希望する訳じゃないことを知ったのは。


「提案なんですけど、私らがそのチート能力を回収するって言う役割を担うってのはどうですか?」


「その代わり、ここら辺でダラダラ過ごさせてもらう権利を主張します。」


 とある事情で死んで現れた2人の少女が持ちかけた交渉は、異世界の神々を大いに喜ばせた。


 利害が一致した異世界の片隅にて、転生者によりバランスが崩壊した異世界を正すための、チート能力の弱体兼回収係が生まれた。

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