第15話 エンケラドス②
ムンディルの周りにいる兵士たちが、一斉にルセネール達に向かって小銃を乱射する。
「ガーロンさん、下がってください!」
ガーロンがルセネールの後ろに下がると、ルセネールは【完全障壁】を前方に展開し、その銃弾の雨を受け止める!
指令デッキに開いた穴まで来たバイタラニーが、その銃を乱射する兵士たちを鞭で斬り刻んでいく。
「王妃! 大丈夫でございますかっ?」
「ありがとう。バイタラニーさん」
ルセネールが前を振り返ると、バイタラニーに倒された兵士たちが床に積み上がっているが、そこにムンディルの姿は無かった。
ー逃げた!? まさか……
ルセネールは前に向かって駆け出すと、再びエンケラドスが大きく揺れて、ルセネールが態勢を崩す。
「王妃!」
ガーロンとバイタラニーが慌ててルセネールに駆け寄る。
ルセネールはすぐに立ち上がると、2人に言う。
「この艦の艦長が逃げたようです。すぐに追いかけてください!」
「御意!」
「承知致しましたわ!」
ルセネールは更に念話でアヘロンタスに呼びかける。
(アヘロンタス。ムンディルが逃げたようです。他の
(はい。ギョヌ! ヒイアカ! 聞こえたか? すぐに探しだせ!)
(畏まりました)
(了解です! 見つけたら殺してもいいんですか?)
ルセネールが念話で答える。
(殺してはいけません! 彼には話があります。足止めだけお願いします)
(分かりました! 王妃!)
ルセネール達は指令デッキを出て、ムンディルが降りたであろう階段を駆け降りていった。
すると、兵士が3人乗った
「ムンディル!」
ムンディルはルセネールの方に一瞬振り返ったが、すぐに魔導挺に乗る兵士に叫ぶ。
「何をしている! 早く出せっ!」
魔導挺の前の格納扉が開き、魔導挺が浮かんだ。
ムンディルが再び、ルセネールの方に振り返る。
「ルセネール! …、化け物どもっ! これで我が帝国軍に勝ったと思うなよっ!」
パァン! パァン!……
格納扉の方から銃声が聞こえた。
そこには二丁の拳銃を構えたギョヌが
「化け物とは…、随分な言い方だな…。人間風情が」
ギョヌの銃弾に撃ち抜かれ、ムンディルの乗る魔導挺は浮き上がる力を失い、3人の兵士の眉間にも銃痕が出来ていた。
ムンディルが歯ぎしりをしながら、ルセネールを睨み付ける。
ルセネールはフワリとその魔導挺の後ろに降り立った。
そしてムンディルに尋ねる。
「もうこの
ルセネールが話し終わる前にムンディルはサーベルを抜き、ルセネールに斬りかかったが、そのサーベルに一瞬にして棘のついた鞭が巻きついていた。
「…王妃が話されてる最中に斬りかかるなど…。下劣が過ぎるわね…」
バイタラニーが苦々しく話す。
そしてルセネールが視線を落として話し続ける。
「聞くまでもなかったようですね。私達はこれから帝国軍を潰します。まあ、貴方はそれを見ることは叶いませんが…」
「ふんっ! 殺したければ殺すがいい! ルセネール! だが、我々…」
ルセネールの【冥王妃の杖】から闇の刃が飛び出し、ムンディルのサーベルを持つ右腕を切断した!
「ぐあぁぁぁぁー!」
ムンディルの悲鳴が響く。
「さすがに腕を斬られると声が出るんですね」
ルセネールが冷酷な目をムンディルに向ける。
そして周りにいる冥鋭護代に命令する。
「この男の自由を奪い、その魔導挺に固定して海に捨ててください」
ムンディルがルセネールを見上げる。
「言ったはずです。ムンディル。楽に死ねると思わないでくださいと。貴方の棺桶にこのエンケラドスはもったいないです。1人で海に沈みながら、ご自慢の艦隊が墜ちていくのを見て死んでいってください」
ムンディルが唸り声を上げて周りを睨み付ける。
「うぐぐ……」
エンケラドスが爆発音とともにまた大きく揺れた。
ルセネールが話しかける。
「この艦も長くは持ちませんね。そろそろ離脱しましょう」
ギョヌがルセネールの横に来て、そのギョヌの乗る魔導騎馬にルセネールが乗り込む。
そしてムンディルの方に振り返ると、
「ムンディル、これで本当にお別れです。さようなら」
「ふんっ! お前を殺せなかったことが心残りだよ!」
「その言葉……、母…ホラリアの前でも言えますか?」
「…当然だ」
「…そうですか。先にディーベンとエウーリが居ると思いますので、よろしくお伝えください」
「……ぐぅぅ! リタースっ! 貴様ぁ!」
両腕を斬り落とされ、魔導挺の座席に縛り付けられたムンディルの魔導挺がエンケラドスから落とされた。
ルセネールと冥鋭護代たちはエンケラドスを離脱し、そのエンケラドスが黒煙を上げながら海に墜ちていくのを見下ろした。
冥府の大地に侵攻してきた帝国軍艦隊の大型艦はこれで全て撃墜され、まだ空に残っていた空戦部隊も散り散りになり、大陸の方に飛んでいった。
ルセネールはその空域から離れていく空戦部隊を見ながら話し出す。
「彼らの行き先はスミラド基地…でしたか?」
ガーロンが答える。
「はい。そうでござります」
ルセネールが少し上を向き、周りにある冥鋭護代たちに命令する。
「これより、スミラド基地を制圧します」
「「はっ! 仰せのままに」」
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