第10話 あれ?君達たしか僕を追放したよね?
そのまま彼女に巻き付いた!
バダガリの話では常時シールドが張られているとの事だが僕の巻付きの力のほうが上回ったらしく普通に巻き付くことができた。おっ、君なかなか女らしい体してるね!
ここでちょっとアメリアに目をやるとショックで失神していた。どうやら蛇が苦手というのは本当みたいだ。
でも良かった。気を失わず戦闘になった場合、かなり大規模なものになっただろうし。僕の強さが色んな人に露呈してしまう。
さて、あの三人はどうかな?
僕はアメリアを巻き付けたまま様子を見に行った。出来れば僕の加勢なしで倒してもらいたんだがな……。
バガン!ドドッ!!
打撃音と魔法の発動音が聞こえた!
「ぐああっ!!くっ、くそーっ!」
「ぐはははは!どーだ?生身のケンカじゃ負けねえぞ!」
バダガリ君はバルガスを地面に押さえつけ縄で縛ろうとしていた。凄いな!バルガスだってそこそこ強いのに……。
となると問題はサラの方だな。
ガキィン!
剣を持ったサラが旦那の方に突っ込んで一閃を見舞う!
それを迎え撃つ旦那の装備は左手に小さい盾であるバックラー、右手には短剣というものだ。
装備も心許ないが実力もサラが圧倒的に上だ。その一撃で旦那は吹っ飛ばされ地面を転がっていく。
ここで最初から呪文の詠唱をしていた嫁の方が魔法を放つ。
「水弾!」
サラはニヤリとし、ほぼノータイムで風魔法「トルネード」を発動させる!
弾丸のような水は全てトルネードの風に回収され上空へと舞い上げられた。
すかさずサラは嫁の方へダッシュして行く!
マズい!物理的な殴り合いで勇者のサラに魔術師が勝てるはずがない。
――しかし僕はソレを見て安心した。サラに後ろから迫っていたバダガリである!
「サラ!そいつやべえぞ。攻撃が通らねえ!一旦逃げろ!!」
縄で縛られ終えたバルガスがサラに助言した。
「むっ」
後ろから棍棒を構えたバダガリが迫ってくるのを見て、サラは横にかわし一旦嫁の方から遠かって魔法攻撃に切り替えた!
「ファイアストーム」
ゴオオオオオオ。
炎の嵐がバダガリに向かっていく!しかしバダガリは平然とそのままサラに突撃した!!だ、大丈夫なのか!?
「ウルァアアアアアア!」
そして炎を抜けてそのままサラに棍棒を振り下ろした!
ガギッ!
「ぐはっ!……」
サラは肩を抑えてその場にうずくまる……これは勝負あったな!
勝ち誇ったようにバダガリは言い放った。
「ふはははは。思い知ったか!!俺のスキル【バーサク】は10秒間痛みを遮断出来る。つまり一時的に無敵になれるってことだ!!ぎゃーっはははははは熱っちいいいい!!!水!おいっ!!み、水魔法早くっ!!ぎゃああああああ!」
地面を転がるバダガリ……どうやらその10秒が経過したようだ。アホかな?
すぐに嫁さんの水魔法で冷却されるが全身焦げたような痕が残っていた。本当に大丈夫なのか?
僕はアメリアを巻き付けたままシュルシュルと大岩の方へと出ていった。彼女はまだ気絶している。
その後サラの身も縄で拘束しバルガスと隣合うように並べた。
「や、やあ。また会ったね……」
「お、お前はヌメタロー……なぜ!?」
まあそうなるよね、全くの偶然だけども。ってゆーかちょっと気まずい。
二人は僕に巻き付かれ気を失っているアメリアを見て驚愕の声を上げる。
「ア、アメリア!?」
僕はちょっと脅かしてみた。
「君達の最高戦力はご覧の通りさ。僕を見ただけで気絶しちゃったよ……って訳で大人しく質問に答えてもらいたいんだけど――?」
バダガリも追い打ちをかける。
「オラッ!大人しく答えねーと痛い目見んぞテメーら!」
アメリアまでこうなってしまっては何も出来ない。二人は観念したようだ。
「……くっ……なんだ、質問とは?」
サラはちょっと投げやりに言った。
「夫婦の子供と君達が依頼を受けた組織の人間はどこにいるのかなー?と思ってね」
「……あっちの小屋にいるはずだ。たしか子供もいた」
サラはこの大岩から続く道を指で示した。
「嘘じゃねーだろうな!?」
確認するバダガリ。
「まあ、多分本当だと思うよ。よいしょっと」
僕はアメリアを解放し、地面に横たわらせた。まだ気は失ったままだ。
「彼女が目を覚ましたら縄解いてもらってね。バイバーイ」
僕はちょっと馬鹿にしたような視線をサラ達に送り先を急ごうとした、するとバルガスがこんな事を言ってきた。
「お、おいヌメタロー。お前、ホーリーに戻るつもりはないか?」
ん?どゆこと?
サラも続けてこう言う。
「ヌメタロー、やっぱり私達にはヌメタローの力が必要だと気付いたんだ……今ならまだ手続きも完全に終わってないし、どうだ?」
何故こやつらは180度意見を変えたのだろうか?理由は簡単。おそらくこのアメリアだ。
天才なのを良いことに調子に乗りまくっているアメリアとパーティを組むのが辛くなってきて、だからと言って自分達から誘っていたので出ていけとも言えず、アメリアが苦手な蛇である僕に戻ってきてもらいアメリアには自主的に出ていってもらおう――といった所だろう。
全く情けないもんだな。
僕は舌を使い首に巻き付けた皮の袋からタバコを一本取り出し魔法で火を付けた。
スゥーーーー……、フーーーーッ……。
「あれ?君達僕を役立たずだと言って追放したよね?それで都合が悪くなったからやっぱり戻って来てくれって?ふーん、そんな恥知らずな事言っちゃうんだ?ふーん」
「うっ、ま、まあそれはそうなんだが……」
サラは言い淀んだ。
「僕なんかの若い頃は村で食うものがなくて困ったとき、裕福な人の所に頭をこすりつける勢いで嘆願しに行ったもんだけどねえ……(適当)」
「いや、若い頃も何もお前蛇だろ?……」
突っ込んだのはバダガリだった。そこは君、ノリというかテキトーに話を合わせてくれないと……。
ま、いっか。今はとにかく早く子供を助け出してあげよう。
――という訳で僕らはサラ達の言っていた小屋までやって来た。小屋のガラス窓から明かりが漏れている。やはり誰かがいるようだ。
その小屋は高床式の造りで、床下に忍び込めるぐらいの高さがある。
僕はその床下にスルスルと忍び込み体を螺旋状に巻いて隠れる。そして鼻先を床に当てた。これにより普段より声などの音が聞こえやすくなるのだ。
さて、偽の魔術書を持ってイグドールの人間と会うのは夫婦の二人だけだ。下手に僕やバダガリがしゃしゃり出て敵を刺激して子供に何かあったら元も子もない。
あとに残ったバダガリは小屋から離れた所に待機させている。他の仲間が来たりしないか見張り役だ。
夫婦は静かにドアを開ける。その瞬間夫婦の声が聞こえた。
「ライエン!」
どうやら子供の名前らしい。子供の声はしなかった。多分夜だから寝ているんだろう。
次にイグドールの誰かの声が聞こえた。
「持って来たか。ん?ホーリーのあいつらは一緒じゃないのか?」
「……彼らは次の依頼があるとかでどこかへ行ってしまった。魔術書はアメリアという魔術師によって鑑定済みだ」
嫁さんがそう答え、おそらく魔術書と子供の交換を要求している事が読み取れた。
「アメリアの鑑定ならまず間違いあるまい。良かろう……この子供は開放してやる。私はもう行くぞ」
「おお、ライエン!……良かった!!」
「良かった……本当に!」
意外とあっさり子供は返されて安堵の声が夫婦から漏れる。特に罠とかの気配はなさそうだな。うーむ……。
――などと考えていると、敵の男が小屋から出てきて何処かへ歩いていく。それは僕らがやってきたネイパリル修道院の方角だった!
僕とバダガリは静かに後をつけていく。
そのまま男を追っていくと、男は修道院の近くまで歩いていき、そして足を止め周りを見回した。
そこにはとある人物が待っていて、男はそいつと何やら会話していた。僕は衝撃を受けた!
――それは、なんとアルティーナだった……。
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